2020年5月7日に発表されたASUS「ZenBook Duo」は、昨年夏に発売され大きな話題となった2画面ノートPC「ZenBook Pro Duo」の小型モデル。メインディスプレイを15.6型の4K有機ELディスプレイから、14.0型フルHD液晶ディスプレイへの変更などで、モバイル可能なサイズ・重量と、18万2800円(Core i5モデル)/21万9800円(Core i7モデル)という現実的な価格設定を実現しています。ZenBook Pro DuoはASUS Store価格で46万6500円と超高額だったので、半額以下ということになりますね。
正直なところZenBook Pro Duoはその価格設定が高いハードルになっていましたが(もちろん、それに見合う高性能を備えています)、10万円台で購入できるZenBook Duoは、一般ユーザーにもリーチする選択肢。ここではその詳細をレビューしていきます。
驚きの“内蔵”デュアルディスプレイ、その使い勝手は?
まずは本機自慢のデュアルディスプレイについて見ていきましょう。ZenBook Duoは、14.0型フルHD液晶ディスプレイに加え、ヒンジを挟んだ反対側(手前側)にタッチ操作対応でワイド形状の12.6型サブ液晶ディスプレイ「ScreenPad+」を搭載しています。2枚のディスプレイは上下に繋がっており、合わせて1枚のディスプレイのように使うことも、分割して使うこともできます。
メインディスプレイ(上画面)で作業をしつつ、ScreenPad+(下画面)にメールアプリやスケジュールアプリなどの常用アプリを配置したり、YouTubeの動画を再生したり、フォトレタッチ、動画編集アプリの邪魔な操作パネルを下画面に移したりといった使い方が考えられますね。
なお、ZenBook Duoは自慢のScreenPad+をより快適に使えるよう、さまざまな便利機能を搭載。あらかじめ登録しておいたアプリの組みあわせをタッチ1つで起動&ScreenPad+上に整列表示したり、手書きメモ&手書き文字認識パッドとして使えるようにしたり、コピーや貼り付けなどよく使うショートカットをタッチボタンとして使えたりできます。
アイデア次第というところですが、クリエイターからビジネスマンまで、さまざまなユーザーの生産性向上に貢献してくれそうです
ゲーミングPCとしても使えるほどの圧倒的パフォーマンス
続いて、パフォーマンスについても検証していきます。ZenBook Duoは、最新の第10世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーのモバイル向けUプロセッサーラインを搭載。これだけでノートPCとしては充分な高性能なのですが、本機はこれにディスクリートGPU「NVIDIA GeForce MX250」を搭載し、ノートPCでは軽視されがちなグラフィックス性能も高めています。
具体的にどれくらい高性能化しているか、定番オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ』の公式ベンチマークで確認してみました。
テスト内容(プリセット) | スコア | 平均フレームレート | 評価 |
高品質(ノートPC) | 5153 | 35.0 | とても快適 |
最高品質 | 3445 | 23.1 | やや快適 |
【参考】他社製モバイルノートPC(2019年夏モデル) | 1151 | 7.1 | 設定変更が必要 |
同ベンチマークにはさまざまな使用環境を想定したプリセットがいくつか用意されており、今回試したのは「高品質(ノートPC)」と「最高品質」。どちらもゲーミングPCを意識したもので、美麗なグラフィックを楽しめる反面、マシンに相当の負荷がかかります。当然ながらグラフィック処理専用のディスクリートGPUを搭載しない一般的なノートPCでは満足に動作させることができず、今回、別途用意したモバイルノートPC(2019年夏発売のハイスペックモデル)では「設定変更が必要」と言われてしまいました。
その点、NVIDIA GeForce MX250を搭載するZenBook Duoは、「高品質(ノートPC)」で「とても快適」、よりヘビーな「最高品質」でも「やや快適」という好成績をマーク。ゲーミングノートPCとしても活用できるパフォーマンスを見せつけてくれました。なお、本機の自慢であるデュアルディスプレイはゲームプレイにも好適。上画面でゲームをプレイしつつ、下画面に攻略情報を表示させたり、仲間と連絡を取るためのSNS画面を表示させたりといったことができます。
では、ビジネスユースではどうでしょうか? こちらも定番のベンチマークである「PCMark 10」で比較してみました。
テスト対象 | PCMark 10 Score | Essentials (基本性能) | Productivity (ビジネス用途) | Digital Content Creation(コンテンツ制作) |
ZenBook Duo(Core i7モデル) | 4565 | 9364 | 7793 | 3538 |
【参考】他社製モバイルノートPC(2019年夏モデル) | 3593 | 7552 | 5992 | 2783 |
こちらも昨年夏に発売されたハイスペックモバイルノートPCと比較してみましたが、その差は歴然。グラフィック性能だけでなく、全ての点でこれまで以上のハイパフォーマンスを叩き出しています。内蔵メモリが16GBもあるため、重めの作業を複数同時に行う際もキビキビと動作します。ストレスなく作業できますし、長く現役で使えそうです。
なお、ハイパフォーマンス化によって懸念されるバッテリー駆動時間の短縮化ですが、カタログ値で約13.9時間(Core i7モデルの場合)、定番バッテリーベンチマークアプリ「BBench」による測定で約12時間9分(ディスプレイの明るさ:50%、キーストローク出力:ON、Web巡回:ON)と、充分なスタミナを発揮してくれました。これならモバイルマシンとしても使えそうです。
キーボード&タッチパッドは少しクセが強いかも?
