2020年の東京オリンピックに向け、英語を学ぶ人がますます増えているそうだ。外国人との挨拶、簡単な会話くらい出来るようになりたいと誰もが思っている。しかし、たとえばTOEICでハイスコアを取ったにもかかわらず、いざ外国人を目の前にすると、緊張してしまい会話が成り立たないという例をあちこちから聞く。
英語は得意なはずなのに、なぜかスムーズに話せないというあなたに是非読んでほしいのが『ヤバイよ 外国人と会う 5分前!』(小幡恵里・著/すばる舎・刊)だ。
本書はビジネス上での外国人との付き合い方をレクチャーしているが、ビジネスだけではなく、外国人と友達になりたいと思っている人にも参考になる一冊だ。
■完璧を求めない、諦めない
あなたが今少し緊張しているように、あなたと会う外国人も、あなたがどんな日本人なのかと思いを巡らせて同じくナーバスになっているでしょう。失敗をおそれず、自分からイニシアチブを取ってふるまうことは、相手に「安心感」を与えます。安心感は「信頼感」に、そしてビジネスの成功にもつながります。(『ヤバイよ 外国人と会う 5分前!』から引用)
たぶん日本人にとっていちばん難しいのが、このイニシアチブを取ることではないだろうか? 日本社会では謙虚な態度のほうが好かれる傾向にあるからだ。が、控えめは外国人にはマイナスだと著者はきっぱり言っている。
また、外国人と円滑でよい関係を築くには、完璧を求めないこと、諦めないことが大切だそうだ。
それで思い出したことがある。フランスに暮らしていたとき、留学生や駐在員とその家族の日本人の何人かはこんな風に言っていた。「まずはフランス語を完璧にマスターして、上手に話せるようになってからフランス人と付き合いたい」と。でも、完璧に外国語を話せるまでには何年もかかるし、それまで待っている間に滞在期間は終わってしまうのではないかと私は内心思っていたものだ。
とりあえずカタコトでもいいから話しかけてみる、実はそこが大事なのではないだろうか。
■笑顔で外国人の心を掴もう
「イエスタデー、アイ、ゴー、ユア、ホームなんて電話で言っちゃったんです。トゥモローと間違えちゃって。でも彼らはちゃんと地下鉄の駅で待っててくれ、家族全員で私を家に迎え入れてくれました」。九州に住む友人は、はじめてのフランス人家庭訪問の際のエピソードを、恥ずかしそうにそう打ち明けてくれた。
旅先の空港のわずかなトランジットの間に、九州在住の日本人家族とパリ在住のフランス人家族は出会い、文通がはじまった。英語に訳すのにも一苦労と聞いていたが、二家族はその後、両国を互いに訪ね、交流を深め、今やすっかり親友となり家族ぐるみで付き合っている。
彼女はフランス語はまったく話せないし、英語はカタコトで、手紙を書くのにも英語の先生に手伝ってもらっているという。けれども、笑顔がとても素敵な女性で、外国人の相手の目をしっかり見つめて、外すことはない。また、習字や折り紙などが得意でフランス人の心をしっかり掴んでしまったのだ。
本書でも、欧米人はしっかり相手と目を合わせることをマナーとしているから外すのは失礼と説いている。たとえ通訳がいてもそれはトランスレーターでしかないから通訳を見るのではなく相手の目を見ているべき。さらに外国人に対しては、いつもの倍「笑って」とびきりの笑顔を見せることが大切だとある。ただし、口元を手で隠すのはNGだそうだ。
私たち日本人には一見上品ともとれる「口元を隠す」しぐさは、外国人に対しては「何か隠し事がある」、「誠実でない」印象を与えます。(『ヤバイよ 外国人と会う 5分前!』から引用)
■まずは日本文化の復習から
外国人が日本に来て驚いたこととして多く挙げられることのひとつが、「日本人があまりに日本を知らない」ということだそうです。例えば、歌舞伎のしきたり、神社とお寺の違い、江戸と東京の関係、戦後の驚異的な復興‥‥など外国人に的確に説明することは、なかなか難しいことです。でも多くの知的な外国人は、そういうことに興味を持っています。(『ヤバイよ 外国人と会う 5分前!』から引用)
そういえば私もフランス人大学生に清少納言の『枕草子』を教えてと言われ、慌てまくって原文や解読書、そしてフランス語訳本を並べて猛勉強したことがあった。
「富士山は見ましたか?」「すしや天ぷらは好きですか?」など、紋切り型の質問には外国人は飽き飽きしているそうだ。私たちは日本人として自国の歴史、文化に目を向け、復習しないといけないようだ。
外国人には本音と建前はない
慣れてしまえば日本人同士で付き合うより、外国人のほうがわかりやすくて楽とも言える。「本音」と「建前」があるのは日本だけで、外国人は本当に思っていることしか口にしないからだ。
「今度、家に遊びに来てくださいね」と日本人が言っても、それは社交辞令かもしれない。でも、外国人が言ったら本音で来て欲しいと思っているから、素直に受け入れればよいだけ。実にシンプルなのだ。
東京オリンピックには大勢の外国人が来日する。それまでに英語の勉強をするのはもちろんだが、外国人の心を掴む秘訣も知っておくことも肝心だ。(文:沼口祐子)
【参考文献】
ヤバいよ 外国人と会う 5分前!
著者:小幡恵里
出版社:すばる舎
ビジネスで言葉も文化も違う外国人と会うときは誰でもドキドキしてしまうもの。かといって、戸惑いや緊張からコミュニケーションが不十分になってしまうとビジネスはスムーズに進みません。「大げさなアクションやジェスチャーは控えるべき」「お寿司は食べましたか? と質問しないほうがいい」など、目からウロコのポイントを掲載。信頼感を与え、自分も相手も笑顔になれる外国人とのビジネスコミュニケーションを
シンプルにお伝えします。