食の多様化が進むなか、調味料も進化していることをご存知でしょうか? ビーズ形状のわさびやパウダー状の醤油に味噌といった個性派、一方で希少な原材料や匠の技術を駆使したプレミアム商品など、“超”味料が市場をにぎわせています。今回はその後者にあたる、プレミアムタイプのお話。
それがこの7月に発売された「美酒佳肴(びしゅかこう) わりした」。手掛けたのは、門井商店という広島県の調味料メーカーですが、本商品に関しては少々ユニークな誕生秘話があります。
というのも、もともと同社の専門は問屋業。食品メーカーへの原材料提案が主な生業でしたが、二代目である門井俊社長は、代表でありながら職人レベルの開発技術をもっていた上、そもそも調味料オタク。自宅にたくさんのマイ調味料をストックし、それらを自宅のキッチンで夜な夜な調合しては試行錯誤……。そんな日々の研究が実を結び、とうとう委託加工を請け負うまでに! なかには大ヒットとなる商品も生まれました。そんなプロ中のプロである同社が、満を持して作った初のオリジナルブランドが、この「美酒佳肴 わりした」なのです。
クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」では、目標金額をはるかに超える465%の支持が集まるなど、注目度も圧倒的。そこで、門井社長に取材を依頼し、開発の背景や商品の魅力を教えてもらうとともに、ヒットの要因や活用法なども聞いてみました。
“究極”を調合したベストオブベスト
オタクといえるほど調味料の知識が豊富で、研ぎ澄まされた味覚ももっている門井社長。「美酒佳肴 わりした」の開発にも欠かせなかった、社長自身の鋭い感性は、東京農業大学の醸造科で学んだことが大きいと言います。
「当時はまったく醸造に興味がなかったんですが、東京には行きたいと思っており、親の後押しもあって入学しました。でも、いざ行ってみると学校自体がすごく面白かったんです。座学のほかに味を評価する授業もありまして、味覚はここで徹底的に磨かれましたね」(門井社長)
醸造は、発酵させてつくる日本伝統の醤油、味噌、みりん、酒などに欠かせないもの。もともと、好きなものにはとことん情熱を注ぎ込む性格だった門井社長は、天職としての力をどんどん高めていくことに。
「農大で得たことは、『美酒佳肴 わりした』の誕生にもつながっています。割り下は、醤油、みりん、酒が基本材料。私の得意分野ですし、これらの基礎的な原料のそれぞれにこだわってベストな配合でつくったら、きっと素晴らしい万能調味料ができ上がると思ったんです」(門井社長)
誕生の背景には、門井社長自身の“世界に誇れる食文化である和食の魅力を宣揚したい”という思いも。和食の味付けは難しい……と尻込みしている人の手助けができたら。そうして開発がスタートしたわけですが、やるとなったら一切の妥協はできません。原料集めひとつをとっても、想像以上に困難をきわめたそうです。
「醤油、みりん、酒を丁寧に造っている蔵を探すところからはじめたのですが、簡単には見つからなかったんです。意外に思われるかもしれませんが、たとえば醤油であれば、完全自社醸造かつ昔ながらの木桶で仕込んでいる蔵はきわめて少ないんです」(門井社長)
同様にみりんも、国内で自社仕込みをしている蔵を吟味。日本酒は醸造アルコールを使わずに米だけで醸す純米酒であることを大前提に、そのうえでうまみが濃醇な料理酒を見つけ出したとか。
「醤油だけでも淡口、濃口、再仕込、3年熟成など数種を選び、そのほかダシには利尻産昆布を採用するなど、最終的にそろえた原料は全40種類以上。それら一つひとつを官能評価して特徴を分けて、とスタッフも呆れるほどの(笑)試行錯誤を繰り返しましたね。完成してみると、2018年に割り下を作ろうと思い立ってから、実に1年3か月もの期間がかかっていました。さらに、製造時にも自社瓶詰め工程後に熟成させ、味を馴染ませてから出荷しています。とにかくできる限りを尽くした、ベストオブベストといえる逸品です」(門井社長)
「美酒佳肴 わりした」
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