ペンタイプになった、磁力でカスを掃除する消しゴム
以前、この連載で「消しゴムは、消す性能の話だけなら“進化の頂点”にまでほとんど達してしまった文房具と言えるだろう」という話を書いた。最近の消しゴムは、鉛筆の筆跡をこすって消す性能=「消字率」がもうほぼすべての製品で90~95%に達していて、ここからさらに向上しても誤差レベルだというくらいに、進化しきっているのである。
それなら消しゴムの新製品なんて意味がないじゃないか、と思われるかもしれないが、実は2018後半~2019年は、消しゴムの新製品がけっこう豊作と言えるシーズンだったのだ。
それはなぜかというと、もはや消しゴムの争点は消字率ではなく、「消しゴム自体が折れない」とか「見た目がかっこいい」とか、そういう部分に移行しているから。逆に言えば、そういう方向なら消しゴムはまだまだ進化できるということだろう。
注目の磁力消しゴム「磁ケシ」がペンに進化
その消しゴム新製品ラッシュの中でも、特に注目を集めたのが、クツワの「磁ケシ」。消しゴムの中に微細な鉄粉を練り込み、スリーブ後端の磁石で消しカスを一気に集めて掃除ができる、というものだ。
実際に売れ行きも好調で、人気も高かったようだが、ただひとつ問題があった。どうしても消しゴムのメインユーザー層である“児童向け”のデザインで、大人が堂々と使うには、やや腰が引けるのだ(後続でラインナップも増えたが、すべてファンシー路線)。
鉄粉入りに空気入り…軽く消えてカスがまとまる「最新消しゴム」2傑
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せっかく機能的に優れた製品だから、大人も使いたいだろう……と思っていたところ、ついに登場したのがペンタイプの「ペン磁ケシ」だ。
クツワ
ペン磁ケシ
500円(税別)
オールプラ軸なので、ガチビジネス寄りとは言い難いが、「Zi」のロゴ以外はほぼ黒一色。これならば社会人のペンケースに入っていても、さほど違和感はなさそうだ。
子ども心も大人心も鷲掴み! かわいい上によく消える令和の“ファンシー消しゴム”
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後端のノックボタンを押すと、カチッというクリック感とともに、数㎜ずつ先端から棒状の消しゴムが出てくる構造。ちなみにメーカー推奨は2ノック。消しゴム生地は硬めに仕上げられているものの、無駄に軸から出すと、消している最中にポキリと折れてしまいそうなので、ここは指示通り2ノック分で消すのが正解だろう。
消しゴム自体の直径は5㎜と、ペンタイプとしては平均的なところ。手帳などの細かい書き込みもピンポイントで消しやすい。
また、消字性能は言うまでもなく問題なし。ペンタイプじゃない元の磁ケシは、2Bなど濃いめの鉛筆に適すよう柔らかめにチューニングされていたようだが、ペン字消しはそこまで濃い鉛筆に特化した印象はない。全般的に良く消えるなぁ、といった感想だ。
肝心の“磁力で消しカスを集めて捨てる”ギミックだが、磁石はペン軸後端に仕込まれている。消し跡に後端を近づけると、スイッと消しカスが吸着する様子は、相変わらず気持ちいい。
で、吸い付けた消しカスを捨てるときは、クリップ/転がり止め兼用のU字型(U磁石モチーフなのだろう)パーツをグッと引く。すると内部の磁石が後端から離れて、パラパラと消しカスがパージされる仕組みである。
ペン字消しの用途上、狭い範囲を小さくコシコシと動かして消すシーンが多いと思うが、その場合どうしても消しカスが細かくなりがちだ。すると手ではきれいに消しカスを払いきれない、なんてこともある。
ところが、磁力で吸い付ければ掃除はかなり簡単。そういう意味では、ペン型消しゴムと磁力吸着機構はかなり相性が良いように感じられた。
ちなみにU字パーツを引いても粉~糸状の細かい消しカスがくっついて取れない時は、U字パーツを引いてパッと離すとバネで勢いよく戻るので、何回か繰り返せばその衝撃できれいに落ちる。
クライアント社の会議室で、消しカスを床にザッと払うのは気が引ける……なんて場合(別に構わないと思うんだけど、気にする人はいる)も、吸着して集めておいて自分のペンケースの中に一時的に捨てる、などのケアが可能だ。
こういったマナー的な部分に関しても便利なわけで、ペン磁ケシは、社会人こそ持っておくと良いかもしれない。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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