新潟県新発田市にある菊水酒造が、「オンライン酒育(さけいく)セミナー」を開催するとのこと。案内によると、Web会議ツールの「Zoom」を利用した酒蔵見学ができるとのことです。へえ。部屋に居ながらにして蔵を探検できるみたいなことですよね。蔵の中の雰囲気、好きなんだよなぁ……ということで、参加してみることにしました。
蔵人が参加者を巻き込みながら進行
5月30日土曜日の14時、セミナーがスタート。参加者は10名ほどで、いかにもお酒にこだわっていそうな年配の方が多く見受けられます。参加者も写っているということは、今回は双方向でやりとりする形なのでしょうか。
セミナーは菊水酒造・製造部の五十嵐雄太さんが登場し、解説する形で進行。まずは高級酒を中心に造る節五郎(せつごろう)蔵から煙がもうもうと上がっている写真が画面に表示されました。「みなさん、これは何だかわかりますか?」と五十嵐さん。おお、やっぱり参加者を巻き込んでいく方向なんですね!(答えは蒸米の煙でした)
ライブカメラや動画、静止画を交えて酒造工程を解説
その後は、ライブカメラで櫂入れ(かいいれ・日本酒のもとをかきまぜる作業)の作業を見せてくれたり、動画で酒造工程の細かい部分まで解説してくれたり、酒銘の由来を画像とともに教えてくれたり、バラエティに富んだ見せ方をしてくれました。
なかでも筆者の印象に残ったのは、蒸した米に麹菌をふりかけて糖化させる工程。麹をかけてまぜた蒸米をアリ塚のように盛り上げ、ふとんをかぶせて温度をキープ。その後、盛った米がカッチカチになるのでスコップで切り崩す……という作業が、なんとも豪快で新鮮でした。こんな光景、蔵元に足を運んでも見られるとは限りません。ほかの参加者も同様、食い入るように画面を見つめていました。
夏にオススメの飲み方を教えてもらう
最後は質問タイム。せっかくなので筆者は「夏にオススメの飲み方を教えて」とお願いしてみました。五十嵐さんいわく、「夏季限定の『夏の大吟醸生原酒』(実売価格2038円・720ml)を冷やして飲んで頂くのがおすすめです。あと、『ふなぐち』はアルコール度が19度あるので、ロックで飲んで頂いてもOK。柑橘類を搾っても美味しいです」とのこと。
「ふなぐち」とは、菊水酒造の看板商品である缶入り生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」(200ml缶の実売価格318円)のこと。たしかに、「ふなぐち」くらい味が濃いなら、ロックでむしろちょうどいいかも。また、日本酒の保存が長引いて味わいがダレてきたら、柑橘類の搾り汁で酸を補う(補酸する)と良い、と聞いたことがあります。その意味で、日本酒に柑橘類はアリ……なのか? さっそく、その晩に「ふなぐち」のロック&レモン果汁をやってみました。
いや、これは本当に悪魔的! 口当たりはクールで、トロピカルな甘味がガツンと来て、アルコールの刺激でカァーっとなって、レモンの酸味が爽やかに引き締める。これ、夏には気持ちいいかもしれません。しかし、「ふなぐち」はロックでも酔いがスゴイぜ……。
ほかの参加者も酒造りのディテールに興味津々
さて話はセミナーに戻ります。セミナー終了後、筆者はメディアとして、セミナーの参加者に感想を聞く時間をいただきました。
「有意義な時間でした。お米に麹をかけて、カチカチになったところが印象的。つっついてみたくなりました」(hesogeさん)
「初めて参加したのですが、面白かったです。意外だったのは、クラシックな作り方をしてるなぁ、手作業でやってるんだなぁ…‥ということ。感動しました。今日飲むときは、作り方を思い出しながら飲みます」(kenさん)
「菊水さんのお酒は毎日頂いています。何回か蔵元の見学をしているのですが、袋に(もろみを)入れて袋の端を2回だけ折っていくところ、あれは初めて見ました。次は実際に蔵元で香りを感じたいです」(YUMIさん)
みなさん、やはりお酒が好きなだけあって、酒造りのディテールには興味を持ったようですね。「作り方を思い出しながら飲みます」とのコメントがあったように、口に入るまでの道のりを知ると、よりお酒が美味しく感じるのは間違いないでしょう。実際に蔵元に行って、リアルに体験したいという気持ちも高まってきそうですね。今回は、新型コロナウイルスによる外出自粛……という特殊な状況に応じたセミナーではありましたが、このような苦しいときこそ新しい道が見つかるチャンスがある、と教えてくれる良い例でもあります。今後もよりブラッシュアップして継続してやって頂きたいですね。