グラフィックボードやGPUの開発・販売を行うNVIDIA(エヌビディア)は、ビジネス向けのVR導入の最新情報を展開する「NVIDIA Pro VR Day 2017」を開催しました。
製造業や医療機関、建築業など、あらゆる分野の産業向けVR市場は今後拡大すると見られており、コンシューマ分野での利用を超えると見られています。企業向けだけあり、個人向けのシステムとはレベルもコストも段違いで、それだけに現状で最先端のVRを体験できる貴重な機会となりました。産業向けでブラッシュアップされれば、その技術や知見はコンシューマ市場にフィードバックされるのは間違いないので、ある意味では個人向けVRの未来図を覗けるイベントにもなっています。
イベントでは、はじめにNVIDIAのキーノートセッションが行われました。それによると、今後VR市場をけん引していくのは製造、建築、医療といった産業向けになるとのこと。VR市場は2025年までに800億ドル規模まで拡大すると見られていますが、そのうち700億ドルはこうした産業用VRが占めると予測されているそうです。
また、より現実に近いVR映像を表現するためには、フルHDを超える3024×1680/90fpsもの映像が必要に。当然、データ量が増加し、それを処理できる高性能なGPUが必要となります。
産業用VRのクオリティの高さに驚愕
体験会ではASK/Graphispft、Born Digital、SCSK、Lenovo/Fukui Computer、Lumiscapheの5つの企業が用意していただいたVRを実際にプレイすることができました。
ASK/Graphispftは、建物のCADデータを数分でVRデータに変換し、バーチャル化された建物の内部を自由に歩きまわれるデモを展示。将来の住宅展示場は、このようなVR映像で見学するようになっていくのでしょう。もしかすると自宅にいながら、自由に内覧できるようになるかもしれませんね。
Born Digitalのブースでは、ショールームに飾られた車をくまなく見ることができました。ドアに手をかざせばドアを開けたり、車体のカラーリングを好きに変えたりすることもできます。用途としては、デザイナーが作成したCADデータの確認として利用されるとのこと。VRで見ることにより、より現物に近い感覚でデザインなどを確認できるメリットがあります。
SCSKブースもクルマのショールーム風の映像を展示。実際にクルマの中に入って、細部を確認することもできました。背景を自在に変えたり、車の好きな部分でカットし、内部構造も確認することができます。今回の体験ではディティールを省いたモデルでしたが、細部をしっかりと作り込んだモデルであれば、エンジンの構造やシートの中身なども確認できます。
Lenovo/Fukui Computerは建物系です。左手のコントローラーで釣り竿のようなものを操作し、その先端部分に移動するというシステムで街なかや建物の中を自由に移動できます。右手のコントローラーはモノを触ると振動するようになっており、建物の構造を感覚的に捉えることができます。
LumiscapheブースもクルマのVRモデルを展示。今回の体験の中ではもっとも美麗なグラフィックを用意しており、まるで実写のようなリアルさ。車のボディカラーやシートの色、内装を変えられ、さらに風景を変えると、車体に映り込んだ風景までがきっちりと描写されます。しかも、ほぼ一瞬で切り替わるのは見事でした。
CADデータが即時VRデータに置き換わったり、HTC Vive自体の解像度がアップしたのかと疑うほどの精密な映像を映し出したり、どれもハイレベルな展示内容となっていました。いずれも、システム構築に数百万単位がかかるため、個別の店舗などに導入するのはコスト的に難しく、開発や設計、デザインといった用途で利用されるのが主になるとのこと。クルマのVR映像をショールームで体験してもらったり、不動産物件の内見などに利用されたりするのは、まだしばらく先になりそうです。
しかし、近い将来、一般ユーザーが今回展示されたようなハイレベルなVR映像を、街のあちこちで体験できるようになるのは間違いありません。今回のNVIDIAのイベントは、未来のVR市場への期待が高まる内容となっていました。