デジタル
2018/6/9 7:00

【西田宗千佳連載】VRはスマホの隆盛から生まれた

「週刊GetNavi」Vol.67-2

5月に相次いで登場した「スタンドアローンVR機器」である「Oculus Go」と「Mirage Solo」には、共通の技術的特徴がある。それは、スマートフォン由来の技術が使われている、ということだ。両機種とも使っているプロセッサーはQualcommのSnapdragonシリーズ。OSのコアとしてはAndroidを採用しており、そこからカスタマイズしたものになっている。そもそも、Mirage SoloはGoogleがスマホ向けVRプラットフォームとして作った「Daydream」を使っているし、Oculus Goの元になったのは、サムスンのGalaxy向けに開発されたデバイスである「Gear VR」である。

↑Oculus Go

 

コンパクトでそれなりにパワフルな機器を作るには、現状、PCのアーキテクチャでは無理があり、スマートフォン由来のものを使うのが理に適っているというわけだ。

 

だがそもそも、VRの技術進化はスマートフォンと大きく関係しており、今回のスタンドアローンVRの登場も、その流れのなかにある。

 

現在のVRは、2012年に初期の開発者向けバージョンが公開された「Oculus Rift」が源泉だ。1990年代のVR機器との最大の違いは、とても「安い」ことだった。理由は、スマホの普及によって、ディスプレイパネルやモーションセンサーの価格が落ち、それらを流用してVR機器が作れるようになったことにある。その後、スマホを差し込む簡易型の「スマホVR」が登場したが、これも、Oculus Riftが実現した仕組みが「スマホそのものでも実現可能なものであった」ことに起因している。

 

一方で、現在のハイエンドVR機器やスタンドアローンVRは、スマホの部品をあまり流用していない。モーションセンサーやプロセッサーは共通のものを使うが、肝心のディスプレイパネルは「VR専用開発」のものが主流である。

 

なお、技術的な素性は似ているが、スマホに最適なディスプレイとVRに最適なディスプレイは異なる。その背景には、VRはこれから数が増えると想定されており、ディスプレイメーカーがVR専用パネルの製造を行うようになっていることがある。しかも、それらは、スマホ向けの需要を見込んで用意したが、技術の進化で時代遅れとなった設備や、生産量の関係で余剰となった製造ラインを流用する形で作られている。Oculus GoもMirage Soloも、ジャパンディスプレイの同じVR用液晶を採用しているとみられているが、これはまさに、古い世代のスマホ向け液晶ディスプレイのラインを大幅に改修し、VR用液晶のラインに転用したもので作られている。

 

スマートフォンの増加によって、様々な最先端部品の製造コストが変化した。スマホ以降に登場したデジタルガジェットは、その影響を受けて作られているのだが、VR機器は特に直接的な関係があり、「VRはスマホの子ども」的な部分があるのだ。

 

では、「スマホの子ども」であるVRの先端に位置するスタンドアローンVRは、どんなコンテンツやサービスを我々にもたらすのだろうか? その点は次回のVol.67-3以降で解説していきたい。

 

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