パナソニックから、極めて魅力的な調理家電が登場した。11月上旬に発売する「ロティサリーグリル&スモーク NB-RDX100」だ。ロティサリーとはフランス語が語源で「回転肉焼き器」のことを表す。では、ロティサリーグリル&スモークはどのような調理ができるのか、実際に試してみることにしよう。
ちょっとした電子レンジ並みのサイズで置き場所を選ぶ
ロティサリーグリル&スモークは、大きく4つの機能を搭載している。日常的に使える①オーブン機能では直径約25cmのピザまで焼くことができ、②トースター機能ではトーストを一度に4枚まで焼ける。さらに肉を焼き上げる③グリル機能と、「くんせい玉子」や「スモークチーズ」などを手軽に作れる④燻製機能を搭載している。火加減と時間を自動でコントロールする8つのオートメニューも搭載しており、簡単操作でさまざまな料理を作れるというのが大きな特徴だ。
最初に1つだけ大きな欠点があるのを紹介したい。それは「サイズ」だ。外形寸法は幅40.5×奥行き41.6×高さ28cmで、重さは約8.6kg(焼き網使用時)。ちょっとした電子レンジくらいのサイズになっている。となると、かなり使えるものに仕上がっていないとキツいのだが、果たしてどうなのだろうか。今回はテスト機ですべての調理機能が仕上がっていなかったこともあり、注目の調理機能に絞ってテストしてみたい。
肉の回転炙り焼きはしばらく見ていたいほどの楽しさ
なんといってもユニークで興味深いのが、約600gまでのかたまり肉を回転させながらじっくりと焼く「360°回転ロティサリーグリル」機能だ。こちらは、近火でゆっくり均一に、外をこんがり、中をあたため、ジューシーに焼き上げるというもの。
ロティサリー機能では、付属の「受け皿」に「ロティかご受け」をセットし、「ロティかご」に調理する肉などをセットする。肉は、たこ糸などで縛って形を整えてもいい。セットしたら「ロティふた」を閉じる。
オートメニューの「ロティ」ボタンを押すと、ロティサリー調理の自動調理が可能で、「ローストビーフ」か「焼き豚」を選べるようになっている。オートメニューを選択して「スタート」ボタンを押すと調理を開始する。
調理を開始すると、庫内右側にあるギアが回転してロティかごの回転が始まる。その様子はチャーシューを回しながらじっくりと焼き上げる老舗中華料理店の店頭のようだ。1時間ほどでできあがるが、しばらく見ていられるほど楽しい。
ローストビーフモードではローストビーフを作り、焼き豚モードではチャーシュー、スペアリブ、鶏の胸肉を使った鶏チャーシューなども焼いてみた。最近注目を集めている「低温調理」(100℃未満の温度帯で数時間かけて調理する方法)とは違ってじっくりと焼き上げるため、脂身の少ない鶏胸肉や豚ロースなどより、脂身が多い鶏もも肉や豚バラ肉などの方が向いているように感じた。
大きめの食材も燻製できるのがうれしい
今回ロティサリー調理を試してみて、実際にどれもおいしくいただけくことができた。回転しながら焼くため、焼き色のムラなどもなく仕上がるのもいい。しかし、ローストビーフやチャーシューを毎週のように作るのかというと、そこまでの機会もないのではないか。回転して焼き上げるのは楽しいが、対象がかたまり肉ということもあり、たくさん作っても消費しきれないという悩みもある。
一方で、ロティサリー調理機能よりも個人的に魅力を感じたのが製品名にもある「スモーク」、つまり燻製機能だった。こちらこそこの製品の魅力の本命なのではないかと思う。その魅力は「比較的大きめの食材を、手軽かつニオイを出さずに燻製にできる」点にある。
