Vol.80-3
iPadを、よりPCのように使えるようにするのが、秋に公開される新OS「iPadOS 13」の狙いのひとつだ。
これまで、スマートフォン由来のOSには共通の弱さがあった。「1アプリ1ウインドウ」という基本原則だ。iOSもAndroidも、この点に大きな違いはない。
PCは複数のウインドウを重ねて使うのが当たり前だが、スマホでは「1画面1アプリで全画面利用」がこれまでの基本だった。とはいえ、Androidでは画面分割ができるようになっているし、特定のアプリを小画面的に重ねることができるものもある。iPadでは、画面を2分割して使う「Sprit Screen」という機能や、アプリを重ねて使う「Slide Over」といった機能がすでに存在している。
だがそれでも、PCで一般的に行われていることが意外とできない。例えば、「Wordで文書ファイルを2つ開き、横に並べて見比べながら文書を作る」とか、「フォルダのウインドウを2つ並べて、左から右へとドラッグ&ドロップしてファイルを整理する」といったことだ。一部のテキストエディタやウェブブラウザのように「2ファイル同時利用」に対応しているものもあるが、それは非常に例外的な存在だ。タブレットのような大型の画面になっても、PC的な使い方は想定されていなかった、というのが実情である。
iPadOSでは、この問題が解決される。ただし、アプリ側の対応も必須で、iOS 12までで動いているアプリがそのまま「2画面同時利用」できるようになるわけではない。とはいうものの、OSが正式公開される秋頃には、アプリデベロッパー側での対応予定も見えてきていると思われる。
また、ファイルの扱いも改善される。USBメモリやSDカードがPCと同様に使えるようになり、ウェブブラウザである「Safari」を使って、ウェブからのダウンロードも行える。まあ、PCやAndroidから見ると「まだできなかったのか」という部分ではあるのだが、ようやく「なんの工夫もなくできる」ようになるというのは大きい。
こうした部分がカバーされ、さらに動作速度なども改善されることで、iPadとPCの差はかなり縮まってきた。自由にアプリを開発すること、ゲームを中心とした大規模なアプリを使うことではPCのほうが有利なのだが、それは「高性能なPCを使った場合」の話であり、10万円を切るような低価格なPCの場合、iPadとの差は小さい。5万円を切るような「超低価格PC」ならば、iPadのほうがずっと快適である、と断言できる。
アップルは、高価なプロ用PCやMacをiPadと置き換えようとはしていない。低価格なPCの需要をiPadで置き換えていきたい、と狙っているのだ。
では、結果としてiPadはどういう存在になっていくのだろうか? Macとの棲み分けはどうなるのだろうか? その辺は次回のVol.80-4で解説する。
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