ゲーム&ホビー
2019/6/26 16:30

“ガンプラ工場”潜入レポ(前編) 改めてガンプラの変遷を聞いてみた!

「機動戦士ガンダム」が初放送から40周年を迎え、話題になっています。一方、“ガンプラ(ガンダムシリーズのプラモデル)”は、39周年。つまり初放送から1年後に生産が始まったことになりますが、その理由は何なのか。そして、今ではプラモデルの代表格にもなったガンプラの長い変遷における秘密とは――。

 

今回は知っていそうで知らなかったガンプラの秘密を探るべく、マニアの間では聖地として知られる通称“ガンプラ工場”こと、静岡県のバンダイホビーセンターに潜入。前編の今回は、ホビー事業部の岸山博文さんにガンプラの変遷、秘密を聞きました。

 

↑BANDAI SPIRITS・ホビー事業部の岸山博文さん。静岡県清水市に生まれ、幼少期からバンダイの工場を自ら訪ねるなど、もともとが根っからのプラモデルファンだったそうです

 

 

ガンプラは本放送終了後に初出荷された!

――長いプラモデルの歴史の中でも、特に革命的な登場だったガンプラですが、この成り立ちからお聞かせください。

 

岸山博文さん(以下、岸山) まず、それまでのキャラクターのプラモデルとは流れがまったく異なるカタチでヒットに至っています。

 

それまでのキャラクターのプラモデルですと、例えば「マジンガーZ」の放送をしている間、同時期にマジンガーZの商品を出すのが普通でした。放送が終わると、「もう売れないだろう」ということでリピート生産はせず、商品の金型自体を新たに放送されるキャラクターに準じて作り直していました。つまり、キャラクター商品はオンタイムでないと成立しないというのが当時のセオリーだったわけです。

 

一方、ガンダムの場合は、当初は52話で放送するつもりだったところが、視聴率が伸び悩んで43話で終わってしまいます。

 

そういったところでファンの方から白羽の矢がたったのがバンダイ模型(現BANDAI SPIRITS)でした。それまでにバンダイ模型では宇宙戦艦ヤマトなどの商品を取り扱っていましたが、それになぞって、「子ども向けの商品ではなく、バンダイのほうでもっとリアルなものを作ってくれないか」と、弊社に沢山のハガキが届いたそうです。

 

前述の通り、放送自体は43話で打ち切りとなってしまったものの「やったほうが良い」という判断で、再放送が始まった段階で、バンダイよりガンダムのプラモデルを商品化し始めたところ、大ヒットに至ったというわけです。

 

――そうなると、もともと合金モデルを出していたメーカーさんへの配慮は……。

 

岸山 ですから、当初は版権を取得するに際しても、バンダイの人間が版元さんに何度か足を運び、すでに版権許諾を出されているメーカーにも迷惑をかけないよう色々と配慮しながら、なんとかバンダイでも許諾を得られた……と聞いています。

 

↑初期のガンプラの設計は、CADなどを使わず、ドラフターを使っての手作業で行われており、また、マスターとなるモデルも手作業による木の削りだしで作成されていたそうです

 

 

39年前のガンプラ現象

――果たしてガンプラは大ヒットに至ります。私ごとですが、当時、自分は第一世代で、原作を知らなかったにも関わらず買いあさっていました。

 

岸山 きっと再放送のころですね。だから、再放送が、ある意味では本放送と捉えられるかのような現象になっていました。私の記憶の中でもクラスに30人いて、そのうちの半分の男子15人中10人くらいはガンプラを買っていました。

 

――特に初期は、供給が追いつかなかったのか、近所のプラモデル店に子どもたちが長蛇の列をなしたり。

 

岸山 ありましたね。子ども特有のコネクションを使って「ガンプラが入る」日を予測したり(笑)。私は清水生まれですが、俗にいうチャリンコ部隊がプラモデル屋さんに問屋さんから納品される日、時間を事前に調べておいて、ガンプラが入るかどうかはわからないけど、とりあえずその時間にはプラモデル屋さんに行ってみる……みたいなことはよくやっていました(笑)。

 

振り返ると、キャラクターのプラモデルが子どもたちのコミュニケーションの中心になり、知恵を働かせるような力も与えていたのかと思います。

 

 

これまでに発売されたガンプラは約2000種類以上、累計5億個の出荷を突破!

