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2020/3/5 17:33

コービー・ブライアントの軌跡――マンバメンタリティが体現された生前の「慈善活動」の数々

2月24日(現地時間)、ロサンゼルス・レイカーズの本拠地「ステイプルズ・センター」で、故コービー・ブライアントと娘ジアナの追悼式が執り行われた。式には2万人超のファンが集まり、妻のヴァネッサをはじめ、マイケル・ジョーダンやシャキール・オニールらが登壇し、スピーチを披露。同日はSNS上にもコービーとジアナにトリビュートを捧げる写真やメッセージが多数投稿され、生前に2人が与えた影響が改めて再確認される1日となった。

 

コービーは、一人のプレーヤーとしてコート上で絶大な存在感を放ち、バスケットボール界からは最大限の敬意が払われている。しかし、彼はプロ引退以前からバスケットボールという競技の垣根を超え、様々な社会活動を実施しマンバ(コービー・ブライアントの愛称)メンタリティを体現、そして伝承していた。

↑1月末にヘリコプターの墜落事故で急逝したNBAレイカーズのレジェンド、コービー・ブライアント

 

その基盤となるのが、コービーが家族で設立した「コービー&ヴァネッサ・ブライアン家族財団(KVBFF)」である。同財団では、ロサンゼルスで暮らす若いホームレスたちを支援。また、「KVBFF」のサイトによると、同財団はオレンジカウンティを拠点とする若者たちのサッカークラブ「マンバFC」のホストであり、若い選手を指導して健康とフィットネスを促進している。

 

5度のNBAチャンピオンは、スポーツのみならず、学業の重要性を理解していた。だからこそ、彼は2007年に「アフター・スクール・オールスター」の全国大使の役職を快諾したのだろう。「アフター・スクール・オールスター」とは、全米の学校と提携して低所得世帯の子どもたちに学習の機会を提供する非営利組織。コービーはこのパートナーシップを通じて、度々声を発しては、若者たちに目標を達成する術やリーダーになる重要性を説き、それと並行して組織の資金集めにも協力。愛すべき地元のロサンゼルス支部に頻繁に寄付を行っていた。

 

また、元チームメイトであるラマー・オドムが、ニューヨークとロサンゼルスで生活する恵まれない都市部の若者のための財団を設立した時も、彼は躊躇することなく、自ら進んで手を貸した。この組織は、教育ツールおよび指導サービスの提供を目的としている。加えて、レクリエーション機会の創出と研究のための資金作りにも尽力し、コービーは陰ながらオドムをサポートした。もちろん、盟友レブロン・ジェームズが「I PROMISE SCHOOL」を設立した際にも、自身が監修する小説『The Wizenard Series: Training Camp』を寄贈している。

↑現役時代は「マンバ」の愛称で親しまれ絶大な人気を誇った

 

コービーは、戦い(試合)においては闘争本能を剥き出しにし、常に勝利を目指したが、争い事にはとても否定的な男だった。2008年、彼は「エイド・スティル・リクワイアード」のスポークスパーソンとなり、老若男女問わず殺害され、尊い命が奪われ続けている紛争地域へ意識を向けさせるべく、公共広告の制作を手助けした。この年、マンバはほかでもない「もし、立ち上がることを厭わない人々が団結したら、奇跡は起こる。私たちには世界を救う力があります」というエモーショナルなメッセージを発信している。

 

レイカーズのレジェンドは、国外での活動にも積極的だった。特に中国には頻繁に足を運んでおり、同国では自国を含む世界中のどのアスリートよりも大きな影響力を持っていると言われている。そんなコービーは、「KVBFF」と「中国宋慶齢基金会」で手を取り合い、「コービー中国基金」を設立。同基金は、貧困地区や低収入世帯で生活する米中両国の子どもたちの教育やスポーツ、文化、芸術などを援助することを目的とし、2009年に誕生した。設立直後の慈善晩餐会には多数の企業が参加し、4200万元(当時レートで約5億9000万円)の義捐金が集まり、そのうちの500万元(約7000万円)は四川大地震で被災した子どもたちに寄付されている。

 

また、中国政府からサポートを受ける「コービー中国基金」は、米国の高校生に標準中国語の授業、中国料理のコース、武道のクラスを提供することにより、米中の文化的理解度を深めることにも注力していた。

↑妻のヴァネッサ(写真左)は事故からわずか3日後に、事故被害に遭った家族たちを支援するための財団設立を発表

 

これらはあくまで彼の活動の一部であり、他にも「国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館」へ資金提供、解散寸前だったカリフォルニア州ローズビルの女子バスケットボールプログラムへのサポート、難病と闘う子どもたちのもとへの訪問や試合への招待など、彼が与えたエネルギーはとても一本の記事では語れないほど大きなものである。

 

マンバメンタリティは多くの人々によってこれからも受け継がれていく。彼を最も近くでサポートした妻のヴァネッサは、夫の死からわずか3日後に「マンバ・オン・スリー・ファンド」の設立を宣言。これは、ヴァネッサと同様、事故被害に遭った家族たちを支援するための財団であり、まさにマンバメンタリティを象徴するアクションとして世界から賞賛とサポートの声があがった。

 

どこかの誰かではなく、コービーを知る全ての人々で彼のレガシーを継承すれば、未来はきっと、否、必ずや素晴らしいものとなるだろう。