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2020/6/4 21:30

待望のハイスペックAndroidタブ「HUAWEI MatePad Pro」の良し悪しを本音でチェック

ファーウェイが2日に発表した「HUAWEI MatePad Pro」。Androidベースのタブレット端末としては珍しくハイスペックなモデルです。この端末を数日試用し、使い勝手を確かめてみました。

↑MatePad Proの価格は5万9800円(税抜、以下同)。iPad Proより安い価格帯で、それに匹敵する処理性能を備えています

 

↑ボディカラーはミッドナイトグレーのみ。Wi-Fi対応ですが5G/LTEは利用できません

 

ここ数年のタブレット市場は、iPadの独壇場でした。スマホが大型化したこともあり、Android のタブレット製品はここ数年、性能と価格を抑えた製品ばかりが店頭に並ぶ状況が続いています。その中でMatePad Proは、久々に高い処理性能を備えたAndroid タブレットです。

↑大きさは約W246×H159×D7.2mmと10.8インチ液晶搭載にしてはコンパクト。右のスマホはiPhone 11 Pro

 

ただし、このMatePad Proには大きな弱点があります。ファーウェイが米国から制裁を受けている都合上、Google Play ストアを含むGoogle系のアプリが使えないようになっているのです。そのためファーウェイは独自のアプリストアAppGalleryの充実を図っていますが、その品揃えは未だ不十分と言わざるを得ません。ただし、後述する「Amazonアプリストア」の活用で、その弱点は大きく緩和することができます。

↑縦持ちした時の右上にインカメラを搭載

 

タブレットとしての完成度の高さは間違いない

画面は10.8インチと大きく明るく綺麗でかつ高解像度。画面の額縁の幅は約4.9mmと細く抑えられています。

↑明るく見やすい画面は電子書籍にピッタリ

 

IPS液晶を採用しており、視野角が広く複数人で映画を観るのも快適です。電子雑誌やマンガを見開きで表示しても、細かい文字までくっきりと読み取れます。周囲の明りの色にあわせて表示を調整する機能も備えており、電球色の室内光の下でも見えにくくなることはありません。

↑大画面を生かして2つのアプリの分割表示も可能

 

そして音響は本体に4つのスピーカーを内蔵。高級オーディオブランドのHarman/Kardonが監修したサラウンド再生機能を備え、薄型のタブレットから奏でられているとは思えないようなリッチな音を鳴らします。ベッドサイドで映画を観るのにこれほど適した端末もないでしょう。

 

MatePad Proが搭載するCPUはファーウェイの最新フラッグシップスマホと同じ「Kirin 990」。AI処理能力の高さを誇るファーウェイ独自設計のCPUで、2020年前半のモバイル向けチップセットでは最高峰のもののひとつと言えます。動作メモリ(RAM)も6GBと十分な量を搭載しています。

 

ベンチマークアプリの「AnTuTu」で処理性能を計測してみても、ファーウェイやGalaxyの1年前のフラッグシップと同レベルのスコアが表示されます。体感でもブラウザのページを開く速さやアプリの表示速度などでストレスを感じることはありません。

 

便利なワイヤレス給電&ペン対応

MatePad Proには、タブレットをより便利に使える機能も搭載されています。特徴的なところでは、ワイヤレス充電・給電やスタイラスペンへの対応が挙げられます。

↑タブレットをワイヤレス充電することも、タブレットからワイヤレス給電することも可能です

 

ワイヤレス充電は最大15Wで給電可能。30分ほどの充電で約2時間利用できるとしています。さらに、7250mAhもある本体バッテリーから、他のスマホや周辺機器をワイヤレス充電できる機能も搭載。標準規格のQiと互換性をもち、ファーウェイのスマホだけでなく、iPhoneやGalaxyシリーズなどにも充電が可能です。

 

MatePad Proは「HUAWEI M-Pencil」に対応します。M-Pencilは4096段階の筆圧検知に対応するスタイラスペンで、MatePad Proの側面に磁力でくっつくようになっています。

↑通常のペンに近い扱いやすいサイズ感

 

↑M-Pencilは本体にくっつけるだけで、充電やペアリングが行われるなど、取り回しも便利です

 