――また、プラモデル業界で言うと、当時のバンダイはタミヤなどよりも子どもたちからの認知が薄かったようにも思います。

 

岸山 そうですね。タミヤさんは1/35スケールの戦車模型なども数多く手がけていて絶大な支持を得ていました。バンダイも実はキャラクターモデルと並行して、1/20スケールの自動車の模型などを当時から作っていて、それなりに定評があったようですが、やはりプラモデルの“キング”であるタミヤさんには到底及ばなかったはずです。

 

しかし、ガンプラの大ヒット以降、バンダイのプラモデルも知名度が上がりました。

 

――累計出荷数は、これまでにどれくらいになるんでしょうか。

 

岸山 つい先日5億個を越えました。すごい数ですよね。また、これまでに出したガンプラは約2000種類以上。RX-78という名前のガンダムだけでもいったいいくつあるんだろう……という状態です。

 

毎年何百という数の新製品が出ていますので、ここ数年だけでも300や400をゆうに上乗せして、どんどん増え続けていっています。

 

↑“ガンプラ工場”ことバンダイホビーセンターのロビーには歴代のガンプラがズラリ。当然、ショーケースは年々増えていっているのだそうです

 

 

ガンプラに“卒業”の文字はない?

――今の一番の購買層はどんな世代なのでしょうか?

 

岸山 もちろんガンプラが始まった当初同様、小学生のお子さんも多いです。ただ、キャラクター玩具の場合、小学生がある一定の期間ハマったものは、年齢を過ぎると、あっさり卒業していく……というのが普通の流れなのですが、ガンプラの場合は、卒業される方が少なく、大人になった今もお子さんと一緒にガンプラを楽しむ方もすごく多いです。

 

ですから、上の世代になると、40~50代の方も結構買ってくださっています。数は多くないですけど、60代になってお孫さんと一緒に楽しんでくださっている方もいらっしゃいますよ。

 

――購買層をずっと飽きさせない工夫もあったのではないでしょうか。

 

岸山 確かにさきほども言った通り、かなりのグレードモデルを生産し続けていますので、その意味では飽きさせなかったとも言えるかもしれません。

 

現在出ているもので言うと、一番上がパーフェクトグレード。そして、マスターグレード。さらに、ハイグレード。さらにそこから半完成品のようなハイレゾリューションモデルも出ているので、ニーズには細かく対応していると思います。

 

また、今日では「ガンダムビルドダイバーズ」というタイトルの映像作品もあります。これはガンプラを自分たちで作り上げ、そのプラモデルをプラモシミュレーションの世界で戦わせるという構成になっています。

 

――つまり、自分が作るガンプラが、そのまま映像の世界で戦っているかのような錯覚を起こせる。

 

岸山 そういうことです。特に小さいお子さんにとっては「作ったプラモデルが動き出すかもしれない」と思えて楽しいですよね。また、番組の中ではガンプラを改造するシーンもあって、どんどん強くしていったりします。それもお子さんにとっては「自分も改造してみよう」という気持ちになれますし、それもまたプラモデルの楽しみ方の一つだとアピールしているんですね。

 

だから、ガンプラがその時代ごとに様々な展開をしていきていて、今日もそれが続いていると言って良いかもしれません。

↑通称“PG”。最新の技術を用いて、モデルの外部はもちろん、内部構造にもこだわった最高峰ライン

 

↑通称“MG”。精巧なフレームを核として、自由自在な可動ギミックを追求したライン

 

↑通称“HG”。1/144スケールのモデルのライン。点数が多いため、複数の機体を揃えたくなります

 

 

↑ガンプラの世界をそのまま映像作品にしたもの。自分たちが作ったガンプラが戦うストーリー

 

 

展開中の“プロ野球ガンプラ”とは!?

――今年のガンダム40周年、来年のガンプラ40周年に向けて展開されていることはありますか?

 

岸山 まず一つがプロ野球12球団とのコラボですね。

 

――野球、ですか。

 

岸山 プロ野球とコラボして、2019年の各球団のチームカラーを配した「HG 1/144スケール RX-78-2ガンダム」を作って、各球団さまの試合の際にグッズ販売コーナーなどでも販売させていただく……といったことを始めています。

 

また、様々なデザイナーさんとのコラボもあります。日本人で唯一フェラーリのデザインをやられたKEN OKUYAMAさんデザインのガンプラを作り、具現化していこうという企画もあります。

 

ガンプラが培った39~40年を、これまで知っているところから一皮剥けて「え? ガンプラってこんな展開もできるのか」という挑戦をしていきたいと思っています。

 

↑過去にもよろいを着たRX-78など、斬新な展開をしてきたそうですが、ガンプラ40周年にに向けて様々な新商品を展開していくそうです

 

 

後編の次回は、お話をうかがったガンプラ工場内の潜入レポートをお届けします。「ガンプラのできるまで」がしっかりわかるはず。お楽しみに!

 

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