今や13.3型クラスの製品でも重量1kg以下が当たり前となっている軽量モバイルノートPC。正直、多くの人が「もうこれで十分」と思っているのではないでしょうか? そこからさらにもう一声で800g前後なら文句なしですよね。実際、ここ数年は多くのメーカーのモバイルノートPCが重量800g~1kg前後に収まっています。
そんな中、他社がどうあろうと徹底的に軽量化追求を突き詰めているのが富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)です。同社の誇る軽量モバイルノート「LIFEBOOK UH-X」シリーズは2017年10月発売の初代モデルで重量777gを実現してPCユーザーを驚かせましたが、そこからさらに軽量化を押し進め、この10月に発表された最新モデル「LIFEBOOK UH-X/E3」では、先代モデルから一挙に64gもの軽量化に成功! まさかの重量634gを実現してしまいました。
カーボン天板&スリムベゼル採用などによって劇的に小型軽量化!
では具体的にどのようにしてここまでの劇的な軽量化に成功したのでしょうか? FCCL曰く「細かな軽量化の積み重ね」とのことですが、今回に関して特に大きかったのは天板を従来のマグネシウムリチウム合金製からより軽量・強靱な(でも高価な)カーボン製に変えたことだそうです。
これで一気に数十gの軽量化に成功。そこから新規設計の軽量キーボードなどさまざまな工夫を積み重ねていくことで、重量は約634gという驚異的な軽さを実現しました。
さらに今回は軽量化だけでなく小型化も追求。ディスプレイを流行りのスリムベゼルタイプ(左右は約6mm幅に)とすることで、フットプリントも一回り小さくなっています。具体的には左右幅が約2mm、奥行が約15mmも小さくなりました(薄さは約15.5mmをキープ)。
これ、サラッと簡単に書いてしまいましたが、実は大変なこと。フットプリントが小さくなるということは、本体内部のスペースも減るということなので、ほぼ全面的な設計変更が必要になります。また、フレームが細くなるためボディ剛性が落ちるという問題も。ディスプレイ上部に配置されているWebカメラもスリムベゼルに合わせた小さなものを用意しなければなりません。
「LIFEBOOK UH-X/E3」では、こうした弊害を一つひとつ丁寧に解決。たとえばWebカメラは超小型のものを新開発し、これまで通りディスプレイ上部に収めました。他社製スリムベゼルモデルではカメラをスペース的に余裕のあるディスプレイ下部に移動していることが多いのですが、これはビデオ会議時に鼻の穴が映り込んでイヤなんですよね。しかもその上でWebカメラには物理シャッターも追加。使わない時にはカメラを塞いでおくことができるようになりました。これは素晴らしい!
それと外観からは分かりませんが、Wi-Fiのアンテナもこれまで通りディスプレイ上部に配置。アンテナを高いところに配置することで安定した通信を行えるようにしています。
なお、今回の新モデルではインターフェイス回りにも若干の修正が。大きなところではACアダプターを接続する電源端子が廃止され、USB Type-C端子に接続するようになりました。もちろんUSB PowerDelivery対応なので、既存のモバイルバッテリーから充電することも可能です。なお、バッテリー駆動時間はスペック値で約11時間。一般的なオフィスワークであれば、丸1日、充電せずに持ち歩けます。
さらに従来モデルでは引き出し式だった有線LAN端子の形状がフリップ式に変更されています。金属製のフリップを上に跳ね上げることでLANケーブルを挿せるようになります。引き出し式は強度的にやや不安があったので、これもうれしい変更と言えるでしょう。
もちろんその上でしっかりと剛性は確保。スペック的に先代モデルと同等の数字を確保し、落下試験で約76cm、一点加圧試験で約35kgf、全面加圧試験で約200kgfなどという充分な堅牢性を実現しています。
パフォーマンスから細かな使い勝手まで隙の無い作り込み