他に類を見ないデュアルディスプレイなど、見るからに個性的なZenBook Duoですが、その使い勝手はどうでしょうか? まず本体サイズですが、フットプリントこそ一般的なA4サイズノートPCですが、機能盛りだくさんということもあって本体はややぶ厚く、ズシリとくる重さがありました。それでも充分にモバイル可能なレベルだとは思いますが、少しでも軽量なマシンをという人には向いていないかもしれません。
キーボードはScreenPad+によって下に追いやられており、本来そこにあったトラックパッドはキーボードの右側に収められています。結果、このクラスのノートPCとしてはキーボードサイズが一回り小さく、キーピッチは目測で約17.5mmに。これはおおよそ11.6型クラスのコンパクトノートと同程度のサイズ。タイピングの多いユーザーにはなかなか厳しい仕様と言えるでしょう。ホームポジションが大きく左に寄ってしまっているのも、かなり違和感があります。キー配列にはクセがなく、キーストロークも充分に確保されているので、慣れてしまえば問題ないとは思うのですが……。
クリエイター&ゲーマーには文句なしにイチオシのパワフルマシン
約1週間試用してみて分かったのは、本機が見た目の通り、かなり尖ったマシンであること。最大の特長であるデュアルディスプレイの使い勝手はかなり良く、フォトレタッチや動画編集など、とにかく多くのウィンドウやパネルを展開せねばならない作業では絶大な威力を発揮してくれました。オフィスワークでも、複数のアプリを切り換えて使う人には充分な恩恵を感じられるでしょう。
また、持ち歩きが現実的なサイズ・重量のノートPCとして極めてハイパフォーマンスなのも良いところ。薄型化・軽量化が進むモバイルノートPCはどうしてもグラフィック性能が弱いのですが、本機ならヘビーな動画編集から本格ゲームまでストレスなく楽しむことができます。
ただ、それだけにキーボードとトラックパッドの使い心地の悪さはかなり残念。面積的に仕方なかったことは分かるのですが、筆者のようにタイピングが多いユーザーにはなかなか厳しいものがありました。
結論を言えば、本機はクリエイターあるいはゲーマーには手放しでオススメ。メインマシンとしても充分使えるハイパフォーマンスやScreenPad+は必ずや生産性を高めてくれるでしょう。対してオフィスワーカー、特に最近流行りのテレワーク用途については、購入前の確認が必須。やや個性的なキーボード配置とトラックパッドの使い心地を事前に試すことを強くおすすめします。それで「問題ない」と感じたならば、その尖った魅力の数々がビジネス用途においても活躍してくれるはずです。
【SPEC(Core i7モデル)】●OS:Windows 10 Home ●CPU:Intel Core i7-10510U(4コア/8スレッド 1.80~4.90GHz) ●メモリ:16GB ●ストレージ:1TB SSD ●グラフィック:NVIDIA GeForce MX250 ●ディスプレイ:14.0型フルHD液晶(1920×1080ドット)および、12.6型 ScreenPad+(1920×515ドット) ●インターフェイス:USB 3.1 Gen2(Type-C)×1、USB 3.1 Gen2(Type-A)×1、USB 3.0×1、HDMI×1、microSDXCメモリーカード×1など ●バッテリー駆動時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver.2.0):約13.9時間 ●サイズ:W323×H20.4×D223mm ●重量:約1.66kg
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