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2020/6/17 18:30

「アメリカ大統領になりたい!」 11歳のビジョナリーが考える「起業家の育て方」

「10億人の子どもたちにコーディングを」と大きな目標を掲げているシリコンバレー在住の11歳の起業家、サマイラさん。本記事では、彼女のキャンペーンだけでなく、自身の幼少期を振り返り、起業家を育てるために親世代ができることについてもお聞きします。

↑コーディング学習、社会問題、教育など、壮大な夢を語ってくれたサマイラさん

 

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——サマイラさんが推進している「10億人の子どもたちにコーディングを(Yes One Billion Kids Can Code)」というキャンペーンですが、これはどのようなプロジェクトなのですか?

 

サマイラ このプロジェクトでは、私が大学を卒業する2030年までに世界中で10億人の子どもがコーディング学習にアクセスできるようになることを目指しています。この目的を達成するために、自分の住んでいる地域だけでなく、全米でワークショップをいくつもやっています。私自身が行った数だと600〜700くらいになるかと。もちろん、大人でも学びたい人はできますし、対象年齢は4歳から104歳の人まで広範囲にわたります。

 

私が行った一番大きなワークショップは、Googleが社員の家族向けに行っている職業体験の日のワークショップでした。参加者にはゲームをどうやって作るのか、そのなかでコーディングがどのように使われているのかなどを体験してもらいました。普段のワークショップは20〜30人くらいですが、企業で実施するときは1回に50人くらいまでできます。ただ、基本的に一人ひとりの子どもとのやりとりやサポートを大事にしているので、図書館でやるときは大人数ではできません。

 

それぞれのテーブルに行って、子どもたちとコミュニケーションを取りたいからです。また、話しながら、どういうところが難しいと思っているのかを聞いて、一人ひとりをサポートしたいからです。いろいろ話すなかで、ゲームに対するフィードバックももらえるので、そのようなやり取りを大切にして、どうしたらより良いゲームにできるのかをいつも考えています。

 

私だけでなく、多くの人たちが私の作ったボードゲーム「CoderBunnyz」を使って、自分の住んでいる地域でコーディングのワークショップをするようになってきています。私自身がすべてのワークショップを担当できませんが、ワークショップを運営してくれるファシリテーターをトレーニングすることはできますし、より多くの人たちにコーディングのワークショップをしてくれるように働きかけたりもしています。

 

いまや、私が過去に図書館と交渉したように、やりたいと思った人が地域の図書館と交渉して広げてくれています。ワークショップをしてくれる人は、中学生から先生までさまざまです。中学生だと、私もこれならできそうという形で、コーディングの魅力を広げるために貢献したいという思いからボランティアとして地域の図書館で教え始めたりしています。先生や教育者であれば、購入して生徒に教える形でコーディング学習が広がっています。CoderBunnyzは、アメリカだけで160校以上の学校で使われていますし、アメリカ以外の学校を含めるとさらに多くの数になると思います。

 

また、アフリカ、中国、日本、インドなど、多くの国の企業とパートナーシップを結んでいて、その国の子どもたちがコーディングにアクセスできるようになってきています。つまり、コーディングの魅力が世界中に広がっているのです。ただ、このキャンペーンは非営利なので、私自身が売上によって利益を得るというわけではありません。最近はFacebookやウォルマート、インテル、SAPといった会社がCoderBunnyzを恵まれない子どもたちや図書館に無償で提供しています。このような活動が広がることで、いままでコーディングにアクセスできなかった子どもたちがコーディングを学習することができるようになってきています。

 

——このプロジェクトを進めていくにあたって、大変なことはありますか?

 

サマイラ 一番大変だと思うことは、壁に突き当たっているなと感じるときに、前に進み続けるように自分に言い聞かせ続けることですね。ときどき、10億はかなり大きい数字だなと思うことがあります。でも、すでにもう100万人を達成しましたし、この調子で行けば可能だと思うのです。

 

——このプロジェクトをしていて、よかったと感じるときはどんな時ですか?

 

サマイラ 私にとって一番うれしい瞬間は、子どもたちが初めてコードを書いたときの笑顔です。いままで、自分がやってきたことが報われたと思えるからです。子どもたちのキラキラした目とかですね。例えば、ある子がコードを書いてみて、「できた!! 本当にコードを書けた」と歓声を上げる瞬間。コーディングという難しいコンセプトを子どもたちがわかってくれたうれしさがあります。

 

コーディング学習はとても重要なことだと思いますし、子どもたちが簡単にコーディングのコンセプトを学べるようになってほしいのです。私たちの世代や次の世代にとって、コーディングを学ぶことは大事ですが、これは将来的に仕事としてコーディングに関わる人を意識しているわけではありません。実際、みんながキャリアとしてコーディングを選ぶわけではありませんし、コーディング以外のことに興味のある人はたくさんいます。ただ、将来を考えたとき、コーディングの基本概念をわかっていると、自分の夢を実現しようとするとき、自分の考えを表現したり、何かを作ろうとしたとき、必ず役に立つと思います。

 

——次に、起業家を育てることについてもお聞きしたいのですが、日本では、シリコンバレーと違い、起業文化が馴染みくい問題があります。親や教師の立場から、企業家精神を育んだり、サポートしたりする場合、どのようなことが大切だと思いますか?

