10代や20代のころと食生活や運動量は変わっていないはずなのに、30歳を超えたあたりから体重増加が止まらない、とお悩みのアラサー・アラフォー男性も多いのではないでしょうか。今年35歳になった筆者も、体重を気にして、大好きだった甘いものを控えたり、毎晩の晩酌をカロリーオフのアルコール飲料に変えたり、色々とあがいてみてはいたのですが、ついに体重が80kgの大台に乗ってしまいました。ちなみに筆者は身長172cm、20代のころの体重は65kg前後でした。
このままではいけない! と一念発起したものの、食事を制限しても続かない、運動をはじめてみても続かない。いったいどうやって体重を減らしたらいいんだ! と頭を抱えていた折、「国内のトップアスリートが通うスポーツ施設の取材をしませんか?」というお誘いが。アスリートをサポートするプロなら、効率的にダイエットできる方法を知っているに違いない!ということで、さっそくお話しを聞きに行ってみました。
トップアスリートを支えるプロに正しいダイエット方法を聞く
今回お邪魔した「ウイダートレーニングラボ」は、国内でウイダーブランドの製品を展開する森永製菓が運営する、アスリートのサポートを目的とした施設。専門的な知識を持ったトレーナーや栄養士が、様々な競技で活躍するアスリートに運動や食事に関する指導を行っています。利用者には、男子テニスの錦織 圭さんや、スキージャンプの高梨沙羅さん、プロ野球の前田健太さんなどトップアスリートがズラリ。ちなみに現在はアスリートのみが利用可能となっており、残念ながら一般の方は利用できません。
お話しを伺ったのは、トレーナーの淺井利彰さんとスポーツ栄養士の清野 隼さん。お二人とも、国内外で活躍するトップアスリートをサポートしている運動/栄養のプロフェッショナルです。
――まず、この「ウイダートレーニングラボ」について伺いたいのですが、こちらでは具体的にどういったことを行っているのですか?
淺井利彰さん(以下、淺井):このラボでは、解剖学やバイオメカニクス(生体力学)、運動生理学などに基づき、選手ひとり一人に合わせたコンディショニングやトレーニング方法を指導しています。例えば、フットサルの選手から「もう少し横方向の移動速度を上げたい」という要望があれば、そのために必要な脚の筋力を上げるトレーニング方法を指導したり、反復運動を何度も繰り返して身体の使い方を覚えさせたりと、選手のパフォーマンスを向上させるために細やかな指導を行っています。
清野 隼さん(以下、清野):栄養面では、一般的なバランスの取れた食事はもちろんですが、「筋量を増やしたい」「減量したい」といった各選手ごとに異なる目的に応じた食事のとり方やサプリメントなどの摂取方法を指導しています。コンディションを整えるためには、運動と食事の両面からケアしなければいけないので、トレーナーと協力して包括的にサポートしています。
――アスリートのみなさんはどのように減量しているのでしょうか?
清野:アスリートの場合、いつまでに何kg減量しなければならない、という目的があれば、そこから逆算して運動で消費するカロリーと食事などから摂取するカロリーを計算し、プログラムを組み立てていきます。
――なるほど。我々のような一般人では、そこまで綿密に管理するのは難しそうですね。例えば、漫然と体重を5kgくらい減らしたいというときは、どうすればいいですか?
淺井:基本的には、運動を毎日10分でもいいから継続して行うことですね。毎日が難しければ週3~4回でもOK。継続することに意義があります。
運動すると糖質を消費しますが、脂肪が多く代謝されるには時間がかかるので、⻑時間運動を行うことが望ましいと考えられます。ですので、激しい運動を10分⾏うよりも、ほどほどの強度の運動を30分⾏うほうが、体脂肪の減量という意味では効果的です。最近では高強度の運動を反復して行うことにより、エネルギー代謝を高める方法も取り上げられています。この場合、怪我を予防するためにウォーミングアップとクールダウンを入念に行った方が良いでしょう。
――ほかの部位に比べて、お腹まわりが特に太りやすい気がするのですが、この「ぽっこりお腹」をへこませるための方法などがあれば教えて下さい。
淺井:人間の身体というのは、その部位だけ鍛えれば痩せる、ということはありません。例えば、腹筋をすれば筋肉は引き締まりますが、お腹だけ脂肪がなくなるということはないんです。よく言われる“部分痩せ”は不可能だと思って下さい。脂肪を減らすためには、身体全体の脂肪をトータルで減らさなければなりません。
――そうなんですね! では、効率的に脂肪を減らす方法などはあるんでしょうか?
淺井:脂肪を効率よく使うためには、身体のなかでも大きい筋肉を鍛えることが有効です。まずは、背中・胸・脚・お尻などの筋肉を鍛えるといいでしょう。また、中高年の「ぽっこりお腹」は内臓脂肪が原因なので、有酸素運動も合わせて行いましょう。
――食事面では、どのようなことに気をつければいいですか?
