忙しいときや疲れているとき、ゆっくりお風呂に入る時間がとれずに、シャワーだけで済ませていませんか? 入浴には、汚れを落とすだけではなく、さまざまな効果が! とくに寝付きが悪かったり冷え性に悩んでいたりするなら、入浴のメリットを取り入れない手はありません。
眠りとお風呂の専門家であり睡眠改善インストラクターの小林麻利子さんに、お風呂への効果的な入り方や、入浴前後に行いたいエクササイズ・ストレッチの仕方を教えていただきました。
入浴の効果とは?
まず、入浴=浴槽のお湯に浸かることの効果について知っておきましょう。大きく分けて5つの効果があります。
1. 身体が温まることで疲れがとれる
温かいお湯に浸かると、身体が芯から温まります。すると、身体中の血管や毛細血管が広がり、血流が促進されることで、体内に溜まった老廃物や疲労物質が取り除かれ、コリがほぐれることで疲れがとれるのです。また、関節がやわらかくなることで関節痛も和らぎます。
2. お湯に浸かることで血行が良くなる
お湯に浸かると、身体は水圧を受けます。この圧力によって、脚などに溜まっていた血液が押し流され、血液の循環が促進されて心臓の働きが活発化します。マッサージを受けるのと同じ原理で、むくみが解消するのです。
3. 浮力によってリラックスできる
水中では、体重が9〜10分の1になるとされています。普段身体を支えている筋肉や関節が、その重みから解放され緊張状態が軽減することで、リラックス効果が生まれます。
4. 毛穴に溜まった汚れを洗い流す
お湯に浸かると身体の中から温まるので、全身の毛穴が開きます。これによって毛穴の中に溜まった汚れや皮脂が洗い流されやすくなります。短時間のシャワーだけでは、この効果は得られません。ただし、長時間お湯に使っていると、必要量の皮脂まで流してしまうことになるので、適度な入浴時間を守ることが大切です。
5. 深部体温を上げることで快眠に導く
最後が睡眠への影響。お風呂に入ると身体が芯から温まる=深部体温が上がるため、お風呂を出るとその体温は下がっていくことになります。人体は体温が下がった際に眠くなるという仕組みをもっていますから、お湯に浸かることはスムーズな入眠にも効果を発揮するのです。詳しくは、このあと説明します。
ではこの深部体温の仕組みから、眠りとお風呂の専門家である小林麻利子さんに解説していただきます。
眠りとお風呂の関係は「深部体温」にあった
「深部体温」とは、体の中心部の体温のこと。内臓や脳などの温度を気にしている方は少ないと思いますが、実はこの深部体温が睡眠に深く関係しています。
「深部体温は、一般的には朝4時ごろがもっとも低く、朝起きて活動していくうちに少しずつ上がっていき、夜7時ごろがもっとも高くなります。就寝2~3時間前から徐々に低下していきますが、就寝直前に体温を急降下させることで眠気を感じられるようになり、スムーズに入眠し質のよい眠りを継続することができます。
ちなみにそのリズムは、何時に寝てもほとんど変わりません。常に寝る時間が遅い場合は、それが基本のリズムになっているので、深部体温の上下も後ろにずれることになります。でも、たとえば毎日0時に眠るのに今日だけ深夜2時になってしまった、という場合は、深部体温の上下する時間は変わらないのです。
大切なのは、眠る前と就寝後に、しっかり深部体温を下げること。たとえばテレワークが続いていたり生理前だったりすると、一日を通して深部体温が高いままになってしまうことがあります。そうなると、そのまま眠ろうとしても体温が下がっていかないので、うまく寝付けません。
そこで効果があるのが、入浴です。シャワーで済ませてしまいがちな人も多いと思いますが、入浴を取り入れることで、効果的に深部体温を下げ、眠りやすい体を作れるのです」(睡眠改善インストラクター・小林麻利子さん、以下同)
準備から入浴後のストレッチまで。正しいお風呂の入り方
それでは具体的にどのような入浴の仕方が効果的なのか、順を追って教えていただきましょう。
1.【入浴前】軽いエクササイズで血流を促しておく
入浴前に軽くエクササイズをして体を温める準備を整えます。「エクササイズのメニューは、お好みでかまいません。息が切れるほどではないけれど、筋トレのような、ちょっと汗をかくエクササイズを行ってあらかじめ血流を良くしておくことで、深部温度を上げやすくします」
(1)
膝と足首を90度に曲げ、床と平行に上げた足を上に向かって10回持ち上げて、お尻の筋肉を刺激します。左右同様に。お尻や骨盤の筋力を鍛え、足に溜まった血流や老廃物を流せる上、ヒップアップの効果もあります。
(2)
今度は足を伸ばしたまま、同じように10回上に持ち上げます。こちらも左右同様に。背中の筋肉も鍛えられ、上半身もポカポカしてくるはず。
(3)
最後に、片足をお尻の向こう側へスライドさせ、この状態から足を上へ10回持ち上げましょう。両足が終わったら、入浴の準備完了です。
ちなみに、エクササイズするときは「磁気を発する機能つきのウエアも深部体温を上げやすく、おすすめ」だそう。
2.【入浴の準備】お湯には必ず入浴剤を投入すること
小林さんは、睡眠のためにもお肌のためにも、いわゆる“さら湯”の湯船には入らないそう。入浴剤やバスオイルなどを入れることで、水道水に含まれる塩素(カルキ)が中和され、肌が乾燥するのを防ぎます。
小林さんが愛用している入浴剤は2種類。ひとつはオーガニックのラベンダーを使った香りのよいタイプのもの、もうひとつは炭酸ガス入りのものでした。
ネオナチュラル「母袋有機農場シリーズ はだ恵りの湯」8袋入り(2000円+税)「快眠に効果的といわれるラベンダーの茎や葉、花に、米麹や岩塩を合わせたもので、このまま枕元に置いて寝てもいいほどの香り立ちです。お風呂に入れると水蒸気でお風呂全体に香りが広がり、リラックスできます。毎日使うには少々贅沢なので、週に一度のごほうびとして使っています」
花王「バブ 薬用メディキュア(柑橘の香り)」6錠入り(631円+税・編集部調べ)「こちらは炭酸ガスで体を温められるタイプのもの。毛細血管を広げて血流を促進するため、体が温まるスピードがとても早くなります」
「こういった入浴剤を使えば、短い時間の入浴でも身体を深部まで温めることができ、忙しい日の夜にもぴったり。お肌にも睡眠にもいいので、必ずバスオイルや入浴剤などを入れて入りましょう」
いよいよ入浴。何℃くらいのお湯に、どれくらいの時間浸かればいいでしょうか? また、入浴後のストレッチなど、入眠前までのステップを、次のページで解説していただきます。