世界におけるSGDs(持続可能な開発目標)の意識の高まりとともに、人気を集めているのがビーガン食品。イギリスではもともとビーガンだった人だけでなく、一般消費者にも浸透してきています。本稿では、単なる一過性ではなさそうなイギリスのビーガンブームに迫ります。
ソーシャルメディアの影響力
「ソーシャルメディアによって、イギリス国民が健康的になった」と語るのは、有名なビーガンシェフのGaz Oakley(ギャズ・オークリー)氏。InstagramやFacebook、Pinterest、YouTubeなどのソーシャルメディア上に流れるビーガン食品など、ヘルシー志向な食事の魅力的な画像・動画によって、それらに興味を持つ一般人がここ数年で増えたそうです。Oakley氏自身も「AvantGardeVegan」のアカウント名で35.8万人のInstagramフォロワー、74万人のYouTubeチャンネル登録者を持つインフルエンサー。ビーガン食品のカラフルでポジティブなイメージや映像を届けることで、「ビーガン食品は単調で味気ない」という概念を打ち破った立役者です。
影響力があるインスタグラマーはほかにもいますが、ヘルシー志向のインフルエンサーや有名人が作り出す “オシャレなビーガン” のイメージが、イギリスのビーガン人気に大きな影響を与えています。
また近年、イギリス人の間では、ダイエットや健康的な習慣などを「新年の抱負」として立てる人が増えており、2019年1月をビーガン月間とする「Viganuary(ビーガニュアリー)」という、Vegan(ビーガン)とJanuary (ジャニュアリー=1月)をかけた造語が、ソーシャルメディア上で年明けのハッシュタグとして話題となっていました。
このように、ソーシャルメディアがビーガン関連のインスピレーションを得るのに便利なプラットフォームであり、昨今のビーガンブームの火付け役となったと言っても過言ではないでしょう。
英国大手食品メーカーやスーパーも続々参入
ほんの数年前までは、健康食品店やビーガン専門店、ビーガン向けオンラインショップなど購入場所が限られていたビーガン食品ですが、現在は多くの大手食品メーカーや大手スーパーが参入しています。
植物由来の代替加工肉を専門とするGosh!やFry’s Family Foodsなどビーガン専門のメーカーにとどまらず、大手食品メーカーも次々とビーガン食品開発に参入。シーフード商品のQuorn 、アイスクリームのBen and Jerry’s、調味料のHeinzなど様々なメーカーがビーガン向け食品をイギリスの大手スーパーで販売開始しました。また、Sainsbury’sやTesco、Marks&Spencer、Morrisonsといった大手スーパーも自社ブランドのビーガン商品を提供しています。
また、ここ数年におけるビーガン食品の種類の変化は劇的で、植物由来の代替肉はもちろん、レディミール、アイスクリーム、調味料、パン、ピザ、チーズ、ゼリー、ヨーグルト、お菓子、ケーキなど、バラエティに富んだビーガン食品が一般消費者も手軽に入手できるようになりました。
こうした製品にはスタイリッシュなパッケージやポップなロゴ、食欲をそそる写真などが使用されていて、いままでビーガンに興味がなかった一般消費者も思わず手に取りたくなるようなデザインになっているのが特徴。今後イギリスでは、ますますビーガン食品が浸透しそうです。
執筆者/ ハモンド 綾子