ゼブラが“「ジェットストリーム」キラー”として「ブレン」を出したら、今度は三菱鉛筆が「サラサ」に対抗して「uni-ball one」を出してきたよ〜、ボールペン業界って怖い! という話を前回させてもらった。こうして、筆記具の新製品が次々と開発されるわけなので、ユーザーとしてはもちろん「いいぞ、もっとやれ!」という感じである。
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で、その“「ジェットストリーム」キラー”として昨年のボールペン界隈で大きな話題となったゼブラ「ブレン」だが、なんと早くも、多色タイプの「ブレン3C」を投入した。
ゼブラ
ブレン3C
400円(税別)
まず見た目に関しては、単色バージョンのデザインをきちんと踏襲しているな、ということ。先端が金属の口金になったことなど、若干シルエットに変化はあるが、後端の楕円断面がクリップを経由してなめらかに円筒の軸に流れていく雰囲気は、まさに「ブレン」。
世界的な工業デザイナー、佐藤オオキ氏が率いるnendoの仕事だけあって、そのあたりは間違いないなという印象だ。
しかもすごいのが、3色であるにもかかわらず、軸径などのサイズが単色「ブレン」とほぼ同じ、ということ。
そもそも「ブレン」は、ペン先のガタつきや振動を抑制してブレずに書ける「ブレンシステム」という機構を搭載しており、通常のノック式ボールペンよりも複雑な内部構造を持っていた。多色化されても同じ軸径なのに、ブレンシステムは搭載できるのか? というのが、リリース情報を見たときに疑問だったのである。
実際に書いてみると、なるほど、先端のガタつきはほぼなく、剛性感の高い書き味は非常にスムーズ。3色タイプでも、これは間違いなくブレンである、と納得できた。
さすがに、内部でリフィルの揺れを軽減するなどの機構は除外されたようだが、ペン先を受け止めて固定するダイレクトタッチパーツのおかげで、安定感は充分。手元が安定することで、なめらかなエマルジョンインクの性能も十全に発揮されているように思う。
もうひとつ気になったのが、ノックノブの構成だ。後端の楕円を割るようにして大きな黒のノックがあり、赤・青は必要最低限という、ささやかなノックが側面に配置されている。
これはもちろん、多色といえども結局は黒の使用頻度が最も高いわけで、黒が使いやすいようにされているのだろう。なにより、使い慣れないうちから黒が確実に出せる、という安心感だけでも優秀だ。
さらに、ノックノブの指に当たるパーツがゴムでできているのも面白い。これは「ブレン」シリーズの“振動抑制”というテーマにかかる部分で、ノックを戻したときの衝撃を吸収するため、ということらしい。
従来の多色ペンとノック戻り音を比較してみると、なるほど、確かにカチン! という衝撃の耳障りな高音側が減っているように感じる。……といってもさほど大きな差ではないが、そこはやはりゼブラとしてもこだわっておきたいポイントなのだろう。
ちなみに、冒頭でも少し触れた先端の金属の口金だが、これは低重心化のための重りとして機能している。単色の「ブレン」は、内部に真ちゅうの重りを内蔵していたが、多色ペンは機構上、そういったパーツを搭載しづらい(加えて、軸径もそのままに保ちたい)。そこで、重りを外側に出す意味もあって、口金の金属化という結果になったようだ。
ブレンらしいシルエットと、機構をできるだけ変えずに多色化する、という難題をクリアするための工夫として、なかなか興味深い。
なによりすごいのは、400円(税別)という価格である。単色が発売されたときも、ブレンシステムという従来にない機構を盛り込みつつ、150円(税別)という低価格なことに驚いたが、それが3色になっても単純に3倍にはならないのである。うーん、安い。
そもそも、ペン先がぶれない剛性感の高い書き味が味わえるということだけでもオススメできるし、さらにこのコスパの高さは単純にお買い得。「ブレン」ユーザーの中には、「手帳に使いたいから多色を待ってた!」という人も多いと思うし、まだ「ブレン」を試したことのない人にも、ぜひ体験してみて欲しい1本だ。
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