このほか、専用のキーボードカバー「HUAWEI スマートワイヤレスキーボード」も用意されます。

↑スマートワイヤレスキーボードとM-Pencilを装着したところ。ファーウェイ製スマホと連携し、画面共有できる「マルチスクリーンコラボレーション」も用意されています

 

HUAWEI M-Pencilは税抜9990円、HUAWEI スマートワイヤレスキーボードは税抜1万4900円となっています。MatePad Proと同時購入でフルセットを揃えるなら約8万5000円ほどとなる計算です。

 

カメラはこのレビューでは深くは触れませんが、背面13メガピクセル、前面8メガピクセルという構成。ファーウェイのハイエンドスマホのような高画質を求めると期待はずれになりそうですが、とっさにメモ用途で撮影したり、ビデオ会議などで使うには十分な画質です。

↑ハッとするほど美しいということはありませんが、記録用なら十分な画質

 

MatePadのハードウェアで物足りない点を挙げるとしたら、(1)防水・防塵性能を備えていないこと(2)生体認証がインカメラでの顔認証しないこと(3)日本ではモバイル通信対応のモデルが販売されないこと程度でしょう。

 

なお、注意点はもう1つあります。MatePad Proの本体ストレージは128GBですが、保存容量を追加する際に、microSDカードは使えません。ファーウェイ独自規格のストレージ「NMカード」を購入する必要があります。保存領域を追加する際、やや割高になるということです。なお、NMカードは携帯電話のnanoSIMカードと同じ形状ですが、日本向けのMatePad ProではSIMカードを挿してもモバイル通信はできません。完全無欠というわけではありませんが、MatePad Proは高性能でサクサク動くAndroidタブレットであることは間違いありません。

 

LINEやOfficeはあるが……アプリの品揃えは不十分

最高のAndroidタブレットとして最高クラスの性能を備え、ハードウェアとしては弱点らしい弱点が見当たらないMatePad Proですが、万人におすすめしにくい大きな理由が1つあります。それは、「Google Playに対応していないこと」です。

 

中国の通信機器メーカーでも最大手のファーウェイは、米国との取引で制裁を受けています。その一環として、Googleの提供する「Google Mobile Service(GMS)」が新製品に搭載できない状況にあります。

 

GMSとはGoogle Playストアや、Gmail、Googleマップ、YouTubeなどのグーグルがスマホ・タブレット向けに提供するサービス群のこと。MatePad Proではそれらのアプリが利用できません。

↑Androidでお馴染みのGoogle PlayはMatePad Proでは利用できません。その代わりに、独自のアプリストア「HUAWEI AppGallery」を搭載しています

 

ただしファーウェイはMatePad Proに、独自のアプリストア「HUAWEI AppGallery」を搭載しています。だからアプリが入れられない問題は解決……というわけにはいきません。

 

ファーウェイが拡充を急いでいるものの、AppGalleryの品揃えは、Google PlayストアやiPadのApp Storeの充実ぶりと比べると、大きく遅れを取っています。ただし、日本向けアプリがまったく存在しないわけではなく、各ジャンルごとに1つか2つのメジャーアプリが存在するような状況です。

↑Mate 30 Proが国内向けに発売された3月時点と比べると有名アプリも増えてきましたが、未だ物足りない状況のHUAWEI AppGallery

 

たとえば、メッセージングアプリでは「LINE」が対応しているほか、楽天系列の通話アプリ「Viber」が利用できる状況。話題のビデオ通話アプリではZoomが提供されています。

 

オフィスソフトでは、「Microsoft Office」が対応。モバイル向けのOfficeはペンによる書き込みもできるため、MatePadでは特に活用できそうです。また、イラストアプリは「アイビスペイント」と「メディバンペイント」が配信されており、比較的充実した状況です。

 

地図アプリや交通系アプリでは、「ナビタイム」や「ジョルダン乗換案内」がインストール可能となっています。電子書籍は「eBook Japan」、映像配信では「U-NEXT」がAppGallery向けのアプリを展開。このように、ジャンルによってはアプリの選択肢もありますが、メジャーなアプリが必ずしも使える状況にはありません。

