「アニュビスの仮面」は、VR技術を取り入れた世界初のボードゲーム。VRと協力型ボードゲームを融合させるという画期的な同作の製作秘話を、開発者であるギフトテンインダストリの代表・濱田隆史さんと、CADデザイナーの佐藤 仁さんに聞きました。
ギフトテンインダストリ 代表取締役 濱田隆史さん(写真左)
1984年生まれ。ハル研究所で多くのゲーム開発に関わったあと、2014年に独立。
ギフトテンインダストリ CADデザイナー 佐藤 仁さん(写真右)
1985年生まれ。CADデザイナー。「アニュビスの仮面」では仮面のデザインを担当。
VRを連携させた情報非対称ゲーム
同作は、VR技術とボードゲームというデジタルとアナログの融合で誕生したホビー。まずはその背景をギフトインダストリ代表・濱田隆史さんに聞きました。
「私は、この会社を立ち上げるまでは任天堂のゲームを製作するハル研究所に勤務。そこでWii Uを使った新しい遊びのアイデアを考えていました。Wii Uは大画面が付いたゲームパッドがひとつあって、そのパッドを使うプレイヤーと、普通のコントローラーを使うプレイヤーがもう1人いる。俗に言う『情報非対称ゲーム』なんです。実は『アニュビスの仮面』もこれと同じ構造。そのときの経験を生かして、ゲームのシステムを考えていきました」
VRといえば、HMDやVRビューアーを付けたプレイヤーが1人で体感するイメージが強いですが、「アニュビスの仮面」では画面を見ていない他人と会話を行うことで、協力型ゲームという新しい“VR遊び”を提示しました。
「VRの最大の弱点は、自分が見ている風景が他人と共有できないこと。これを逆手にとって、何かできないかってところから企画がスタートしたんです」(濱田)
そもそも濱田さんが本作を思いついたきっかけは、新宿駅での知人との待ち合わせだったといいます。
「駅の構内で待ち合わせ相手から『どこにいるの?』と電話がありまして。私は『コンビニが左手に見えて……』と、いまいる場所を説明。結果、それがうまく伝わって会えたとき、とてもうれしく充実感があったんですね。その体験がアイデアのベースになりました。VRの特徴である“相手には見えない”ことを反転させて、ゲームにすることを思いついたんです」
プレイヤーの各ターンが終わったあとにアプリの正解と答え合わせ。正確な地図ができたときには、皆で喜び合えます。
ハコスコ社と開発した仮面でVRの滑稽さを逆手に
発売前から本作が注目を集めているのは、スマホをセットする仮面型VRゴーグルの形状による効果も大きいようです。スマホVRサービスを運営する企業・ハコスコ社と共同開発したダンボール製の仮面は、エジプト神話に登場するアヌビス神をモチーフにしたデザイン。仮面の制作を担当した佐藤仁さんに話を聞きました。
「まず無機質なダンボール製VRゴーグルを、最低限の要素でアヌビス神っぽく見えるようにすることを目指しました。最初は顔全体を覆う仕様だったのですが、試行錯誤するうちにプレイヤーの口部分が見えたほうが、焦った感じが伝わってきて、ゲームが楽しくなることに気付いたんです」
自分も被って見てみたいと思わせるあの独特な仮面のデザインは、こうして誕生。こちらも「VR遊び」の持つ“遊んでいる姿が滑稽”というマイナス要素を逆手に取ってさらにエスカレートさせることで、ゲームの臨場感の向上にひと役買っているわけです。
世界初のVRホードゲームには、今後VRの可能性を広げる多くのチャレンジが隠されていました。
●「アニュビスの仮面」の製品写真はすべて試作品です
【URL】
アニュビスの仮面 http://anyubis.com/