近ごろはコンパクトデジカメの高倍率化が進み、ポケットにも収まる薄型ボディながら光学30倍以上のズームレンズ搭載機が増えている。携帯性と高倍率の両立によって、どんな写真が撮れるのか。その画質はどうなのか。前回の外観編に続き、300g以下(本体のみの場合)・光学30倍以上の条件に当てはまる4モデルの比較を、実写を交えてお伝えしよう。
[その1]
トータルバランスが優秀! キヤノン「PowerShot SX730 HS」
【レンズ】
キヤノン「PowerShot SX730 HS」は、1/2.3型有効2030万画素のCMOSセンサーを搭載した光学40倍ズーム機だ。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24~960mm相当。最短撮影距離は1cmとなる。
【高感度画質】
感度はISO80~3200に対応。ノイズリダクションはやや強めで、ISO80では拡大してもざらつきはほとんど見られない。ISO3200では暗部を中心にノイジーになるが、それでも他機に比べるとノイズは目立たない。
【機能・作例】
携帯性重視ならコレ! ソニー「DSC-HX90V」
【レンズ】
ソニー「DSC-HX90V」は、1/2.3型有効1820万画素のCMOSセンサーを搭載した光学30倍ズーム機だ。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24~720mm相当。最短撮影距離は5cmとなる。
【高感度画質】
感度はISO80~3200に対応。また、連写と合成による「マルチショットNR」を使った場合は、最高でISO12800となる。ここではマルチショットNRは使わず、通常の高感度ノイズリダクション「標準」で撮影。シャープネスはやや強めで、ノイズリダクションは控えめの傾向。そのため、ISO3200ではほかの3台よりも暗部ノイズが目立つ。
【機能・作例】
4K動画も撮れてコスパ抜群! ニコン「COOLPIX A900」
【レンズ】
ニコン「COOLPIX A900」は、1/2.3型有効2029万画素のCMOSセンサーを搭載した光学35倍ズーム機だ。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24~840mm相当。最短撮影距離は1cmとなる。
【高感度画質】
感度はISO80~3200に対応。ノイズリダクションは平均的で、ISO80ではノイズと解像感のバランスが取れた描写になった。ISO3200では暗部を中心にザラザラとした写りになっているが、ノイズの粒が揃っており、汚い印象はない。
【機能・作例】
豊富な機能とRAW対応で撮影自由度が高い! パナソニック「DC-TZ90」
【レンズ】
パナソニック「DC-TZ90」は、1/2.3型有効2030万画素のMOSセンサーを搭載した光学30倍ズーム機だ。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24~720mm相当。最短撮影距離は3cmとなる。
【高感度画質】
感度はISO80~3200のほか、拡張設定としてISO6400が選べる。ノイズリダクションはやや強めの傾向があり、ISO80ではほとんどノイズは見られない。シャープネスも強め。ISO3200ではノイズが増え、シャープネスと解像感が低下する。
【機能・作例】
総評――“画質以外”にも目を向けて検討すべし
今回使った薄型デザインの高倍率ズーム機4モデルは、いずれも1/2.3型センサーを搭載。多くの高級コンパクトデジカメが採用する1型センサーに比べると、約1/4程度しかない小さなセンサーであるため、正直なところ画質にはあまり期待していなかった。しかし実際に撮ってみると、予想以上の写りのよさに驚かされた。どのモデルも、等倍表示にしてアラ探しをしない限り、ウェブ用や小さな印刷用には十分に実用的な画質である。
機種ごとの傾向としては、キヤノンPowerShot SX730 HSはノイズリダクションを強めに加えたソフトな仕上がりで、逆にソニーDSC-HX90Vはノイズリダクションを控えめにしたシャープな描写だ。ニコンCOOLPIX A900とパナソニックDC-TZ90は、その中間といった印象を受けた。また、ニコンCOOLPIX A900はレンズの解像力がやや不足気味なものの、価格は最も安い。パナソニックDC-TZ90は唯一のRAW撮影対応なので、画質面での自由度が高いといえる。
とはいえ、全般的な画質としては大きな差は感じない。むしろ機能やデザイン、操作性、価格といった画質以外の面を検討し、自分の用途に合ったものを選ぶのが賢明だろう。
個人的には、トータルバランス重視ならキヤノンPowerShot SX730 HSを、携帯性重視ならソニーDSC-HX90Vを、価格重視ならニコンCOOLPIX A900を、RAWによる撮影自由度重視ならパナソニックDC-TZ90を選びたい。
1台で幅広い焦点距離をカバーする高倍率ズームコンデジは、イベントや旅行でも大活躍するはず。今回紹介したような小型・軽量モデルであれば収納にスペースをとらないので、普段使いのバッグに忍ばせておくのもいいだろう。