ASUS JAPANが10月23日、5G対応のSIMフリースマートフォン「ZenFone 7」シリーズを発売しました。前後に向きを変えられるフリップ式のトリプルカメラを搭載したハイエンドモデルで、無印の「ZenFone 7」(8万5800円・税別)と、上位版の「ZenFone 7 Pro」(9万9800円・税別)の2モデルが用意されています。
ZenFone 7と7 Proの違いは3つ
両モデルのデザインは共通で、見ただけでは違いはわかりません。まずは、両モデルの差分を抑えておきましょう。
・ZenFone 7のCPUはSnapdragon 865(最大2.84GHz)だが、ZenFone 7 Proは、さらに処理速度が速いSnapdragon 865 Plus(最大3.1GHz)を搭載。
・ZenFone 7の内部ストレージは128GBだが、ZenFone 7 Proは256GB。ちなみに、どちらもmicroSD(最大2TB)を装着してストレージを拡張できる。
・カメラの基本スペックは共通だが、ZenFone 7 Proは広角+超広角+望遠のトリプルカメラのうち、広角と望遠が光学式手ブレ補正に対応。
以上です。違いは、この3つだけです。実は、バッテリー持続時間が微妙に異なるのですが、バッテリー容量はどちらも5000mAhなので、電池持ちは同等と捉えるべきでしょう。
どちらを選ぶべきかは、そんなに難しくはありません。どちらも現行機種ではトップクラスのハイエンドモデルなので、相当なヘヴィーユーザーでなければ、ZenFone 7で十分に満足できるはずです。撮影画質を重視し、光学式手ブレ補正が欠かせないという人はZenFone 7 Proを検討するべきでしょう。
自称 “標準的ユーザー” の筆者は、ZenFone 7をいち早く使ってみる機会を得ました。気になるフリップカメラの使い勝手を中心に、本音でレビューさせていただきたいと思います。
自分撮りしなくても役立ちそうなフリップカメラ
ZenFone 7の最大の特徴はフリップカメラ。前モデルのZenFone 6は2眼(広角+超広角)でしたが、ZenFone 7は広角(6400万画素)+超広角(1200万画素)+望遠(800万画素)の3眼カメラへと進化しています。
メインの広角カメラにはF値1.8の明るいレンズを採用し、撮像センサーにはソニー製の「IMX686」という最新のセンサーを採用。超広角カメラは115度の視野角を撮影でき、マクロ撮影にも使用。望遠カメラは光学3倍ズーム、デジタル12倍ズーム撮影に対応しています。
実際にいろいろな被写体を撮影してみたところ、薄暗い状況でも明るく撮影でき、ナチュラルな色で撮影される印象。AIによる被写体・シーン認識に対応していますが、過度に鮮やかになったりすることなく、適切な補正が得られるように感じました。
たとえ回転させずとも、画質には満足できそうなカメラですが、くるりと180度回転させて自分撮りにも使えることが大きなメリット。あいにく筆者はセルフィーを楽しむ趣味は持っていませんが、超広角カメラで自撮りができるので、旅先で家族や友人と一緒に写したりするときに重宝するように思いました。
フリップカメラのメリットを存分に生かせるのがオートパノラマ撮影。一般的に、パノラマ写真はスマホをゆっくり水平に動かして撮影しますが、ZenFone 7なら、自分で動く必要はありません。カメラが自動的に向きを変えて撮影し、自然なパノラマ写真が合成される仕組みです。
フリップカメラをしばらく使ってから感じたのは、どんなアングルの写真も無理のない姿勢で撮れるメリット。レンズの向きを自在に変えられるので、例えば、高いところにある被写体にズームアップする場合も、スマホを上向きに構える必要はなし。楽な姿勢でスマホを手にして撮影できます。例えば、料理を見下ろすようなアングルで撮影したり、植物をローアングルで捉えてみたりというときも、レンズの向きを変えることで、スマホや自分自身が陰になるのを避けられるメリットも感じられました。
ビデオ撮影中にカメラを動かすこともできます。カメラを外向きに撮影し、自分のほうに向けて、撮影レポートを話すといったことも可能。最近、人気を集めているVlog(Video Blog)をしている人は、効率よく撮影できて、編集の手間が軽減されるかもしれません。
撮った動画を編集できる機能も充実しています。本格的なビデオを撮る気はなくても、「Instagram」の「ストーリーズ」や「TikTok」など、気軽にショートムービーを共有して楽しみたい人も満足できそうです。
ノッチすらない大画面ディスプレイも魅力
フリップカメラを採用しているため、ZenFone 7のディスプレイにはノッチもパンチホールもありません。6.67インチの有機ELディスプレイは、すべてをスクリーンとして使えることが利点。
解像度はフルHD+(2400×1080ドット)で、HDR10+にも対応。明るく、メリハリが感じられる画質で、動画を楽しみたい人にも適している印象。リフレッシュレートは最大90Hzなので、素早いタッチ操作が求められるゲームを楽しみたい人にもおすすめ。ですが、唯一気になったのはボディの重さ。性能の高さに加えて、5000mAhの大容量バッテリーを搭載しているので、重さは約235gもあります。
スマホとしては最重量級の重さで、今まで軽いスマホを使っていた人は、手にずっしりと感じられる重さに慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
5G対応&デュアルSIMがアドバンテージ
本体の右側に音量ボタンと電源ボタンを搭載。電源ボタンは指紋センサーを兼ねていて、さらに、2回押して「Googleアシスタント」を起動するなどのショートカットを設定可能。なお、フリップカメラによる顔認証にも対応していますが、画面を点灯させるたびにカメラが立ちがって自分のほうに向くのは、最初は楽しく感じられても、使っているうちにじれったく感じられるかもしれません。底部にはUSB Type-Cポートを搭載し、3.5mm穴のイヤホンジャックは搭載されていません。
長く使い続けていくうえでメリットとなりそうなのが、5G対応と、DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)に対応していること。まだ、5Gのエリアは狭く、5Gサービスを提供しているMVNOも少ないですが、これから1〜2年の間に5Gが急速に普及していくのは確実。まずは4GのSIMで利用して、エリアが広がってから5Gにアップグレードするのが現実的でしょう。
SIMスロットには2枚のSIMと1枚のmicroSD(最大2TB)を装着でき、5G回線と既存の4G/3G回線を同時に利用することができます。つまり、通常は4G回線を利用して、5Gの高速通信を利用できる場所でのみ5Gを使うといったことも可能。キャリアが販売する5Gスマホは、たとえSIMロックを解除しても、SIMは1枚しか挿せません。これはZenFone 7の大きなメリットと言っていいでしょう。
8万5800円(税別)は決して高くはない!?
ZenFoneと言えば、2014年に発売された「ZenFone 5」以降、格安スマホの代表格として人気を集めていますが、ここ数年は性能を向上させて、ハイエンドモデルにシフトしています。
今回発売されたZenFone 7シリーズは、基本性能もカメラもディスプレイも、現行機種ではトップクラスのスペックを実現し、ZenFone史上の最強モデルと言って差し支えないでしょう。「ZenFoneなのに8〜9万円台なの?」と思う人は、ぜひ店頭などで触れてみることをおすすめします。逆に「これで10万円以下なの?」と驚くかもしれませんよ。
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