天才といえば、破天荒な人生や不規則な生活というイメージがあります。どれだけ才能があるからといって、乱れた生活を送っている人が、はたして偉業を成し遂げることができるのでしょうか?
『天才たちの日課』(メイソン・カリー・著、金原瑞人・翻訳、石田文子・翻訳/フィルムアート社・刊)という本を読むと、じつは天才たちには規則正しいマジメ人間が多いことがわかります。
大文豪トルストイの金言
「私は毎日書かなければならない。それは成果をあげるためではなく、習慣を失わないためだ」
レフ・トルストイ(小説家)
(『天才たちの日課』から引用)
トルストイは、19世紀を代表するロシア文学者です。前述のフレーズは、代表作のひとつ『戦争と平和』を執筆していた当時の日記に書かれていました。
1日のスケジュールは……朝9時すぎに朝食をとったあと、トルストイは紅茶をもって書斎にこもってひたすら執筆。夕方には仕事を終えて、深夜一時に眠りにつくまでは、家族との時間を過ごしていたそうです。
偉業は一夜にして成らず。成果として認められるかどうかは気にせずに、やめないこと、ひたすら続けることが成功の秘訣です。
詩人のイェーツは悪魔に○○○を与えた
「人は生きるために おのれの一部を悪魔に与えなければならない」
W・B・イェーツ(詩人)
(『天才たちの日課』から引用)
イェーツは、20世紀を代表するアイルランド生まれの詩人です。のちにノーベル文学賞を受賞するほどの偉大な芸術家ですが、詩を書くだけでは生計を立てられませんでした。
じつは、前述のフレーズには「私は批評文を与える」という言葉が続きます。イェーツは、詩作のかたわらに文芸批評を寄稿して生活費を稼いでいたからです。
詩人といえば夢見がちと思われがちですが、じつは現実主義者が少なくありません。たとえば、ノーベル賞受賞者である詩人のT・S・エリオットは、銀行員としての生活を「退屈だが気楽でいい」と述べていました。おなじく20世紀を代表するアメリカ詩人のウォレス・スティーヴンズは、保険会社の社内弁護士として定年まで勤めました。
天才といえば「変人」と思われがちですが、意外なことに「まともな人」が多いです。あえて「変わったところ」を探すならば、それは食生活に見出すことができます。