一時期よりも沈静化した印象の仮想通貨。しかし、市場としてはグングンと広がっており、副業のひとつとして考えている人も増えています。
ただし、為替と同じく仮想通貨も損得の世界。過激的かつ扇情的なニュースばかりが先行しており、実は間違って広まっている情報や、あまり知られていないことが多くあります。そこで、今回は税理士法人レディング公認会計士・税理士、木下勇人さんにお話を伺い、仮想通貨に関して間違っている情報をまとめてみました。特に誤解されている方が多く見受けられる「税金」と「確定申告」の情報にフォーカスしています。
【仮想通貨の勘違い①】得た収入は確定申告をしなくてよい!?
為替の仕組みと近く、「草コイン」と呼ばれる一攫千金を狙うものでなければ、FXほどは荒っぽくないといった印象の仮想通貨のトレーディング。最も有名なビットコインを筆頭に多数の仮想通貨の銘柄があり、自分が選んで購入した銘柄の仮想通貨の取引によって収入を得るというもので、木下さんによれば、「まだまだ伸びる市場」とのことです。
−−これだけ仮想通貨をやる人が増えると、「もう儲からないんじゃないか」と思いますが、実際のところはどうでしょうか?
木下勇人さん(以下、木下):これまでは「草コイン」と呼ばれる超低位仮想通貨に投資をして、跳ね上がったタイミングで売買する人が大儲けをしていました。当然ながら誰しも草コインを探しますが、そのようなケースは現状ではかなり少なってきており、この意味で仮想通貨で一攫千金を実現する方は減ったと思います。ただし、まだ実際の法整備というものが追いついておらず、つまり、国側も仮想通貨の実態を掴みきれていないのが現状です。少し前にコインチェックが仮想通貨「NEM」を不正流出させて破綻し、業務改善という名のもとで締め出しを行いましたが、あの例も後手で行われた状態でした。
そういった意味ではまだまだ市場が政府よりも優先して行っているものですから、いまの縛りはまだ弱く、参加者が自由にはじめ、自由に儲けられる余地は残っていると思います。しかし、素朴な疑問として、仮想通貨で得た収入というのは、確定申告などをすべきなのでしょうか。国の法整備が後手に回っているとして考えれば、確定申告もしなくて良いような気がします。
−−仮想通貨で得た収入に対して「確定申告はしなくてよい」といった情報がインターネットで散見されます。これは実際はどうなのでしょうか?
木下:これは絶対にしないといけません。証券会社が扱う株式投資信託の売買で得た利益であれば20.315%天引きされ、登録FX事業者が扱うFXで得た利益であれば確定申告で20.315%自ら支払うことになる仕組みですが、仮想通貨の場合は現状では雑所得(超過累進税率:最高55%)として確定申告をしなければいけません。
【仮想通貨の勘違い②】仮想通貨にかかる税金の督促は来ない!?
理屈ではわかる仮想通貨の雑所得の申告ですが、しかし税務署からの催促もないし、前述の話で言えば国も実態を掴めていない状態です。このような現状だから、「申告しなくてもバレないんじゃないか」と思ってしまうのも無理はないかもしれませんが、木下さんは注意すべきと言います。
−−でも、仮想通貨の所得に対して督促がないからといって、申告しなくてもよいのでしょうか?
木下:おっしゃる通り、今年の確定申告では、仮想通貨に対する税務署内部での対応がバラバラだった感がありますが、そのため、税務署側は現段階で仮想通貨取引の全てを把握している可能性が高くはないため、現段階での所得に対する納税の督促も多くはないと推測しています。これらのことから「しなくてよい」みたいな話がまかり通っていますが、国はかなり急いで仮想通貨の実態を確認するはずです。
また、税務署からのペナルティーを含めた納税の督促は「法定申告期限から5年まで」と決まっています。例えば、平成29年度で儲けた分については、確定申告期限が平成30年3月15日ですので、そこから5年間は税務署からの督促があるというイメージです。つまり、今年や昨年、一昨年も申告漏れの指摘がなかったとしても、向こう数年以内に国が仮想通貨の実態を把握すれば、いまから遡って税金を請求することは十分考えられます。ですので、ここはきちんと雑所得(超過累進税率:最高55%)として申告しておくべきでしょう。