「機動戦士ガンダム」が初放送から40周年を迎え、話題になっています。一方の“ガンプラ(ガンダムシリーズのプラモデル)”は今年で39周年。
長きにわたってガンプラを生産し続ける通称“ガンプラ工場”こと、静岡県のバンダイホビーセンターに潜入。後編の今回は、工場内をくまなく回りました。解説は前編同様、ホビー事業部の岸山博文さんにお願いしました。
【前編はコチラ】
ガンプラ工場その1・ホビー事業部
――まず、見晴らしの良いオフィススペース。ここがホビー事業部でしょうか。
岸山博文さん(以下、岸山) そうです。企画開発から生産までが一同に介するスペースです。
特に設計は現在はデジタルCADによって行われており、ギミック技巧を密集させてやっています。例えば「断面がどうなっているか」ということは手書き設計のころは、難易度が高くて手をつけられませんでしたが、こういったこともできるようになりました。
――岸山さんも着ていますが、ガンダムの制服風のものがユニフォームなのでしょうか。
岸山 そうなんです。ホビーセンターで働いている人は全員この制服を着ています。
ガンプラ工場その2・光造形室
――このボックスルームには巨大なプリンターのようなものがあります。これはナンですか?
岸山 作業テーブル的なスペースですね。設計・レイアウトされたものを読み込み、専用の機械が具現化してくれます。つまり、金型を作る前に機能やカタチを確認するためのスペースです。
真ん中の大きな機械は3Dプリンターです。設計・レイアウトに従い、樹脂を吹き付けて試作します。「実際に箱に入れて売り物にする際に、合理的かどうか」「ちゃんと収まるかどうか」を事前に見極めて、試作がOKになると、今度は金型になるわけですね。
ガンプラ工場その3・ホワイトベース風成形工場エリアへ
――オフィスフロアから今度は工場エリアへ。なんとなくガンダムに出てくるホワイトベースのようでもありますね。
岸山 ブリッジにシャッターが降りたりする意味では、確かにホワイトベースのような感じですね。この先にあるのが成形工場になります。
ガンプラ工場その4・金型部門
――ここがプラモデルの金型部門ですね。目の前にある金型は何のものになりますか?
岸山 これが39年前に登場した300円のガンプラの金型です。世界で一つしかないオリジナルで、これまでにこの金型から600万個以上も作っています。
――とてつもない数字ですね。金型が劣化することはないのですか?
岸山 この39年間メンテナンスを繰り返し今でも現役で成形しています。つまり、この金型よりも生産実績があるものがないので、耐久実験としてもまさに現在進行形でやっている状態ですね。
ガンプラ工場その5・成形部門
――金型に流し込んだ樹脂が、ここで成形されていくというわけですね。
岸山 そうです。成形機にも独自のペイントを施したものを使っています。成形機では、原料を注入して吸い上げます。そして、一度に4色が使える多色成形ができるようになっています。このおかげでわずかな時間でプラモデルの成形品材料が出来上がっているわけです。
ガンプラ工場その6・パレットエリア
――さっきから工場内でピコピコと言いながら自動搬送機が動いています。これはナンですか?
岸山 成形機で出来上がった各パーツが1パレットにたまると、自動搬送機が近くまで来てくれ、それを持ってパレットエリアへと運んでくれます。それまではある種、人力でやっていた作業を、効率化させるために自動搬送機を導入しました。
――この自動搬送機も、見たことがある色ですね。
岸山 シャア専用カラーと量産型カラーがあります。でも、2台とも速度は変わらず、良い仕事をしてくれます(笑)。
工場見学は抽選方式
――ここまでがガンプラ工場の全貌ということになるわけですけど、工場見学は一般の方でも出来るんですよね。
岸山 はい。ただし、毎回応募者が多数のため、抽選方式を取らせていただいています。本当は土日に定期的にやれれば良いのですが、営業をしていないため、だいたい月に一度くらいで平日に実施しています。それでも全国から多くの方にお越しいただき、ガンプラの世界により深く触れていただいています。
来られるのは、本当にガンプラ世代をそのまま反映したかのように、お子さん、学生さん、40~50代までとバラバラです。興味のある方は是非ご応募いただければ幸いです。
コンセプチュアルで、生産性も実に合理的なガンプラ工場は、まさにガンプラの聖地のような場所でした。
来年で40周年を迎えるガンプラですが、改めて馴染み深いモデル、昔では考えられないほど進化したモデルなどに手を触れてみてはいかがでしょうか。
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