 

Amazon アプリストアである程度補える

ところでAndroidでは、Google Playストア以外のアプリストアを導入できることはご存じでしょうか。日本向けにアプリを配信しているサービスとして、「Amazon アプリストア」が存在します。

 

Amazon アプリストアはAndroidデバイスなら導入可能で、MatePad Pro上でも動作します。このアプリストアの品揃えを加えると、MatePad Proのアプリ不足が大きく補えます。

↑ちょっと物足りないAppGalleryの品揃えを、Amazonアプリストアで補えます

 

たとえば、TwitterやFacebook、InstagramといったメジャーなSNSアプリはAmazonアプリストアからインストールできます。さらに、動画配信のAmazonプライム・ビデオ、音楽配信のAmazon Music、電子書籍のKindle、写真保存サービスのAmazon Photosなど、アマゾンが提供する多くのアプリも動作します。

 

もともとAmazon アプリストアはFireタブレット向けのアプリを提供する場でもあるため、Mate Padのようなタブレット端末とも相性が良いアプリが多く存在するようです。ほかにも、Amazonアプリストアからは音楽配信のSpotifyやAWA、メモツールのEvernote、文字入力アプリのATOKなどが入手可能です。

 

また、映像配信などの用途では、ブラウザ上で利用できるサービスも存在します。筆者の手元で試した範囲では、YouTubeやニコニコ動画はブラウザ上で問題なく楽しめます。また、有料サービスでもdアニメストアはPC表示にした状態で再生を確認しました。ただし、Netflixなど、Android タブレットのブラウザ上では再生できないサービスも多いため、この解決法も万全ではありません。

 

HUAWEI AppGalleryとAmazonアプリストアを組み合わせれば、ある程度の用途はカバーできるという印象です。

 

アプリの不足を割り切って使えるならアリ

幸いなことにAppGalleryからMicrosoft Officeが入手できるようになったため、文書作成デバイスとしての実用性は大きく改善されています。また、ペン対応を生かせるペイント系のアプリも揃っています。用途によっては、存分に活躍する環境が整えられます。

↑コンパクトな大画面かつ重さ490gと軽いため。絵を描く人には適したタブレットです

 

ただし、Adobe系のアプリが利用できない写真編集や動画編集の分野では、それに匹敵する高機能なアプリも見つけ出せませんでした。メジャーなアプリが存在する分野でも、iPadやほかのAndroidスマホとは異なり、サービスの選択肢が限られています。

 

それでもMatePad Proは、高性能なAndroid タブレットという希少な選択肢であることは変わりありません。iPad Proよりも手頃な価格で、スタイリッシュなデザインが得られるというのも魅力です。

 

アプリ不足な点は否めませんが、用途を考えて賢く使えば、ハマる1台と言えます。たとえば、ブラウザとMicrosoft Officeだけ使うという人にとっては、軽快に使えるタブレットとなることでしょう。また、動画はNetflixを観ずにU-NEXTとAmazonプライム・ビデオで観る、地図はGoogleではなくナビタイムを使うといったように割り切りをもって賢く活用できる人には、満足度の高いタブレットとなりそうです。

 

●主なスペック

ディスプレイ10.4インチ IPS液晶(解像度 2560×1600ドット)
OSHUAWEI EMUI 10.1.0(Android 10.1ベース)
CPUHUAWEI Kirin 990 オクタコア
メモリ6GB
ストレージ内蔵128GB/HUAWEI NMカード対応(最大256GB)
カメラメイン:1300万画素/イン:800万画素
通信Wi-Fi IEEE802.11 a/b/g/n/ac Bluetooth 5.1
外部端子USB Type-C(USB 3.1)
バッテリー7250mAh 急速充電対応(10V/2.25A)

ワイヤレス充電対応(15W)ワイヤレス給電対応(7.5W)

モバイル通信非対応
サイズ約W246×H159×D7.2mm
重量約460g
カラーミッドナイトグレー
その他機能専用スタイラスペン対応(HUAWEI M-Pencil)

GPS/GLONASS/Beidou/Galileo/QZSS対応 3.5mmヘッドホンアダプター同梱

 

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