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2020/2/21 18:30

マクドナルドの使用済み油が「3Dプリント用樹脂」になるという、いいことづくめな話

揚げ物をした後に出るのが、大量の使用済み油。そのまま捨てると環境破壊につながる廃棄油の処理は悩ましいものです。しかし、そんな廃棄油を樹脂に変えることに成功したという研究が先月発表されました。しかも実験に使われたのはマクドナルドの使用済み油だというんです。

↑食用油から樹脂は作れないだろうか?

 

カナダ、トロント大学スカボロ校のシンプソン教授は、3年ほど前に3Dプリンターを購入したところ、そのプリンターに使われている樹脂の分子構造が食用油とよく似ていることに気づき、「食用油から樹脂が作れないか?」という発想が生まれました。食用油を原料にすれば、その樹脂は微生物などに分解される生分解性の性質を持ち、環境への負荷も軽減することができます。

 

そこでシンプソン教授が率いる研究チームが、使用済み油から樹脂を作る実験を開始。実験で使う使用済み油の提供を主要なフードチェーンに呼びかけたところ、唯一協力を示したのがマクドナルドだったのでした。大学近くの、オンタリオ州スカボロ―のマクドナルドから廃棄油を回収し、それを実験に利用。

 

その結果、わずか1プロセスの化学反応で、油から樹脂に変換することに成功。1リットルの使用済み食用油から、420mlの樹脂を作ることができたのです。またこの樹脂を使って、実際に3Dプリンターで蝶のオブジェクトをプリント。100マイクロメートルレベルまで細部を表現可能で、蝶の繊細な模様もきれいにプリントすることができました。しかもこの樹脂は構造的にも熱的にも安定しており、プリント後に溶けて型崩れするようなこともありませんでした。

 

安価で環境にやさしい

使用済みの油を使ったということで、この樹脂は原料が安価ということが大きな特徴です。高画質が可能な従来の樹脂は石炭や石油を原料に、数ステップを踏んで作られているため、1リットルあたり525米ドルの原料がかかります。しかし廃棄油を使って、この研究チームのように1ステップだけの化学反応で樹脂を作ることができれば、1トンあたり300米ドル以下に抑えることも可能で、原料を大きく削減することができます。

 

さらに生分解性があるため、環境にもやさしい点も特徴のひとつです。食用油から作った樹脂を土壌に埋めてその変化を観察したところ、約2週間でおよそ20%が分解されていることもわかりました。海洋プラスチックによる自然破壊問題があるなか、生分解性の特徴があることは、大きなメリットになることは間違いありません。

 

各家庭からも飲食店からも出てくる廃棄油。3Dプリントが今後広く利用されるようになっていけば、使用済み油の新たな活用方法として、この樹脂が脚光を浴びることになるかもしれません。