大事な使い勝手についても検証してみました。まず、気になるパフォーマンスに関しては、最新世代(第11世代)のインテル Core i7-1165G7 プロセッサー搭載と文句なし。このCPUはグラフィックパフォーマンスが大きく向上していることが特長。実際にいろいろ試してみましたが、フォトレタッチやちょっとした3Dゲームなど、映像回りの処理が改善されているのを実感できました。より多くの人に関係しそうなところではビデオ会議時(特に背景ぼかし機能をオンにしたとき)のもたつきが軽減されています。
さらにストレージはなんと約1TBの大容量・高速SSDを搭載。近年、「メインマシンとしても使える」ことを謳うモバイルノートが増えていますが、実際に使ってみるとストレージが足りなくて難儀することが多かったんですよね。でも、1TBもあれば本当にメインマシンとして使えてしまいそうです。
キーボードは、本体が小型化したにもかかわらず従来モデル同様フルピッチ(19mm)を確保。キー配列も無理なくきれいに収まっています。軽量化されたことの弊害としてタイプ感が損なわれているのではないかと危惧していたのですが、しっかりしたストローク感があり不満は全く感じませんでした。従来モデルではEnterキー、Shiftキーなどの周辺ボタンがややカチャカチャと耳障りな音を立てがちだったのですが、本機ではその辺りも改善されています。
ただし、キーボードバックライトは非搭載。これはちょっと残念でした。次世代モデルではぜひ実現してほしいところですね。
細かなところでは、ディスプレイを開くとキーボード面に傾斜が付く構造も◎。わずかな角度ですがタイピングしやすさがグッと高まります。
トラックパッドは2ボタン式。最近のモダンなモデルではボタンレスが流行りですが、個人的には物理ボタン付きは歓迎。ボタンの押し心地も軽めで長時間使っていても指先が痛くなったりすることはありませんでした。
軽量モバイルノートながらインターフェイスが充実しているのも「LIFEBOOK UH-X/E3」の良いところ。左側面にUSB 3.2端子が3つ(うち2つはType-C端子)とHDMI端子が、右側面にUSB 3.2端子(Type-A端子)、有線LAN端子、SDメモリーカードスロットが搭載されています。2つあるUSB Type-C端子はどちらもUSB PowerDelivery、DisplayPort Alt Modeに対応しているので、充電したり、外部ディスプレイに繋いだりできます。
さらに「ウィズコロナ」な新機能として、指紋センサーによるロック解除にも対応。キーボード右上の電源ボタンに指紋センサーを内蔵することで、電源オンと同時にログイン処理を完了できるようになりました。代わりに顔認証機能がオミットされてしまったのですが、オフィスでもマスク着用が求められる昨今、指紋認証のほうが実用的のように感じます(本当は両方載っていて、使い分けられるのがベストだとは思いますが)。
モバイルしない人にもこの軽さには“価値”がある!!
実は、実際に触らせてもらうまで、「600g台はすごいけど、800gで充分軽いし、そこまでメリットは感じないんじゃない?」と思っていました。でも、実際に触ってみたら感想がガラッと変わりました。この軽さはすごい!
冷静になって考えてみると、「LIFEBOOK UH-X/E3」の重量634gって「iPad Pro 12.9インチモデル」(重量641g)より軽いんですよね。本体サイズがグッと小さくなったことも合わせ、カバンに入れて持ち歩くときはもちろん、自宅でのちょっとした移動でも負担感がびっくりするほど軽減されます。新型コロナ流行以降、モバイルへのニーズは急増していますが、モバイルしない人にもこの軽さの恩恵はあると感じました。
軽量モバイルノートにありがちな、使い勝手にまつわる細かな不満がほとんどないことにも感心しました。せいぜいキーボードバックライトがないことくらい。本当によく作り込まれたマシンです。文句なし。
同クラスの海外メーカー製品と比べて高価格ではあるのですが、けっして割高ではありません。軽さから使い勝手まで文字通りワンランク上の製品に仕上がっているので、ウィズコロナ時代の在宅マシンを検討している人にはぜひとも検討してもらいたいですね。
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