エンタメ
2020/7/13 17:30

最新技術と古典芸能の融合により、新たな「攻殻機動隊」が動き出す――「VR能 攻殻機動隊」の魅力を担当者に訊く

人気SFマンガと最新VR技術、そして能が融合した新たなエンターテインメント『VR能 攻殻機動隊』。コロナ禍の影響で開催が危ぶまれましたが、予定通り8月22・23日に世田谷パブリックシアターで開催されます。すでにチケットは完売しており、この記事を読んで興味を持った人は、今回の舞台を観ることは叶いませんが、能と言えばロングランで公演するのが常なので、今後観る機会はあるはず。

 

 

今回は「VR能 攻殻機動隊」で脚本を担当する藤咲淳一氏と3D技術を担当する明治大学教授・福地健太郎氏、VR技術を担当する東京大学教授・稲見昌彦氏に話を聞く機会を得たので、VR能とは、攻殻機動隊と能がどのように融合するのかなど、聞いてきました。

 

まずは脚本担当の藤咲氏から。

 

能によって新しい「攻殻機動隊」の世界が開けていく

↑藤咲淳一氏

 

――VRと能と「攻殻機動隊」と言う組み合わせを聞いても、容易にどんな舞台か想像がつきませんが、どういったものなのでしょうか。

 

藤咲淳一氏(以下藤咲):実はすでに「攻殻機動隊ARISE」で立体視を使った3Dの舞台を演出の奥 秀太郎さんと一緒にやっているんです。さらにVRで能を表現することは、奥さんがすでにやっていました。そんな中、VR能で「攻殻機動隊」をやりたいと言う話がでまして、まあ面白半分で聞いていたんですけど、講談社が許可を出したわけです。まさか、実現するとは思っていませんでしたが、やることになりました。

 

――能で「攻殻機動隊」の世界を表現するのは難しそうですね。

 

藤咲:今回はアニメではなく原作を能にすることにしました。能は初めて観る人はたいてい寝てしまうんですけど、その段階を超えて能を理解しはじめると新しい世界が開けてきます。「攻殻機動隊」もネットが新しい世界として広がっていく話なので、そこは繋がるのではないかと思っています。「攻殻機動隊」を題材にしていますけど、見た目は普通の能なので、言葉もすべて能の世界に置き換えています。「攻殻機動隊」の話なんですけど、どこか日本の神話を観ている感じに捉えられるのではないでしょうか。

 

――いわゆるアニメを題材にした歌舞伎や舞台劇とは違い、基本的には能なんですね。

 

藤咲:話が「攻殻機動隊」なだけで、基本的には能ですね。現代能の新作と言う感じです。なので、脚本的にはアクションシーンをほとんどなくし、素子がバトーなどに出会う話がメインになっています。たぶん、上演時間は40分くらいかな? 公演自体は2時間くらいあって、古典の能なども上演されます。なので、「攻殻機動隊」をきっかけに能に触れて貰えればと思っています。

 

――能の世界や言葉を理解するには初見では難しそうですが、VR能を観る前に準備しておくことはありますか。

 

 

藤咲:そうですね。「攻殻機動隊」をいくつか観ておいていただけると良いですね。「攻殻機動隊」の話を知っていれば、能に変換されていても、あ、ここはあの場面だってわかります。話がわかると能の動きや所作などに注目できますので、そこに注目して欲しいですね。わからないと言うよりは、いろいろな想像ができ、個々でそれぞれに解釈できるようになっていますので、観た人なりの解釈で完結していただければと思います。

 

――最後にVR能の見どころをお聞かせください。

 

藤咲:ちゃんとバトーも素子もでます。原作を大事にしたうえで能に落とし込みました。攻殻機動隊が能になったとき、どうなっているのか、是非体験して欲しいです。ただ、初見での能は睡魔との戦いになるので、観に行く前日は夜更かしせず、しっかり睡眠をとっておいてください(笑)。

 

■プロフィール
藤咲淳一(ふじさく・じゅんいち)

1967年茨城県生まれ。代々木アニメーション学院卒。脚本家・演出家・小説家。プロダクションI.G所属。専修大学、デジタルハリウッド大学非常勤講師。 TVアニメでは『攻殻機動隊』『BLOOD』シリーズ、『ダイヤのA』『ポケットモンスター サン&ムーン』、映画「劇場版BLOOD」シリーズ、「アップルシードXIII』『攻殻機動隊 ARISE border1-4』など様々な作品のシリーズ構成・脚本を担当。 BLOODシリーズ、攻殻機動隊シリーズの小説版のほかオリジナル小説作品も手がける。漫画、ゲーム、舞台などメディアを横断した構成・執筆で活動。

 

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