 

サマイラ 一番大切なことは、親が子どもに何かをしなさいと強制しないことです。私の両親は一度もコーディングを学びなさいといったことはないし、何かを私に学ぶように強制したことはありません。ただ、こういう選択肢があるよ、もし、こういうのをやりたければ、あなたのやりたいことをサポートし、いつでも相談にのるよという姿勢を持つことだと思います。

 

「なんでも自分のやりたいことをしてもいいよ」という両親のマインドセットがあったからこそ、私は起業家という道に行ったのだと思います。私の両親は、コーディングを仕事にしなくてもいいよ、自分のやりたいことはなんでもやってみなさいというスタンスです。どの道を選んだとしても親がサポートしてくれる環境があったからこそ、起業の道を選んだのだと思います。

 

父が最初にコーディングを私に教えてくれたときも、「コーディングというのがあるのだよ。でも、興味がなければ別にいいよ」という感じでした。最初は、私もやってみて、自分のコードがうまく機能しないときは、イライラしたりもしたけど、父がわかりやすいように簡単に教えてくれたので、面白いと思うようになってきました。

 

私の場合は、面白いと思うまでに数週間かかったと思います。誰でも初めてのことはすぐできるわけではないし、少し時間がかかります。でも、そこで「もう1回やってみよう」という気持ちで続ければ、できるようになります。私がそこまで我慢してやったのは、友だちにコーディングを使ったいたずらをしたい思いがあったからです。友だちが、もしコーディングを楽しいと思わせてくれるんだったら、やってみてもいいよと言っていたので。でも、それから始まって、ずっとやっているうちにコーディング自体が面白いと思うようになりました。

 

社会に貢献したい

↑サマイラさんが作った「CODERMINDZ」

 

——次のステップや将来の夢は何ですか?

 

サマイラ もちろん、まずは2030年までに10億人の子どもにコーディング学習の機会を与えることです。あと、私がやりたいことの根本には、地域のためになること、社会のためになることをしたいということがあります。

 

特に、次に取り組みたいことはホームレスの問題。私は、誰もが安心して住める場所をもつ権利があると信じています。将来的には、コンピューターサイエンスやAIなどの分野で働いて、ホームレスの人たちに家を提供できるようなサービスを作っていくことです。

 

具体的に言うと、マッチングアプリの開発のようなものを考えています。アプリでサンノゼの市街地のあるところにホームレスの人がいるのがわかるようになっていて、そこにいる人がいま何を必要としているのかもアプリからわかるようなシステムです。それで、例えば地域の人で毛布が余っている人が、そのホームレスの人に提供できるアプリを開発したいです。ホームレスの人が仕事を見つけるまでの間、助けを差し伸べたり、一時的に住むところを提供したり。そして一番の夢は、アメリカ大統領になることです! なぜかというと、大統領になれば、発言力が大きくなるし、そのような発言力を持つことで社会に大きく貢献できると思うからです。

 

——すごいですね! 大統領になったら、どんな問題に取り組みたいですか?

 

サマイラ やはり、ホームレスの問題が私にとっては一番やりたいことですね。あと、教育の問題も取り組みたいです。教育はとても大切です。もし、わたしが大統領になったら、質の高い教育を保障したい、教育の不平等をなくしたいと思います。例えば、私の住んでいるカリフォルニア州は教育水準が高いほうかと思いますが、アメリカのすべての州ではそうではありません。私自身は、実際にそのような不平等を経験したことはないですが、教育の不平等について読む機会はたくさんあります。そのようなことは変えなければいけません。子どもの将来は教育にかかっているのです。

 

いい教育を受けていれば、将来やりたいことをしたり、成功する可能性は広がります。例えば、私の中学校では数学や科学と並んで、科目としてコンピューターサイエンスがあります。小学校は公立の学校に行っていましたが、高学年になるとコンピューターサイエンスのクラスがありました。ただ、すべての公立学校にそのような授業があるわけではありませんし、コンピューターサイエンスが正式な教科となっているわけではありません。そのため、コンピューターサイエンスの科目化というのをすべての学校で実現したいと思っています。

 

——最後に、日本は起業する人が少ないと言われておりますが、その要因の一つに、失敗への恐怖心があるように思います。いままでを振り返り、一番つらかった経験や、失敗の乗り越え方について教えてもらえますか?

 

サマイラ やはり一番つらかった経験は、最初に行ったいくつかの図書館で断わられたことですね。そこで、コーディングなんか女の子だからできないのではないかとか、6歳じゃワークショップはまだ無理だよと決めつけられたことです。私としては、「そういうふうに性別や年齢で、何ができるか、できないかを決めるつける人もいるのだ」と知ってショックでした。でも、私は諦めませんでした。自分ではできると思っていましたし、活動を続けているうちに、性別や年齢だけで決めつけない人もいることもわかりました。私は、年齢や性別によって何ができる、できないと決めることはできないと思います。何かを始めるのに、若すぎるというのもなければ、遅すぎるというものないのです。

 

重要なのは、「失敗が、やりたいことを実現するための障害だと思わないこと」。壁に突き当たったとき、何回失敗しても、その度に立ち上がって成功している人たちのことを思い出すようにしています。また、「失敗することは、自分ができない人間だということではない」というのを忘れずにいることも大事。失敗しても前に進み続けることはできるし、失敗は成功に変えることができます。成功している多くの企業でも、最初は失敗して、そこから成功しています。

 

あと、根本的には好きなことに対する情熱があると思います。私の場合は、最初から起業家になろうと思ってやり始めたわけでないので。起業家としてやっていきたいと思ったのは事実ですが、それは、コーディングの面白さを多くの子どもたちにわかって欲しいと言う想いがあって、そのためにワークショップなどいろいろやってみた結果が起業だったということです。起業するにあたって、やりたいことに対する情熱があるかどうかはとても重要だと思います。