10月31日といえばハロウィーン。日本でもすっかり定着したようすで、街の至るところにカボチャやオバケのデコレーションなどが見られます。コスプレを楽しみにされている方も多いでしょう。
ハロウィーンはヨーロッパ発祥のお祭り。それだけに、ポーランド在住の筆者も「この国ではどのようにハロウィーンを過ごすのか」と興味を持っていました。しかし、キリスト教にとってハロウィーンは受け入れがたいものだったのです。
その1:ハロウィーンとキリスト教は無関係
ヨーロッパ発祥ですが、ハロウィーンはキリスト教とまったく関係がありません。
ハロウィーンの起源は古代ケルトの「サウィン祭り」とされています。ケルトとは西ヨーロッパの先住民族であり、日本ではケルト神話で有名ですね。その歴史は今から2000年以上さかのぼり、この祭りには大きな目的がありました。
それは魔除け。秋の収穫を呪って、家畜や作物に悪い影響を与える悪霊を追い払うためだったのです。
古代ケルトでは1年を4つに分け、1年の終わりは10月31日にあるとされていました。つまり、10月31日は大晦日。そしてこの日は死者の霊とともに、悪霊や魔女もやってくるため、ケルトの司祭たちは火を焚いて悪い霊を退散させる必要があったのです。
その2:ハロウィーンは死のカルト
ハロウィーンの仮装は、悪霊や死者のような格好をして悪霊を騙したり、驚かせたりする狙いがあると言われています。ゾンビや魔女が定番の仮装ですが、ときには痛々しい傷までも再現し、そのコスチュームはリアルなものからキュートなもので様々です。
しかし、キリスト教において死を連想させる仮装や、ましてやそのような格好をして喜ぶというのはタブー。キリスト教は「生」の宗教であり、悪魔を招くような行為をしたり、死を軽々しく扱ったりすることは決して許されません。正教会ではハロウィーンをカルトとして批判し、カトリックでもハロウィーンパーティーに参加するのは推奨されていません。
この通り、サウィン祭りはケルトの宗教行事であって、キリスト教とは関連性がありません。ではなぜ、ハロウィーンが楽しい秋のイベントとして定着してしまったのでしょうか。
それは、サンタクロースがコカコーラの商業戦略だったことと同じく、ハロウィーンもアメリカの商業主義によって広められたものだからです。ちなみにハロウィーンが日本に浸透したのは1990年のこと。仮装パーティーを開いたり、お菓子を配ったりといった楽しみ方もアメリカの影響が大きいのです。
その3:キリスト教徒に「ハッピーハロウィーン」は禁句
日本人がハロウィーンをイベントとして楽しむのは大いに結構ですが、間違ってもキリスト教徒に「ハッピーハロウィーン」や「トリック オア トリート」などと言ってはいけません。
特に敬虔なキリスト教徒であればあるほど、ハロウィーンは嫌悪されがち。ポーランドはカトリックの国ですが、それもあってか日本ほどハロウィーンムード一色ではありません。10月31日になれば仮装姿の若い男女を見かけることもありますが、ときに冷ややかな視線が注がれます。
筆者もポーランドに来てからカトリック教徒になりましたが、日本では仮装パーティーに参加したこともありました。ヨーロッパが本場と思っていただけに、ハロウィーンを楽しむ人とキリスト教徒の間にこれほどの温度差があることを知ったときは驚きを隠せなかったです。
ハロウィーンの真実はいかがだったでしょうか。多くの日本人にとってハロウィーンは秋のイベントの1つに過ぎないかもしれません。しかし本来の意味を知れば、違った楽しさもあるでしょう。「古代のケルト人が日本のハロウィーンを見たら、どう思うだろうか」と少し考えてみるのも面白いはず。「キリスト教徒がタブー視する魔除けのお祭りを受け入れる日本人ってどんな民族なんだ?」と思うかもしれません。