毎年恒例の「住みたい街ランキング」(SUUMO)で2020年、第4位に輝いた埼玉県・大宮。これまで“都心から離れている”、“治安が良くない”などのマイナスイメージが定着していたにも関わらず、東京都内の街を抑えてランキング入りしたのには、どのような理由があるのでしょうか? 静岡県出身でありながら、さいたま市大宮区へ移住し20年以上になるライターの中山記男さんに話を伺いました。
なぜ移住者は「大宮」に引きつけられたのか?
さいたま市による“さいたま市民意識調査”によれば、“さいたま市を住みよいと感じる・住み続けたいと思う”人の割合は8割に上るなど、ここ10年間で上昇傾向にあるそう。一方で、大宮に魅力を感じ、埼玉県外から移り住む人も増加しています。
「僕の場合、きっかけは大学が大宮にあったことでした。在学中の4年間で大宮が気に入り、その後進学・就職と進んだのですが、今だに大宮に住んでいます」(大宮在住ライター / 中山記男さん、以下同)
1997年から現在まで、20年以上にわたり大宮に住んでいる中山さん。その間に就職や結婚を経験され、現在は一児の父でもあります。“親子”という目線で見ても、大宮はとくに魅力的な街だと感じるそう。
「大きな公園がたくさんあり、子どもを遊ばせられる場所が多いんです。遊具のゾーンとグラウンドが確保できるような中規模な公園は、各地区にだいたい2〜3か所ありますし、大宮公園をはじめとした1日中遊べるレベルの広い公園もいくつかあり、子どもから大人まで自由に使えて便利です。我が家の場合、子どもはボールや自転車遊びを目的に、大人はピクニックやウォーキングをしに利用しています」
大宮市から「さいたま市」へ生まれ変わった
大宮市が浦和市、与野市と合併し「さいたま市」として生まれ変わったのは2001年のこと。2005年には岩槻市も新たに加わり、日本で9番目に人口の多い“100万都市”となりました。
また、2000年には旧大宮市・浦和市・与野市をまたぐ中央区に“さいたま新都心”が誕生。「さいたまスーパーアリーナ」や大型ショッピングモール「コクーンシティ」がオープンするなど、かつてない賑わいを見せるようになりました。
「この20年で大きく変わったことと言えば、さいたま新都心の開発が進み、だいぶ街らしくなったことでしょう。市内のほかの地区は良くも悪くも古くからある街並みが中心なので、さいたま新都心はそういった地区との対比もあり注目されています。2015年に『コクーン2』『コクーン3』が開業するなど、コクーンシティはどんどん充実してきていて、今では家族で訪れることも多いです」
「日本有数の治安の悪い街」評は本当か?
埼玉県内最大の繁華街であることから、長らく“治安の悪い街”というイメージが定着していた大宮。昨今の風営法・消防の改正によりネオン街の安全性は高まりつつあるものの、移住を考える人にとっては今だに懸念事項となっているそう。実際に住んでいる中山さんは、どのように感じているのでしょうか?
「僕も大宮に引っ越してくるときには、『悪い意味で日本有数の治安だよ!』と脅かされていたのですが、ここ20年で駅前が整備されたからか、危ない思いをしたことは一度もありませんよ。ただ、自転車が盗まれやすい実感はあります。バス通勤・通学の人が多く、終バスが行ってしまった後に困っている人が多いからなのかもしれませんね……」
大宮を出ることなく暮らしが成立する至れり尽くせりぶり!
都心まで急行で30分弱を要するにも関わらず、東京都内の人気地域を抑えてランキング入りを果たした大宮。その理由について、中山さんは鉄道の利便性の高さを挙げます。
「今はリモートワークに切り替わっているものの、もともと僕も都内まで通勤しており、始発駅の特性を生かして、毎日座って最寄り駅まで移動できていました。寝坊や電車遅延、急な用事など、困った時は新幹線でひとっ飛びできるのも良いところです」
一方で、都心まで出なくてもショッピングやレジャーを楽しめることも大きな利点です。大宮駅構内には「ecute」があり、「LUMINE 1」「LUMINE 2」に直結しているだけでなく、周辺には「大宮アルシェ」や「SOGO」「DOM」などの大型ファッションビルも立ち並びます。
「駅前にひととおりのショップがあり、大宮から出ずに生活が成立するのは魅力ですよね。それでいて都内よりも家賃は安く、都内までの移動に30分かかることさえ気にしなければ、充実した住宅選びができると思います。ちなみに我が家は中層レベルのマンションですが、大宮より先に背の高い建物がないため、夏場は隣県の花火まで見えますよ」
ひと足早く“最新の便利”を体感できる!
