ゲーム&ホビー
2020/5/20 20:00

1人で4年かけて完成! 少女が記憶を取り戻すアドベンチャー「アンリアルライフ」

5月14日、ニンテンドースイッチ専用ソフト「アンリアルライフ」がリリースされました。同作は、個人ゲーム開発者の「hako 生活」氏が、グラフィック、サウンド、シナリオ、プログラミングなどを、ほとんど1人で担当したゲーム。制作期間は約4年。

↑アンリアルライフ

 

筆者は2年前、ピクセルアート(いわゆる“ドット絵”)のイベント「ピクセルアートパーク」に取材で行った時、同作の開発中のゲーム画面を見たことがありましたが、そこからさらに2年の時を経てリリース発表をTwitterで見かけた時には、なぜか感慨深いものがこみ上げ、「あらかじめダウンロード」初日に購入しました。

↑あらかじめダウンロード開始は5月7日

 

以下、筆者がプレイした感想などを、できるだけネタバレにならない程度に紹介していきます。

 

一体どんなゲームなの?

本作は、記憶喪失の少女「ハル」が、高性能AI信号機「195」と協力し、自らの記憶を取り戻していくアドベンチャーゲームです。ハルは触った“モノのキオク”を読み取る能力を持った「サイコメトラー」で、過去の記憶や人の会話などをヒントにしながら、謎を解き進めます。

↑195とハル

 

ハルの行く先にはネズミ、マリモ、ペンギン、アリ……など、様々なキャラクターが現れます。その中でも「先生」は、ゲームの最も重要なキーパーソンで、彼女をめぐるハルの“記憶の旅”といえるでしょう。

↑ネズミのシュタイン

 

↑葉巻がトレードマークのペンギン・カセリ

 

↑「先生」とは何者なのか?

 

いろいろなモノを調べて触って謎を解いていきますが、ただ画面に○で表示されている場所以外にも調べることのできる箇所が隠されています。あやしい場所ではHD振動がヴッ、ヴッと反応するので、Aボタンを押すと、謎の手がかりが見つかるかもしれません。

↑調べられそうな場所を発見!

 

ちなみにHD振動はゲーム内のいたるところで使われており、屋根などハルの歩いている“足場”によって、振動が心地よく手に響きます。視覚や聴覚だけでなく、触覚でも楽しめるゲームといえるでしょう。

↑屋根の上の歩き心地もまた良し

 

個人的な、筆者の第一印象としては、雰囲気が「Strange Telephone」というインディーゲームに似ているなぁと思いました。“少女×人外”という組み合わせや、2Dドット絵のグラフィックだったり、使われているフォントだったり……現に、hako 生活氏は「影響を受けた作品」として同作を挙げており、「なるほどなぁ」と唸ってしまいました。

↑Strange Telephone(筆者は未クリア)

 

ピクセルアートの超美麗グラフィック!

hako 生活氏はピクセルアーティストとしても活躍しているだけあり、その描き込み具合にはド肝を抜かれます。ハルが動き回る町中や施設内部の細かさ、ドット絵とは思えないほどリアルな背景、ゲーム中に挿入される“一枚絵”……などなど、スクリーンショットを何枚でも撮りたくなるような独特の世界観は、思わず見入ってしまいます。

↑おいしそうなベーコンエッグトースト

 

↑ドット絵とは思えないほどリアルな背景の一例

 

特にすごいと思ったのは、電車の描き込みと、水面の美しさ!

↑電車が登場するシーンの中でも、特にお気に入りのカット

 

↑エレベーターから水面に映る月をのぞむ

 

これ良いこれ良いとスクショばかり貼るのもアレなので(笑)物語を進めて、素敵な景色をぜひその目で見てほしいと思います。

 

UIもゲームの世界観を大切にした作りで、アイテム選択画面はハルが持っている“鞄の中”です。

↑モノのキオクや会話を読み返せるメニュー画面(画像は「わたしの考え」)

 

↑鍵などの小物はホルダーに掛けられています

 

衝撃のサイコホラー!

本作はCEROレーティングB(12歳以上)となっており、時折刺激が強めの演出もあります。うち(GetNavi web)の編集長・山田のように、ホラー系のゲームが苦手という人には、正直あまりおすすめできないかもしれません…(苦笑)

↑カイダンヲ上ガレカイダンヲ上ガレカイダンヲ上ガレカイダンヲ上ガレカイダンヲ上ガレカイダンヲ上ガレカイダンヲ上ガレ……

 

↑狂気としか言いようがない演出

 

↑先生の様子が……?

 

ショッキング展開も多く、息をもつかせぬドキドキ感には、思わず引き込まれます。最後の最後まで気が抜けません!

 

最後までクリアできる自信がない?

「でも、雰囲気は最高なんだけど、この手のアドベンチャーゲームって苦手で……」と、本作のプレイを躊躇している人もいるかもしれません。本作、得意なゲームジャンルを訊かれて「特になし」と答える筆者でも9時間でトゥルーエンドを見ることができたので(途中でバッドエンドを3種類見ましたが)、アドベンチャーゲームがそれほど得意でなかったり、やったことがなかったりしても、ちゃんと最後まで辿り着けます……たぶん。

 

もし行き詰ったら、ハルの「わたしの考え」やモノのキオク、会話ログを見てみましょう。探しているものが見つからなかったら、一度適当な場所まで引き返してみるといいでしょう。意外な発見があるかもしれません。アイテムのタイミングもキモだったりするので、「これだ!」と思った時に、いつでもZRボタンで使えるようにしておくといいでしょう。

↑プレイヤー自身の記憶力も重要な要素かもしれない!?

 

ちなみに、「……?」という終わり方をしても、セーブデータ一覧に「予備データ(分岐点)」というものがあるので、そこからスタートしてまた“何か”をすれば、別の道が開けるかもしれません。

↑“分岐点”の行動がキーになるかも

 

総評:ひとりで“完成させて世に出す”ことの難しさ

冒頭で述べた通り、本作は4年の制作期間を経て、hako 生活氏がほぼ1人で開発したゲームです。

 

一般的に“ゲーム会社”の開発チームは、ディレクター、プランナー、デザイナー、プログラマー、コンポーザー……そのほかにも様々なメンバーがいて、それぞれに与えられた仕事をこなしていますが、それをこのクオリティで1人でやってのけたのだから、本当に素晴らしいと思います! ゲームエンジンの使い方だったり、DTMソフトの使い方だったり、当然ながら役割が多くなると覚えることも多くなりますから、本当に好きじゃないと覚えられないし、できませんよ、こんなこと。

 

しかしながら、開発に4年かかったというのもまた純粋に「すごいなぁ」と感服せざるを得ませんでした。一度も世に出ることなく開発が中止されたタイトルなんてごまんとあるわけですから……。(企業の場合は大抵予算の関係で開発打ち切りになるので、そこは“ある程度融通が利く”個人制作の強みとも思いましたが)

 

完成させるというのは自分を信じることでもあると思うので、ゲームそのものの内容やクオリティにも感動しましたが、本当に4年もモチベーションを切らすことなく自分を信じて開発を続けられるのはスゴイ! 筆者が一番感動したのはそこでした!

↑Created by hako 生活

 

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