ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載した最新モデル、キックスを取り上げる!
※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。
【PROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のGODカー】日産/キックス e-POWER
SPEC【X ツートーンインテリアエディション】●全長×全幅×全高:4290×1760×1610mm ● 車両重量:1350kg ●パワーユニット:電気モーター+1.2L直列3気筒エンジン ●モーター最高出力:129PS(95kW)/4000-8992rpm ●最大トルク:260Nm/500〜3008rpm ●WLTCモード燃費:21.6km/l
275万9900円〜286万9900円
ノートに比べるとエンジン音がグッと静かになったe-POWER
安ド「殿は日産のe-POWERをどう評価されてますか?」
永福「モーターがエンジンをアシストするハイブリッドとはまったく別の道を行き、まったく別の魅力を生み出した、すばらしいハイブリッドシステムだと思うぞ」
安ド「なるほど! 確かにこのキックス e-POWERに乗っても、まるでEVみたいで、すごく新鮮です!」
永福「基本的にはEV。ただしそのための電気を、ガソリンエンジンを回して生み出しているわけだからな」
安ド「最大の特徴は、アクセルを戻すとかなり強力な回生ブレーキがかかって、ブレーキペダルを踏まなくても止まれることですね!」
永福「それがウケて、ノート e-POWERは大ヒットになった」
安ド「わかる気がします。乗るとビックリしますから!」
永福「そのビックリが吉と出るか凶と出るか半信半疑だったが、吉と出てビックリだった」
安ド「ビックリですか!」
永福「一般のドライバーは、基本的に新しいことに違和感を抱くもの。アクセルを離すだけでグッと減速してしまうことに拒絶感が出るのではと思ったのだが、まったく逆だった」
安ド「逆でしたね!」
永福「トヨタのハイブリッド技術は絶対的な高みにあるが、それに対抗しうるハイブリッドを作り出した日産の技術も大したものだ」
安ド「やはり技術の日産ですね!」
永福「しかもキックス e-POWERは、ノートに比べるとエンジン音がグッと静かになったから、ますますEV感が高まった」
安ド「もう少しエンジンの気配を消せれば、まるでEVですね!」
永福「充電の要らないEVだな」
安ド「ただ、発売して数か月経っても、販売台数ランキングの上位に名前がないのはナゼでしょう?」
永福「このクルマ、タイで生産して日本まで運んでいるので、そのあたりがうまくいってないらしい」
安ド「そうなんですか!」
永福「価格も通常のハイブリッドに比べてかなり高い。日産の販売店としては、久しぶりの新型車なのにガックリだろう」
安ド「もうひとつ残念なのは、あんまりカッコ良く見えないことなんです」
永福「同感だ」
安ド「やっぱりですか!」
永福「どこが悪いというわけではないが、全体に見た目がサエず、最新のクルマという雰囲気がない。インテリアは悪くないんだが」
安ド「内装は、ボディ同色のオレンジが大胆に使われていて、なかなかカッコいいですね!」
永福「内装はオレンジか黒の2種類だから、ボディ同色というわけではないぞ」
安ド「じゃボディが紫でも、内装はオレンジですか?」
永福「オレンジか黒だ」
安ド「うーん、迷いますね……」
永福「お前、ボディは紫を選ぶつもりなのか……?」
【GOD PARTS 1】ステアリングヒーター
手指を温めることは安全運転にも直結
セットオプションで「ステアリングヒーター+前席シートヒーター+寒冷地仕様」が設定されています。真冬になるとステアリングに触れるのも躊躇しがちですから、すぐ暖まる同装備は寒冷地に住んでいなくても重宝します。
【GOD PARTS 2】リアコンビランプ
シャープなデザインを強調するブーメラン型
リアコンビランプは、現行型フェアレディZを思わせるブーメラン型です。ブーメランに見えないかもしれませんが。ブーメランを思いきり斜めから見たらこう見えるかも……と思ってください。シャープなイメージが狙いです。
【GOD PARTS 3】ドライブモードセレクター
独特な運転感覚はスイッチで調節できる
ドライブモードスイッチを押すと、「ノーマル」から「S」や「ECO」に変わります。「S」はアクセルを離した時の回生ブレーキの利きが強くなり、ワンペダルドライブが楽しめます。「ECO」では加速が穏やかになります。
【GOD PARTS 4】SOSコール
有事の際の対策は緊急通報スイッチで
「あおり運転」対策としても期待される緊急通報システムです。スイッチは前席の天井部分に付いていて、事故発生時など緊急事態の際にオペレーターへ直接連絡できます。ちょっと押してみたくなりましたが、大人なのでやめておきました。
【GOD PARTS 5】シフトレバー
未来型シフトもレバーで操作しやすい
リーフやノートなど日産のEVやe-POWERモデルのシフトノブはカタツムリ型でしたが、キックスe-POWERでは通常のレバー型が採用されています。ひょっとして「扱いづらい」などのユーザーの声があったのかもしれません。
【GOD PARTS 6】ダッシュボード
高級感があって感触もいいオレンジ色の素材
インパネ正面に飾られたオレンジ色の素材が、車内を爽やかな雰囲気に演出。この素材、肌触りもなんだかスベスベしていて気持ちよく、どこか高級感すら漂わせています。これだけ精巧なものが作れるのであれば、高価な本革素材はいらないかもしれませんね。
【GOD PARTS 7】インテリジェントルームミラー
アラウンドビューをルームミラーに表示
車両を真上から見たような映像を合成する技術「アラウンドビューモニター」の画面を、デジタルルームミラー内にも映し出すことができます。細部を見るには小さいですが、ハイテク好きなら心躍るに違いありません。
【GOD PARTS 8】Vモーショングリル
ヘッドライトも含めて巨大なV字を演出
日産はここ10年ほどで、フロントエンブレムをVの字で挟む形状のファミリーフェイスを数多くの車種で採用してきました。キックス e-POWERでは、ヘッドライトまでデザインに含めて、巨大なVの字を描いています。
【GOD PARTS 9】プロパイロット
実用的で運転を快適にしてくれる技術
簡単なスイッチ操作で、先行車に追従しながら車線内をスムーズに走行できる運転支援技術です。スカイラインの「2.0」のように「ハンズオフ(手放し)」まではできませんが、熟成されていて、最新モデルならではの高い完成度を誇ります。
【これぞ感動の細部だ!】e-POWERシステム
圧倒的支持を得て進化した日産独自のシステム
ガソリンエンジンは動力として使わず、発電するために動かし、その電気を使ってモーターで走行する日産独自のハイブリッドシステムです。2016年にe-POWERが追加搭載されたノートは、ベース車の発売から4年が過ぎていたにも関わらず爆発的ヒットに。キックスでは、重量が重くなったぶん出力を向上させていて、静粛性も高くなり、上質な走りを味わえます。