駅を起点とした街づくりが、大きな魅力となっている大宮。通勤の行き帰りでの買い物もしやすく、時間を有効に使いたい共働き家庭にとっては特に助かる、と中山さんは話します。
さらに、JR各線、東武野田線、埼玉新都市交通伊奈線に加え、東北・上越新幹線の停車駅でもあり、埼玉県においてのポータルの役割を担う駅だけあり、最新のテクノロジーをいち早く体験できる場所でもあるそう。
「大宮駅は、さまざまな実証実験の場として選ばれることも多く、『SUICA』が1枚あればエキナカを含め、ほとんどの買い物をこなせてしまいます。そのため、大宮の住民であれば、もう10年以上前から電子マネーの便利さを体験していました。そういった先進的テクノロジーの導入が早いことも、隠れた魅力だと思います。これからよりテクノロジーを生かした生活が進んでいくことを考えれば、それらをひと足早く生活に取り入れることのできるこの街は、日本でも唯一無二の存在になっていくのかもしれません」
大宮区のおすすめスポットは?
大宮には、都心顔負けのグルメや親子で楽しめるレジャースポットも数多く存在しますが、今回は中山さんもよく利用するというおすすめスポットを4か所、ご紹介いただきました。
1.子どもは大喜び間違いなしの「鉄道博物館」
「“鉄道の街”として栄えているところも、大宮のアピールしたいポイントです。大宮は鉄道好きな子どもにはたまらない場所で、我が家も“てっぱく”(鉄道博物館の愛称)の年間パスポートを持っています。大宮駅からてっぱくへの道沿いにはSLをはじめとした鉄道のモニュメントが多数あり、歩くだけでも楽しいつくりになっていておすすめです」
https://www.railway-museum.jp/
2.本格イタリアンをリーズナブルに楽しめる「トラットリア ティンブロ」
「海外と国内の星付きレストランで修業した奥さんと、国内有名店の総料理長をつとめていた旦那さんが大宮に帰ってきて開いたというお店です。お二人の経歴からもわかるように、国内外トップクラスの技術で洗練されたワンランク上の料理が出てくるのに、価格は埼玉の住宅街に合わせたリーズナブルなもの、という奇跡的なお店です」
3.関東を代表する人気パティスリー「アングランパ」
「こちらは都内の有名店『オーボンビュータン』で修行したパティシエが開いたお店で、今や埼玉県だけではなく、関東地方を代表するようなお店になりました。洗練された本格的なフランス洋菓子を楽しめることが特徴なのですが、中でもガトーショコラは傑出した完成度で、チョコレート系ケーキに目覚めるきっかけになりました」
https://www.facebook.com/UN.GRAND.PAS/
4.豊富なウイスキーを取り揃えるバー「ハングオーバー」
「既に20年ほど通っているのですが、僕がウイスキーに傾倒するようになったきっかけのお店の1つです。勇気を出して重厚なドアを開けた先の、壁一面のシングルモルトウイスキーは圧巻そのもの。オーセンティックな雰囲気はこの地区では結構貴重で、お酒の品揃えや値段、雰囲気も含めてイチオシのバーです」
今回は、中山さんにご紹介していただいた「トラットリア ティンブロ」を実際に訪れました。次のページでは、県外にも多くのファンを持つ本格イタリアンの魅力に迫ります。
【プロフィール】
ライター・ブロガー / 中山記男
1978年静岡県三島市生まれ。1997年から大宮(現さいたま市)へ移り住み、2000年よりブログサイト「エアロプレイン」をスタート。飲食店のオンライン化をサポートする「株式会社トレタ」に勤務する傍ら、さいたま市をはじめとしたグルメ・観光スポットなどのリポートや、ガジェット紹介などの記事を幅広く執筆している。
https://airoplane.net/