日ごろ私たちが目にするパナソニック製品といえば、テレビや冷蔵庫といった家電製品が中心。多くの家電ジャンルでトップシェアを獲得しているのは知っています。でも、トンネル内設備でも高い存在感を誇っているのをご存じでしたか? 筆者もよく知りませんでしたが、今回、開通前の大阪の高速道路でパナソニックが手掛けた設備機器の見学にお呼ばれして、その現場を目の当たりにしました。高速道路の安全を守るため、さまざまな巨大設備が動いていたのです。その驚きを、以下でレポートしていきましょう。
開通前の大阪の高速道路で、巨大換気設備を見学
見学会が開催されたのは、今年春に全面開通予定の阪神高速6号大和川線です。大阪市の南を流れる大和川の南岸に沿って松原市と堺市を東西に結ぶ9.7kmの高速道路で、そのほとんどがトンネル構造となっています。
都市部の高速道路は交通量が多く、そのままではトンネルに排気ガスが充満して視界が悪くなったり、一酸化炭素濃度が高くなって危険な状態に。それだけでなく、車の走行によるピストン効果により進行方向側に排気ガスと粉塵(じん)が押し出され、出口付近の空気汚染も深刻化する傾向にあります。しかし、都市部の高速道路トンネル付近には住宅密集地が多いため、こうした空気の汚染は、極力防がなければならないのです。
このような背景の下、パナソニックライフソリューションズ傘下のパナソニック環境エンジニアリング社は大和川線トンネル全体の換気設備を請け負いました。換気設備全体の詳細設計、施工、調整、アフターメンテナンスを含めた事業で、受注額は約77億円。パナソニックのトンネル内換気事業としては過去最高の受注額・納入台数となりました。
台風並みの風力を生み出すジェットファンで排気ガスをコントロール
トンネル内の換気設備は、ジェットファンと換気所の大きく2つに分けられます。ジェットファンとは、トンネルの天井からぶら下がっている直径1.3mの大きな扇風機で、旅客機のジェットエンジンに似ていることからその名がついたものです。機能としては単純に風を送り出すだけなのですが、その最大風速は35m/sと台風並み。その強力な風速でトンネル内の排気ガスをコントロールしているわけです。ちなみに、大和川線で最長である第3トンネルでは、4.9kmのトンネル内にジェットファンが56台も設置されています。
トンネル内には煙霧の透過率を測定するVI計、一酸化炭素濃度を検出するCO計、風向風速計が取り付けられ、監視カメラの映像解析により割り出した走行台数と併せて、ジェットファンの運転を最適にコントロールしています。走行車両が多い時や渋滞時には全基を運転し、走行台数が少ない時には稼働台数を間引きして省エネしているとのこと。なお、国内のトンネル内に設置されているVI計はすべてパナソニック製で、トンネル内シェアは100%とのことです。
大和川線に納入されたジェットファンは筒の長さを短縮した新型。小型軽量化したことにより設置工事の省力化、天井構造体への負担軽減といったメリットがあります。ただし、小型軽量化しながらも、風量および騒音値は従来の性能を維持しているのがポイント。