よく生きるためには、分別(ふんべつ)が必要です。
分別とは、ものごとの「違い」を正しく理解すること。
たとえば……
「恋」と「愛」
「浮気」と「本気」
「わかめ」と「こんぶ」
『たべものくらべっこえほん』(柳沢幸江・監修、すがわらけいこ・絵、高岡昌江・文/学研プラス・刊)という本があります。食べ物についての「分別」を学ぶことができる絵本です。
「わかめ」と「こんぶ」の違いを、あなたは答えられますか?
「わかめ」と「こんぶ」
わかめ チガイソ科
夏に芽が出て、よく年の春に収かくするこんぶ コンブ科
冬に芽が出る。よく年、一度かれた後に、ふたたび育ち初めて、2年目の夏に収かくする(『たべものくらべっこえほん』から引用)
わかめは、暖かい海で育ちます。ヌルヌルしている葉っぱに茎(くき)が通っています。海の葉っぱです。1年で収穫できます。
こんぶは、寒い海で育ちます。根があるのは「わかめ」と同じです。しかし「茎」は短いです。わかめのように全体を通っていません。「葉っぱ」というよりも「帯(おび)」です。
こんぶは、海のなかで1年をすごしたあと枯れます。そして、2度目の春をむかえると、ふたたび新しい芽を出します。収穫するのは成熟した2年目以降のこんぶです。じっくり育てるからこそ、おいしい出汁(だし)を取ることができます。
「クッキー」と「ビスケット」
クッキー
糖分と脂肪分の合計が、全体量の40%以上。ほろほろとくずれやすく、あまみとバターの風味が強いビスケット(ハードビスケット)
糖分と脂肪分の合計が、全体量の40%未満。バリッとした歯ごたえで、あっさりした味(『たべものくらべっこえほん』から引用)
クッキーよりも、ビスケットのほうが「硬い」というイメージがあります。ビスケットを作るときには、中力粉(ちゅうりきこ)を使うからです。
薄力粉・中力粉・強力粉のちがいは、グルテンの量です。グルテンを多く含んでいるほど粘度が高くなります。サクッという歯ごたえの焼き菓子(クッキー)を作りたければ、グルテンが少ない薄力粉を使います。
大量生産しているビスケットやクッキーの品質基準は、「社団法人全国ビスケット協会」が定めています。森永、ブルボン、明治、ロッテ、東ハト、江崎グリコなどの主要メーカーが加盟している業界団体です。
「緑茶」と「紅茶」
お茶は中国から世界に広まった。日本では、鎌倉時代の初めに中国にわたった僧、栄西が「ちゃのき」の種を持ち帰り、緑茶が根づいていった。紅茶も中国でうまれ、イギリスで発展した。
(中略)
ちゃのきは、ツバキ科の木。
寒さに強い中国種と、寒さに弱いアッサム種がある。
緑茶とウーロン茶は中国種、紅茶はアッサム種で、おもに作られる。(『たべものくらべっこえほん』から引用)
わたしたちが「緑茶」と呼んでいるものは、収穫した「ちゃのき」の葉っぱを乾かしたものです。玉露、番茶、ほうじ茶、玄米茶、抹茶などは、「煎茶(せんちゃ)」に分類されます。
ちなみに、わたしたちが「茶色」と呼ぶのは、ほうじ茶の色です。煎茶をもっと香ばしくするために、火であぶると緑色から変わります。
「ジャスミンティー」というお茶があります。ジャスミンは花の名前です。ノンカフェインのような雰囲気ですが、ちがいます。
ジャスミンティーとは、ジャスミン100%のお茶ではなく、緑茶やウーロン茶にジャスミンの香り付けをしたものです。緑茶やウーロン茶はカフェインを含んでいます。良い香りだからといって、飲みすぎには注意しましょう。
「天ぷら」と「フライ」と「からあげ」
天ぷらは、小麦粉と卵と水をまぜたころもをつけて、あげる・さくっとしている
フライは、小麦粉と卵とパン粉のころもをつけて、あげる・かりっとしている
からあげは、かたくり粉や小麦粉をまぶして、あげる・からっとしている
(『たべものくらべっこえほん』から引用)
揚げ物は、夢が広がる調理法です。油で揚げることによって、原材料が何倍もおいしくなります。鶏肉を使ったものならば、とり天・チキンカツ・鶏の唐揚げ。ほとんど同じ材料なのに、食感や味わいが違います。
天ぷらは、ポルトガルから伝わった調理法です。その発展と完成は、日本の醤油文化を前提とした「天つゆ」とセットにして語られるべきではないでしょうか。
フライは、イギリスから伝わった調理法です。明治時代の日本に伝わったあと、フライをもっとおいしくするためにパン粉を改良して、日本独自の「とんかつ」が誕生しました。「カツ丼」や「カツカレー」よりもおいしいものは、世界中を探しても、なかなか見つからないでしょう。
唐揚げ(からあげ)は、唐(奈良時代の中華王朝)から伝わった調理法です。江戸時代には「素揚げ」として親しまれており、昭和から平成にかけて進化を続けてきました。
「天ぷら」や「とんかつ」の調理法は、すでに完成しているイメージがあります。材料の品質を競うしかありません。
しかし「唐揚げ」は、現在もエボリューションを続けています。100グラム100円以下の安い鶏肉であっても、衣(ころも)の種類や味付けを工夫することによって、進化する余地がまだまだ残されているからです。今後も、唐揚げから目が離せません。期待しています。
【著書紹介】
たべものくらべっこえほん
著者:柳沢幸江(監修)、すがわらけいこ(絵)、高岡昌江(文)
出版社:学研プラス
キャベツとレタス、どこがちがうか分かりますか? 天ぷらとフライと唐揚げ、つくりかたのちがいを説明できますか? 本書は、そんな間違えやすい食品を比べて紹介し、イラストでくわしく解説します。子どもたちの食育につながる、画期的な内容です。
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