記録的な夏の高温や世界各地で頻発する山火事など、さまざまな異変が世界レベルで起きていますが、そんな変化は広大な海のなかでも起きているようです。そのひとつが、2013年~2015年頃から北太平洋で観察されるようになった「温かい水の塊」。周辺の水温よりも最大で4度近く高くなるこの現象を科学者たちは「Blob(ブロブ)」と呼び、その原因や今後の発生頻度などについて調査してきました。
最高気温更新のウラに……
2013年頃から観察されていたブロブは、サンゴの白化やザトウクジラの個体数減少など生態系や漁業にも大きな影響をもたらしていると見られていますが、その影響は常夏の楽園にも及んでいました。2019年の夏にはハワイで最高気温記録を更新する日が29日もあり、史上最も暑い夏となったのです。
ハワイは本来、比較的冷たい海水に囲まれた地域にあり、夏であっても過ごしやすい気候なのですが、その年の夏については北太平洋の海域でブロブが発生し、平年より2~4度ほど高い海水に囲まれていたのだそう。そのため、このブロブによって夏の異常な暑さがもたらされたものと見られています。
温暖化でブロブの発生頻度も上昇
周辺よりも高温な気温の塊が、波のように押し寄せてくる現象を「熱波」と言いますが、ブロブは海中で起きる熱波のようなもの。日本語では「海洋熱波」と表現されることもあるこのブロブですが、発生の原因は何なのでしょうか? 最も単純な見方は、やはり地球規模で起きている気候変動の影響でしょう。
スイスのベルン大学の研究チームが先日発表した内容によると、1981年~2017年に記録されたブロブを解析したところ、ブロブは平均して150万平方キロメートルの大きさで40日間続き、海水温が最高で5度も例年より高いことがわかりました。さらに近年起きた大型のブロブについて、どのような確率で発生していたか計算すると、人為的な気候変動が原因で20倍も高い確率でブロブが発生すると判明したのです。
同チームによると、過去10年間で観測された最強のブロブは、産業革命前の気候では数百年~数千年に一度程度しか発生しなかっただろうと見られるとのこと。しかし、これから世界の平均気温が1.5℃上昇するとしたら、同じ規模のブロブは10〜100年に1度の頻度で発生し、気温が3℃上がるとしたら、10年に1度の頻度で起こると予想されるそう。
世界各地で引き起こされる、さまざまな異変。このまま続けば、さらに予想外の大きな影響が出てくる可能性だってあり得るでしょう。夏の厳しい暑さも、山火事も、海のブロブも、地球からの警告なのかもしれません。
【出典】
Laufkötter, C., Zscheischler, J., & Frölicher, T. L. (2020). High-impact marine heatwaves attributable to human-induced global warming. Science, 369(6511), 1621-1625. https://10.1126/science.aba0690