ソニーモバイルが、同社のスマートフォンXperiaシリーズとして初めて5Gのミリ波による高速通信に対応する端末「Xperia PRO」を2月10日に発売。価格はオープンですが、ソニーの直営店舗などを通じて想定売価約25万円で販売される“Xperiaの高級プロ機”は、5Gを活用したある“特別な使い方”も想定しています。ソニーモバイル担当者のコメントを交えながら、Xperia PROがどんな5Gスマホなのか解説します。
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ソニーストアなどでSIMフリースマホとして約25万円で販売
Xperia PROはソニーが全国展開する5つの直営店とオンラインストア、並びに一部の家電量販店やECサイトに販路を絞る形でSIMフリー端末として2月10日から発売されます。価格はオープンですが、税別の想定売価は22万8000円前後。税込換算では約25万円になるかなりハイエンドなスマホです。日本のほか北米でも同時期に発売を予定しています。
本機は国内で2020年の春に発売された「Xperia 1 II」のデザインとスペックをベースに開発された上位機です。Xperia 1 IIは現在、ソニーの直販店やオンラインストアでSIMフリー端末が12万4000円(税別)で販売中ですが、比べると約10万前後の価格差があります。
その理由はXperia PROがプロの映像クリエイターをターゲットに想定して、Xperia 1 IIをベースに様々な機能を追加した特別仕様の5Gスマホだからです。プロ仕様のスマホに相応しい機能を追加、チューンナップも施していることもあって、本体サイズはXperia 1 IIと比較して縦に5mm/横に3mm/厚みは2.5mm大きくなっています。質量は44g重くなりました。
プロの映像クリエイターを支援する「新カテゴリーの5G端末」
ソニーモバイルコミュニケーションズでXperia PROの商品企画を担当する企画マーケティング部門 企画部の生雲稔敬氏は、Xperia PROは動画撮影が可能なデジタルカメラなどに接続して、5Gを活用した動画のライブストリーミングやファイル転送、あるいは高精細な画面で撮影中・撮影後のファイルを確認するための有機ELモニターとしても使うことを想定した「新カテゴリーの5G端末」なのだと、本機の立ち位置を説いています。
映像制作に携わるクリエイターは本機を携えていれば、例えば屋外のインターネット回線が確保しづらい環境でも安定したライブ動画配信や生中継、あるいはデジタルカメラで撮影した素材をすぐにクラウドサーバー等に送ることなどができるでしょう。映像制作のモバイルワークフローを5G高速通信のチカラを活用して支援できるコンパクト端末でもある、そういったところにXperia PROの特殊性があるのです。
それにしてもなぜ一般向けの5GプレミアムスマホであるXperia 1 IIより10万円も高価なのでしょうか。
ひとつは5Gのミリ波による高速通信にも対応しているからです。昨年の春から国内で開始された5G通信サービスはSub-6と呼ばれる6GHz未満の周波数帯域を利用。障害物の多い場所でも電波がつながりやすい特徴を備えていますが、日本ではn257と呼ばれる28GHz帯の5Gミリ波を利用する通信のほうが上り・下りともさらに速い通信速度が実現できることから、5Gのメリットが活かせる本命として期待されています。
国内ではNTTドコモとauが昨年から5G ミリ波のサービスを始めていますが、Xperia PROは発売後から両社の5Gミリ波サービスが使えます。同じくNTTドコモが昨年末に発表した3.7GHz帯と4.5GHz帯の5G Sub-6の周波数を束ねるキャリアアグリゲーションによる高速・大容量通信もサポートしています。
Sub-6による5G通信サービスは、NTTドコモ以外にauとソフトバンクのプランに契約してSIMカードを挿すことによってXperia PROで使えるようになります。楽天モバイルの5G通信サービスは動作保証の対象外なので注意が必要です。本体は物理SIMカードによるDual SIMに対応。
5Gミリ波の通信はSub-6や4G LTEの電波に比べて直進性が高く、減衰しやすいため端末側で電波感度を確保することが困難だと言われています。Xperia PROは筐体の内部に上下左右に向けた通信アンテナを合計4基配置して、360度周囲にまんべんなく受信感度を高める独自のアンテナ構造を採用。生雲氏は「端末を一定方向に傾けたりしても5Gミリ波通信時の電波感度が落ちないため、失敗が許されないプロの現場で確度の高い作業に集中できる」として、Xperia PROの特徴をアピールしています。
