公園・駐車場・駅前・マンション敷地内など街のどこにでも見かける街路灯。夜道の安全にはなくてはならないインフラですが、金属でできているので当然、寿命があります。毎年、腐食した街路灯の倒壊事故が数件発生しており、重大な事故を引き起こさないよう早めの交換が求められているところです。
そのような背景のなか、パナソニックライフソリューションズは今年、業界初の省施工型街路灯リニューアル専用ポール「QQポール」を開発しました。そのデモンストレーションを、さいたま市のパナソニック社宅内で実施するというので、普段見ることのできない街路灯の付け替え工事はどんなものかと、興味津々で見学してきました。
老朽化が進み、危険な状態にある街路灯ポールが増加
今からちょうど1年後の2021年1月に一般照明用水銀ランプの製造・輸出が禁止されます。パナソニックでは2020年6月からいち早く水銀ランプの生産を終了予定なのですが、これに伴い、街路灯のLED化が加速すると見られています。現在、日本国内にはLED化されていない街路灯は185万台あると見られており、その中で、設置から21年以上が経過しているのが100万本ほど、うち40万本程度が腐食など危険な状態にあるとパナソニックでは見ています。
人手不足を背景に、短工期・少廃材のリニューアルポール「QQポール」を開発
これらの危険な状態ある街路灯ポールは早急に撤去・交換する必要があるのですが、そこで問題となるのが職人不足。街路灯交換工事ができる第1種電気工事士資格を持つ職人の高齢化が進み、資格者の数は年々減少しています。需要はあるけど、工事する人手が足りない……というわけでパナソニックが開発したのが「QQポール」なのです。
従来、老朽化した街路灯を交換するには、基礎のコンクリートを掘り起こすことから始める必要がありました。そのため、作業完了までには最低でも2日間かかっていたのです。しかし、QQポールは既存のポールの基礎を利用するため平均4時間、慣れれば2時間程度で作業が完了します。
施工は比較的簡単です。ポールから灯具を取り外したら既存のポールを切断し、そこにQQポールを挿します。QQポールは既存のポールより径が細くなっているので、切断したポールの中にすっぽり収めることができるのです。QQポールの根本に搭載された垂直調整治具(じぐ)によってポールを垂直にしたら、隙間に速硬性モルタルを充填し、安全を考慮して垂直調整治具を隠すために根巻コンクリートを作ればポールの作業は終了。あとは、根巻コンクリートが乾燥したら上端にLED灯具を取り付けて完成です。
実際のポール交換工事の手順を画像でチェック
では実際に、画像とともにパナソニックの社宅内で行われたポール交換工事を見ていきましょう。
なお、以下写真の通り、先端に取り付けるLED灯具は、近くで見るとかなり大きいです。持っている人はパナソニックの社員で同社アメリカンフットボールチーム「パナソニックインパルス」の選手です。アメフト選手なのでかなり身体が大きいのですが、彼と比較してもLED灯具の大きいことがよくわかります。
QQポールだと作業の時短に加え、トータルコストが削減できる
QQポールは作業の時短になるだけでなく、施工コストも下がります。ポールの製品価格は従来よりも高価ですが、基礎工事費用が不要なのでトータルコストは8万円削減の約26万円となります。敷地内に複数本を設置している場合、コスト削減のメリットはより大きくなるでしょう。ポールの交換と同時に光源をLEDに変えれば、明るさがアップしながら省エネになります。
日本は海外と比べて治安が良いとされていますが、それでも暗い夜道にはさまざまな危険が潜んでいます。暗い場所を作らないことが安心・安全の第一歩であり、その裏ではこうしたメーカーによる地道な企業努力と、工事従事者たちの地道な作業が繰り広げられていたのです。ひとつ勉強になりました。
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