『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』から学ぶ新・リーダー論⑧
3/23『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』刊行を記念して、どこよりも早く試し読み!本日は第8回目「人々に共感される リーダーシップの秘密」
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「宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない」刊行記念先行試し読み!
第8回「「敵は「倒す」よりも「消し去る」ほうがいい」
僕には、ライバルがいません。
なぜなら僕は、「無敵」だからです!
……このように書いてしまうと、完全に自意識過剰な人ですね。
理由を説明しますと、この「無敵」とは、一般的な意味とされている、あらゆる敵を蹴散らす天下無双の「無敵」ではありません。
「そもそも、最初から敵などいないのだ」という考え方です。
ライバルや敵を作り上げることで、やる気や闘争心を引き出すという手法は、現代社会において頻繁に行われています。 学校で成績優秀者を上位から発表するのもそうですし、会社内で営業部の1課と2課が売り上げの成績を競うというのも、このパターン。
クライアントも案件の内容も違うし、同じルールで戦っていないのだから競争してもしかたがないのですが、こうした競争心が日本の経済を成長させてきたと考えている人は少なくありません。
「競合他社」という言葉がありますが、これも勝手に競合にしているだけで、相手から頼まれたわけでも、宣戦布告されたわけでもありませんよね。たとえ相手がライバル宣言してきたとしても、こちらがそれに合わせる必要も義理もないのです。
それに、一見すると競争しているように見えますが、実際は差別化しているだけ。
携帯電話会社も、コンビニエンスストアも、牛丼チェーン店も、みんな他社との違いを一生懸命に見つけてアピールしているに過ぎません。
『宇宙兄弟』でも、六太とNASAの宇宙飛行士であるビンセント・ボールドが「敵」について語り合うエピソードがあります。
ビンス(ビンセント)は元軍人で、無駄を徹底的に排除する、超・効率重視型の人間です。
その信念は、「アスキャン(宇宙飛行士候補生)を加速度的に成長させるためには、“競争”させるのが一番手っ取り早い」と断言するほど。
ドライなようでいて、じつは人間味のある魅力的なキャラクターなのですが、ビンスは六太に、「私にとっての“敵”は、成果ばかりを追求し、宇宙飛行士の存在を否定するマスコミ、無人機のみの宇宙開発を提唱する科学者や技術者、天文学者――。人が宇宙に行ってこその宇宙開発であり、我々の邪魔をする者はすべて敵です」。そう告げます。続けて「君にとっての敵は誰ですか?」と質問すると、六太は戸惑いながらもこう答えました。
「俺の敵は、だいたい俺です」
ビンスが敵だと指摘した人々も、六太にとっては「みんな宇宙が好きでやっている人々だから、いいんじゃないですかね“仲間”ってことで」となります。
とにかく六太は、どんなときでも一貫して敵を作りません。相手が六太を敵(ライバル)と認識して挑んでくることはあっても、当の六太自身は、その人をまったく「敵」と見なしていないのです。まさに「無敵」です。これは、六太のすばらしい部分だと思いますし、六太を敵視していた人間が、やがて彼を認めてしまうのも理解できます。
僕たちは、何かうまくいかないことがあると、つい誰かのせいにしたり、環境や時代のせいにしたりしがち。これも一種の「敵」を作り上げる行為です。
敵と競い合うのは誰だって疲れるし、楽しくありません。もしあなたが、競争によってストレスを感じることがあったなら、「無敵」を思い出してください。きっと、目の前の敵なんていなくなります。
競争という呪縛から解き放たれることで、グッとラクになれるはず。
【心のノート】
本物の「無敵」になれば
競争というストレスから解き放たれる。
2018年3月23日発売予定
宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。
長尾彰[著]
1400円+税 /学研プラス
【内容】
弟・ヒビトと比べて、一見リーダーのようなタイプに見えない兄・ムッタ。しかし不思議と彼がいるチームはうまくいく。なぜなのか。チームづくりの専門家である著者が、大人気漫画『宇宙兄弟』を題材に、リーダーシップを磨き、チームで成果を出す方法を指南。
【著者】
組織開発ファシリテーター。企業、団体、教育、スポーツなど、幅広い分野で3000回を超えるチームづくりを行う。現在、ナガオ考務店の活動を中心に、非営利団体の経営やリーダーの育成に取り組む。
(c)小山宙哉/講談社