ミラーレス一眼はAF性能が弱く、特に動きの速い被写体にピントを合わせるのは苦手、と言われていたのは昔の話。最近では、オリンパス「OM-D E-M1マークⅡ」やソニー「α6500」「α9」など、高速AFをアピールするミラーレス一眼が続々と登場している。そのAF性能は本当に快適なのか。実際に試してみた。
高速AFをアピールするオリンパスの最上位モデル「OM-D E-M1マークⅡ」で検証
動きのある被写体に対してミラーレス一眼のAFはどこまで実用的なのか。オリンパスの最上位モデル・OM-D E-M1マークⅡを使って検証してみた。被写体は、カメラ側に向かって走ってくる自転車(直線的な動きへの追従性)、水族館のイルカジャンプ(不規則な動きへの追従性)、薄暗い水槽内で泳ぐペンギン(暗所AF性能)、ブランコに乗った人物(顔認識AF)の4つだ。
比較として、エントリークラスのミラーレス一眼の旧機種オリンパス「E-PL5」(2012年発売)と、ミドルクラスの一眼レフであるキヤノン「EOS 80D」(2016年発売)も用意した。それぞれの基本スペックは以下のとおりだ。
【検証1】規則的な動きを撮る
まずは、規則的な動きに対するAF性能を見るために、約30m離れた位置からカメラのほうに向かってほぼ一定の速度で走行してくる自転車を撮影した。撮影モードは「シャッター速度優先オート(Sモード)」、焦点距離は200ミリ相当、フォーカスモードは「コンティニュアスAF(C-AF)」、測距点は「中央1点」、ドライブモードはAE/AF追従で最高速のモードに設定した。この撮影を3回繰り返して得られた平均値は、以下の表のとおりである。
E-M1マークⅡでは実に約63コマもの撮影ができ、そのうち正確なピントが得られたのは約54コマ。AFの合焦率は約86%となる。ミラーレスの旧モデルE-PL5の結果に比べると、6倍以上の撮影枚数であり、合焦率も大きく向上している。一眼レフEOS 80Dに比べても、2倍近い撮影枚数であり、合焦率でも勝っている。
AFの傾向としては、スタートから全体の約2/3までの位置では90%以上の高い確率でピントが合うが、撮影距離が短くなるほどピントがアマくなったり、外しやすくなったりするといえる。また、いったんピントを見失うと、再び合焦するまでに少し時間がかかると感じた。
使用感については、E-M1マークⅡのEVF表示に特に違和感はなく、スムーズに被写体を追い続けることができた。ただし、AE/AF追従で最高速が得られる「静音連写L」モード(18コマ/秒)は、電子シャッターを使っていることもあり、撮影時に音がまったくしない点は慣れが必要だ。シャッター音を鳴らしながら連写したい場合は、機械シャッターによる「連写L」モード(10コマ/秒)に切り替えるといい。
【検証2】不規則な動きを撮る
続いて、不規則な動きに対するAF性能を見るため、水族館のイルカショーを撮影した。ショーでは、広いプールのさまざまな場所からイルカが突然現れてジャンプをする。その姿を大きく捉えるには、ジャンプした位置に素早くズームアップして連写する必要がある。
輪っかなどを使ったジャンプの場合は、前もって輪っかの位置にピントを固定して撮る方法もあるが、ここではあえて置きピンはせず、とっさのAF性能をチェックしてみた。撮影モードはシャッター速度優先オートを選び、フォーカスモードはコンティニュアスAF、測距点は中央1点、ドライブモードはAE/AF追従で最高速のモードに設定した。
E-M1マークⅡのAFはストレスなく作動し、多くのカットを狙いどおりのタイミングで撮影できた。イルカの姿をフレーム内に捉え続けることさえできれば、ピントを外す失敗は少ないといえる。また旧機種のミラーレスE-PL5では、コントラストの高い背景部分にピントが合ってしまい、肝心のイルカはピンボケというケースがたびたび見られたが、E-M1マークⅡでは同じ構図でもきちんとイルカにピントが合うことが多かった。
下の表は、1回のショーで撮影できた枚数と合焦率だ。E-M1マークⅡは優秀な合焦率だったが、AFの初動がややもたつくため、ジャンプの開始部分はほとんど撮れていない。一方でEOS 80Dは、コンティニュアスAFが素早く作動し、ジャンプの最初から撮れることが多かった。
【検証3】暗所での動きを撮る
光量が乏しい場所でのAFはどうだろうか。暗所でのAF性能をチェックするために、薄暗い水槽内で泳ぐペンギンを撮ってみた。設定は、撮影モードはシャッター速度優先オート、フォーカスモードはコンティニュアスAF、測距点は中央1点。ドライブモードについては、室内照明によるフリッカーの影響を避けるため、「連写L」(機械シャッター)を使用した。
結果としては、E-M1マークⅡのAFは屋外での撮影に比べると迷いが増え、ピントが合わずにシャッターチャンスを逃すことが多くなった。ペンギンの目の周りなどコントラストが高い部分にAF測距点を重ねると合焦するが、胴体など低コントラストの部分ではピントが合いにくい。
また、自転車やイルカジャンプのような大きな動きとは異なり、小さく前後するペンギンの動きにコンティニュアスAFで追従し続けることは苦手のようだ。このあたりは、EOS 80Dに少々見劣りした。とはいえ、そのあとに使ったE-PL5ではさらにピントが合わなかったので、それに比べるとE-M1マークⅡの暗所AFが大きく向上していることは確かだ。
【検証4】顔優先AFで撮る
顔優先AFをテストするため、ブランコをこぐ人物を横から撮影した。撮影モードはシャッター速度優先オートを選び、フォーカスモードはコンティニュアスAFに、ドライブモードはAE/AF追従で最高速のモードに設定した。
結果は、カメラのほうを向いた正面の顔では、問題なく顔優先AFが作動し、E-M1マークⅡでは約90%の確率で正確なピントが得られた。旧モデルE-PL5の場合は、ブランコの柱によって顔が遮られる瞬間に顔を見失うことが多かったが、それに比べるとE-M1マークⅡの顔優先AFは十分に実用的といえる。
ただし、横を向いた顔や帽子をかぶった状態では認識できない。このあたりには課題が残る。正面からポートレートや記念写真を撮る際には役立つ機能といえそうだ。
オリンパスの最上位モデルE-M1マークⅡは、動体撮影にも十分実用的なAF&連写性能を持っている
トータルとしては、動体撮影用に十分に役立つE-M1マークⅡのAF&連写性能を実感することができた。特に明るい屋外でのAFは優秀であり、圧倒的な高速連写と相まって、狙いどおり動きの瞬間を捉えることが可能だ。遅延が目立たず、スムーズに表示できるEVFにも好印象を受けた。
気になった点は、コンティニュアスAFで使用する場合、いったん被写体を捉えるとしっかり追従するが、最初に合焦するまではややもたつく場合があること。またAFターゲットモードは、1点や5点/9点は問題ないが、すべての測距点を利用するオールターゲットモードでは意図する場所とは違う部分にピントが合うことが少なくない。このあたりのクセを理解したうえで使いこなすようにしたい。
なお今回は、AF設定の細かいカスタマイズはしていない。E-M1マークⅡでは、カスタムメニューからAFや連写の動作特性などを細かく調整できるので、被写体や撮影スタイルに応じてきっちりと設定しておけば、さらに使い勝手はよくなるだろう。