HDMI入力搭載。5Gを使って高画質動画をハイスピード送信
Xperia PROが高価な端末であるもうひとつの理由は、世界で初めてデジタルカメラなどHDMI出力を持つ映像機器から10bit階調の高精細な4K/60p/HDRの映像信号を受けてモニターに表示、5G通信を使って送信ができるようにHDMI入力を設けたスマホだからです。本体のボトム側に中央にUSB Type-C端子と並んでHDMI端子を装備しています。
HDMIケーブルで端末を接続すると、デジタルカメラで撮影中の動画をYouTubeやStreamYard、Streams Labsなどのサードパーティのアプリを使って即時ライブストリーミングができます。Xperia PROのディスプレイが4K/HDR対応なので、カメラで撮影中の映像を高精細にプレビューできるモニターとしても使用可能。
USB Video Class(UVC)に準拠するHDMI-UVC変換アダプターを介すれば、同じようにデジタルカメラをXperiaのUSB端子に接続して外付けモニターのように使うこともできますが、HDMI接続の場合は10bit階調表示にも対応するため、カメラの性能がフルに発揮される利点があります。
国内でミリ波、Sub-6の5G通信が使える場所はまだ限られているため、当面はまだXperia PROを4G LTEネットワークにつないで映像ライブ配信等に使うことの方が多くなるでしょう。一方でHDMI入力を備えたことで、デジタル一眼レフカメラの醍醐味であるレンズ交換を活かした映像表現を楽しんだり、暗所の撮影に強いカメラをつないで天体観測のライブ中継に使ってみたりと、スマホ単体ではかなわない映像表現に一歩踏み込めることがXperia PROの大きな魅力だと思います。プロの映像クリエイターに限らず、YouTubeのライブ配信やVlog制作を楽しむ方に広く役立つのではないでしょうか。コロナ禍の影響を受けて、オンラインを活用した音楽ライブの配信、イベントを実施できる環境を模索するアーティストの活動支援にもつながるかもしれません。
デジタル一眼レフカメラで撮影した静止画を、Xperia PROを介してFTPサーバーへリアルタイムに転送・保存する使い方もできます。ソニー純正のモバイルアプリ「Transfer&Tagging add-on」アプリを使うとFTPバックグラウンド転送や、画像ファイルへのタグ・キャプション付けが行えます。
Xperia PROはスマホ本体も高機能
Xperia PROが搭載するディスプレイはXperia 1 IIと同じ6.5型の4K/HDR対応の有機ELですが、ソニーの業務用マスターモニターに画質を合わせ込む調整を1台ずつ丁寧に行った後に出荷されます。
背面のメインカメラにはすべてカール・ツァイス製の高画質レンズを採用。16mm超広角/24mm標準/70mm望遠レンズによるトリプルレンズカメラと、3D iToFセンサーによる高精度なオートフォーカス機能も備えているので、いざという時にはXperia PRO単体でもハイグレードな5G・動画ライブストリーミングができます。ハイグレードなデジタルカメラは一気に揃えられなくても、とりあえずXperia PROを揃えるところから動画制作作業の足場を固めてもよさそうです。
本体の前面には強化ガラスを採用していますが、背面と側面には強化樹脂素材を採用しているため傷が付きにくく、またグリップ感も良いプロ仕様の筐体とした点もXperia PROの特徴です。IPX5/IPX8相当の防水、IP6X相当の防塵対応はXperia 1 IIと同じになります。
アクションカメラのGoProの中にはHDMI出力機能を持つ機種があるので、Xperia PROをつないで大型モニターとして使えれば撮影環境が一段と快適になりそうです。だからこそXperia PROの本体をより強固にガードできるように純正品のタフネスケースや、体に身に着けるためのホルダー等のアクセサリーも欲しくなってきます。
Xperia PROはソニーのオンラインストアなどで1月27日から予約受付を開始しています。また全国5か所のソニーストアでは1月28日から実機の展示も行われます。生雲氏は「多くの映像クリエイターにXperia PROを使っていただき、5GやHDMI入力を活かした動画制作の可能性を見つけてほしい」と語っています。
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