つい先日、東京から静岡まで新幹線に乗ったら、その車両の半分が外国人客だった。私の座席の前後左右は英語圏の観光客で、少し離れた席からはフランス語も聞こえてきた。列車の車窓から富士山が見えはじめると外国人たちは席を立ち上がり、一斉にスマホで、わが日本の誇る富士山の雄姿を写しはじめたのだ。
日本を訪れる外国人が増え続けているのを実感したひとコマだった。
外国人は“ジャパン・レール・パス”で日本全国を駆け巡る
外国人の友人から「一緒に九州を旅しよう。途中で京都、広島、岡山にも寄って」と誘われたことがあったが、私は残念ながら無理と言って断った。問題なのは時間ではなく、経済的な理由だ。「私は日本人だからジャパン・レール・パスが買えないのよ」と告げたら友人も納得していた。
ジャパン・レール・パスはJRが発売している外国人向けの日本全国のJR路線が乗り放題のお得なパスだ。90日以内の日本滞在の外国人のみが買えるパスで、普通車両なら現在のところ7日間で29,110円、14日間で46,390円、21日間で59,350円。子どもはその半額料金だ。ちなみにグリーン車両パスもそれぞれあり、7日間なら38,880円とかなりお得。
このパスは新幹線も乗り放題なので、来日外国人たちは北海道から九州まで日本全国をスイスイと移動し、各地をくまなく見て回ることができるのだ。
それは2005年のことだったが、知り合いのフランス人家族が愛知万博を訪れたが、会場から近いホテルはどこも満室だったため、なんと宿泊だけは京都にしたのだ。新幹線を使えば名古屋と京都の移動は簡単。彼らは京都の日本旅館を楽しみつつ、毎日、新幹線で万博に通ったのだ。こういう裏技が使えるのもジャパン・レール・パスのおかげ。日本人としては、なんともうらやましい限りだ。
「靴を脱いで……」と外国人に注意できる?
さて、2020年の東京オリンピック向け、今後はますます多くの外国人が来日するだろう。日本が気に入り、長期滞在する人々もきっと増えるはずだ。ご近所に外国人、いやいや、自宅に外国人ゲストという機会もこれからはなくはない。
そんなとき、日本独特のマナーやルールを、外国人にスムーズに伝えられるよう、今日はこの本を紹介しよう。
『英語で教える日本の暮らしのマナーとコツ』(下山布妃都・訳 伊藤美樹・絵/学研プラス・刊)は、日本の公共のマナーから、日常のおつきあい、訪問とお招き、冠婚葬祭などすべてに英訳がついた、とても便利で使えるマナー本だ。
外国からのゲストに、「そこはスリッパを履き替えてほしんですが……」と注意するにはどう言えばいいんだろうと、歯がゆい思いをしたことがありませんか?「ここは下座ですから、どうぞ上座に」はどうでしょうか?
日本には、円滑な社会生活を送るための独特なマナーやルールが存在します。(中略)ただ、それを「外国人に教える」ということになると、頭を抱えてしまいます。本書では、そんな暮らしの中のマナーやコツについて、対訳英語をつけてみました。日本の伝統文化はもちろん、日々のちょっとした習慣を簡単な英語で外国人に説明するときのフレーズを紹介しています。
(『英語で教える日本の暮らしのマナーとコツ』から引用)
日本旅館に着いてスリッパに履き替えてほしいときは、
「Take off your shoses when you arrive at a ryokan,and put on the slippers provided.」
客人は床の間のある上座に通すは、
「Seating arrangement is by pecking order. In the case of a Japanese-style room,the guest is offered a place nearest the tokonoma(alcove),and the host sits near the door so she can wait on the guest」
本書では、このように日本語と英語でさまざななケースでのマナーを解説している。また、わかりやすいイラストがついているので、英語の発音が苦手なら、外国人ゲストにページを開いて見せれば、スムーズに通じるだろう。
見送りの温度差について
この本では、日本人が外国人に対して「どうして?」と感じる感覚の違い、あるいは外国人が日本人に対して「どうして?」と感じる作法の違いなどの答えまで紹介されているので、読んでいてとてもおもしろい。
見送りの温度差はその最たる例だ。
欧米人の別れ際は「さようなら」のひと言で実にあっさりしている。日本人のように相手の姿が見えなくなるまで見送ることを彼らはしないのだ。
「気をつけて。元気でね」とちょっぴり感傷的な気分になるのが日本流の別れなのだが、アメリカ流の見送りはずっとドライである。(中略)「じゃあね」と言ったら、バタンとドアを閉める。バタンの後にはガチャッと鍵をかける音まで聞こえるのだから、なんとも興ざめだ。部屋の中では「元気でね、寂しくなるわ」と別れを惜しむのだが、別れの余韻に浸ることはない。
(『英語で教える日本の暮らしのマナーとコツ』から引用)
訪ねてきた外国人が帰るときは振り向きもしないのが普通というのをあらかじめ知っておけば、ショックを受けることもないだろう。
また、本書では日本の食べ方のマナーもとても詳しく解説している。
例えば、そばをすすって食べる作法、“そばは、かみすぎず、つるっとのどごしで味わうように、音を立ててもOK”の英訳もある。
「You shouldn’t overchew when eating soba,for it is said that soba is fully appreciated by enjoying how smoothly it goes down your throat.It is considered polite to slurp noodles,especially when eating hot soba,because slurping will quickly cool down the soba.」となるそうだ。
日本におけるありとあらゆる場面での英訳があるので、プライベートでも、また、ビジネスでも外国人とのお付き合いに欠かせない一冊となるだろう。また長期に日本に滞在することが決まった外国人への贈り物にも本書はおすすめだ。
(文:沼口祐子)
【著書紹介】
英語で教える 日本の暮らしのマナーとコツ
著者:下山布妃都(訳)、伊藤美樹
出版社:学研プラス
150万部突破の人気本「マナーとコツ」シリーズが、選りすぐりの内容、対訳英語つきの電子書籍で登場。日本で暮らすための生活の知恵やマナー、周囲の人々とのコミュニケーションの取り方をアドバイスする。英語つきだから、外国人や、身近に外国人がいる人に最適。
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