清野:最近「低糖質ダイエット」の話題をよく聞きますが、糖質をまったく摂らないというのはNGです。あくまで、「摂り過ぎている分を減らす」という意識が重要。日本の食文化は、欧米などに比べて穀物などの割合が多いので、糖質を多く摂取しやすいといえます。また、外食やコンビニ弁当なども糖質や脂質の割合が多く、意識していなくても多く摂り過ぎている可能性もあります。食生活は人によって異なりますので、まずは自分の食生活を振り返り、摂りすぎている分はどれくらいなのかを知ることから始めましょう。
また、30~40代の男性は夜のおつきあいが多くなりがちですが、お酒の場で何を食べるか意識してみましょう。揚げ物のように油を多く使ったものは高カロリーになりがちですが、これは1gあたりのカロリーが、糖質とタンパク質は4kcalなのに対し、脂質は9kcalと2倍ため、必然的にエネルギー過多になりがちなのが油脂を多く含む料理の特徴です。。
脂質は、大きく分けると「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に分別されますが、魚やナッツなどに多く含まれる「不飽和脂肪酸」を多く摂れるようなメニューを選ぶとよいでしょう。
【ここまでのポイント】
・運動は継続が大事。毎日できないなら週3~4日でも続けてみよう
・部分痩せは不可能。ぽっこりお腹をへこませたいなら、有酸素運動でトータルに脂肪を減らそう
・効率よく痩せるためには、背中・胸・脚・お尻など大きい筋肉をまず鍛えよう
・流行りの低糖質ダイエット、でもまったく摂らないのはNG。食生活を見直し、多く摂り過ぎている分を減らそう
どれ飲む? いつ飲む? プロテインにまつわる疑問も一挙に解消
――最近、ダイエットのためにスポーツジムに通い始めたのですが、これを機にプロテインを飲んでみようと思いショップに行ってみたら、想像以上の種類の多さにどれを選んだらよいかわからなくなり、結局買わずに帰ってきてしまいました。プロテインの種類って、たくさんありますけどどう違うんですか?
清野:ウイダーのラインナップで説明しますと、例えば「ウェイトアップ」というものは、文字通り“カラダを大きくしたい”方向けです。大きな身体を作るためには、タンパク質のほかにエネルギーが必要となりますので、糖質を多く含んでいます。また、「リカバリーパワー」は、運動直後のリカバリーに最適な糖質3:タンパク質1の割合で配合しているほか、ビタミンやアミノ酸なども強化されています。
アスリートや、一般の方でもハードなトレーニングをされている方は、このように複数のプロテインを目的に応じて飲み分ける場合もありますが、初めてプロテインを飲む方にはベーシックな「マッスルフィット」がオススメ。ホエイタンパクとカゼインタンパクの2種類の動物性タンパク質を配合しているので、持続的ににタンパク質を筋肉や細胞へ供給できます。
――ちなみに、ウイダーでもラインナップしていますが、「大豆プロテイン」はどう違うんですか?
清野:「大豆プロテイン」は、その名の通り大豆から作られた植物性のプロテインです。筋タンパク質の合成をより高めたいという目的であれば動物性タンパク質の方がオススメですが、タンパク質というものは動物性と植物性をバランスよく摂ることも重要なので、そのバランスをとりたいときや、まだプロテインを飲んだことのないライトユーザーの方などに活⽤できるのではないでしょうか。
――ジムでよく見かけるのですが、容器にプロテインの粉だけ入れてきて、運動後に水を加えて飲んでいる人がいます。別に家に帰ってから飲んでもいいのでは……? と思ったのですが、あれって意味があるんでしょうか?
淺井:プロテインは、運動した後、なるべく早く摂取するのが効果的なので、それは理に適っていますね。それから、睡眠中には身体全体のメンテナンスが行われるので、寝る前に飲むのもオススメです。
――なるほど。ちなみにプロテインのおいしい飲み方などありますか?
清野:プロテイン自体、むかしに比べて味はよくなってきています。弊社も食品メーカーなので、味や飲みやすさにはこだわっています。ウイダーのプロテインは水に溶かしてもおいしく飲めますが、牛乳に溶かすと慣れていない方でもおいしく飲める商品が多いですね。牛乳に溶かした場合は、牛乳に含まれる栄養素も一緒に摂れるというメリットもあります。
――そういえば、テレビ番組で筋肉自慢の芸人さんが、最近のプロテインはびっくりするほどおいしいと語っていました。
淺井:トレーニング文化が根付いているアメリカでは、本当に色々な味のプロテインが販売されており、街のストアなどでもプロテインドリンクが普通に売っているほど。そういったアメリカの影響で、日本でも味のバリエーションが増えてきているのではないでしょうか。ウイダーにも、定番のバニラ味やココア味のほか、ピーチ味やフルーツミックス味などがあるんですよ。
――ピーチ味! そんな味のプロテインがあるんですね。最後に、お肉をたくさん食べた日でもプロテインって飲んだほうがいいんでしょうか?
清野:プロテインはあくまでタンパク質やその他の補助栄養素を補うものなので、食事で十分にタンパク質を摂れるなら無理に飲まなくてもいいでしょう。タンパク質を過剰に摂取すると、余剰分は尿から排出されたり脂肪として蓄えられたりしてしまいますので、食事に合わせて調節して下さい。
また、最近ではお肉をあまり食べられない高齢者のために、プロテインを活用しているという事例も報告されています。まずはバランスのとれた食生活を心がけ、その上で足りない部分を補うというように、かしこくプロテインを活用してみて下さい。
――とても参考になりました。本日はありがとうございました!
プロのお二人に色々と教えて頂きましたが、あらためて「継続的な運動」と「バランスの取れた食生活」がダイエットの基本ということがわかりました。ダイエットに近道は無し! 中年太りを気にされているアラサー・アラフォー男性のみなさんも、まずは運動する習慣を身に付けましょう!