月や火星などの宇宙開発を行う国といえば、アメリカやロシア、日本、中国などの存在が広く知られていますが、石油産業で有名なUAE(アラブ首長国連邦)も宇宙事業に参入していることをご存知でしょうか? しかもこの国は100年後までに火星に都市を作る火星移住計画も掲げているのです。UAEが取り組む宇宙事業とはどんなものなのでしょうか?
2024年までの月面探査計画を発表
先日UAEが発表したのが、月面探査計画に乗り出す計画。月面を無人で走行して月の地表を調べる探査車を2021年までに設計し、その後、製作や試験を経て、2024年までに月に向けて打ち上げる予定とのこと。UAEの首長、シェイク・モハメド殿下は自身のTwitterで、この探査機は100%UAEで開発されたものであり、「ほかの月面探査機が調査しなかった月の表面から写真やデータを地球に送り、グローバルな研究機関などに共有される」と投稿しています。
さらにUAEは2020年7月に、同国初の火星探査機「Hope」を鹿児島県にある種子島宇宙センターから打ち上げ、成功しています。この火星探査機は約5億キロにも及ぶ距離を飛行し、UAE建国50周年と重なる2021年2月に火星へ到達する予定です。
これらに加え、UAEが掲げているのが「Mars Science City」と呼ばれる壮大な火星移住計画です。同国は2017年に今後100年以内にこの火星移住計画を遂行すると発表。大気が薄くマイナス63度、重力は地球の38%しかないという火星で人が生活するため、17万7000平方メートルのバイオドームを建設し、そこに都市を作るという大胆な構想が描かれていますが、今後は砂漠などでバイオドームを建てシミュレーションなどが行われるものと見られています。
石油だけに頼らない経済発展モデルへ
UAEは石油や天然ガスなどの資源が豊富な国であり、石油産業を中心に経済発展してきました。しかしUAEを構成する首長国のひとつドバイでは、今後10年ほどで石油が枯渇すると予想されており、太陽光発電開発のような環境関連ビジネスや観光業にシフトした経済発展モデルが進められています。
また、新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、2020年は石油の需要が落ち込み、価格が下落しているとのこと。そこでUAEとしても、同じように石油産業だけに頼らない経済モデルの構築が進められ、その中で宇宙開発事業に大きな期待がかかっているようです。
2040年代までに1兆ドル(約105兆円)に達すると予測される世界の宇宙ビジネス。2024年までに有人月面着陸を目指すNASAのアルテミス計画を筆頭に、新しいビジネスのフィールドとして宇宙に今後ますます熱い視線が向けられることは間違いないでしょう。