パナソニックは2015年9月に発売した「スモーク&ロースター けむらん亭 NF-RT1000(以降けむらん亭)」で燻製調理機能を搭載したが、こちらには大きな不満点があった。触媒によって煙とニオイを大幅に抑制する「減煙・減臭機構」を搭載していたのは魅力的なだったが、フィッシュロースターを基にしているために、庫内サイズが小さかったのだ。せっかく燻製機能があっても、通常の卵すら燻製できないのは悲しい(ウズラの卵の燻製なら作れるが)。その点、ロティサリーグリル&スモークは庫内容量が大幅にアップしたため、卵など高さのある食材や大きめの食材でも燻製にできるようになった。
燻製の作り方は若干面倒な部分があるのは否めない。燻製容器に燻製用のウッドチップ(別売)を入れ、燻製用の網にアルミホイルを巻いてから食材を載せる。さらに燻製容器の上にアルミホイルを巻いてフタをすれば準備完了だ。毎回それなりの量のアルミホイルを使ってしまうのは、もったいなく感じる。
食材にしっかり火が通り、燻製の仕上がりはバッチリ
今回テストしたのは試作機の都合で「くんせい(高温)」モードだけだったが、仕上がりはなかなか満足のいくものだった。燻製には80℃以上の高温で熱しながら煙でいぶす「熱燻」、60℃~80℃くらいの温度でいぶす「温燻」、25℃以下の低温でいぶす「冷燻」の3種類がある。ロティサリーグリル&スモークはこのうち熱燻と温燻に対応した(先述の けむらん亭は熱燻にのみ対応)。
基本的にはスモークする前に加熱しておくようにレシピには書いてあったが、熱燻の「くんせい(高温)」モードはかなり高温になるため、事前に加熱しておかなくても十分に中まで火が通ることが多い。もちろん、ある程度厚みのある食材の場合は、しっかりと火が通るように調理時間を調整してほしい。ただし今回はどれも20分前後燻製してみて、火の通りが悪いと感じることは一度もなかった。
燻製を作る場合は、ちょうどいい塩加減にした燻製用の調味液(「ソミュール液」などと呼ばれる)を作り、ジップロックなどに入れてしばらく漬け込むのがオススメだ。これをやっておくと、塩コショウなどに比べて全体的にまんべんなく味がしみ込む。
「回しながら焼く」新たなスタイルにSNSでの反応も上々
ちなみに、筆者はFacebookでロティサリーグリル&スモークのことを話題にし、実際に作った料理の写真をInstagramにアップしてみた(InstagramにアップするとTwitterやFacebookにも自動的に公開される仕組みにしている)。
調理中の写真をFacebookにアップしてみたところ、「いいな」、「この焼き方、憧れます!!w」、「本当にワクワクが止まりません!!」といったコメントをいただいた。「ターキーもグルグル回る?なら欲しいかも」という質問はさすがに無理そうだが、「肉を回しながら焼く」という、家電製品としては新しいスタイルには興味を持つ人がたくさんいそうだと感じた。
平日と週末で使い分けるのがポイント
ロティサリーグリル機能も、燻製機能も、筆者は正直かなり満足した。ただし実売予想で5万5000円という価格は、この2つだけではなかなか財布のひもを緩めるにはキツい。そもそも、ロティサリー調理とか、燻製調理とか、そんなに頻繁にやるものか……? という疑問を持つ人も多いのではないだろうか。
しかし、もし今使っているオーブンが物足りない、トースターを買い替えたい……などと考えているのであれば朗報だ。ロティサリーグリル&スモークはロティサリー調理と燻製調理だけでなく、パンを焼くトースター機能、ピザを焼くオーブン機能も備えており、そのための焼き網も別途用意されている。
燻製容器やロティ用の容器などはキッチンの下にしまっておき、平日は焼き網を使ってオーブン調理やトースター機能を使い倒す。週末はロティ用の容器でロティサリー調理を楽しんだり、さまざまな食材を燻製にして香りを楽しんだりするのが、この製品を最大限に活用するポイントだと筆者は断言したい。