【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】
文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を1点ずつピックアップしている。第6回となる今回は?
第6話
サクラクレパス
サクラクラフトラボ
005 ゲルインキボールペン
3520円(税込)
2017年に誕生した「かく」喜びを届ける筆記具シリーズから2020年11月に登場。流線型のシルエットと、ボディ中央から両端に向かって彫られたラインが美しい。ボディは8色展開で、インクはセピアブラックを搭載。別売りでブラック、ブルーブラックもある。
「新しいのにどこか懐かしい」
ここ数年、各筆記具メーカーが自社製品のリブランディングを進めていくなかで、サクラクレパスが売り出したのが「サクラクラフトラボ」シリーズ。こちらの既発4モデルはどれも、真鍮を素材に使い、重厚感のあるヴィンテージ路線を打ち出していたが(「002」のみ同社のクーピーペンシルをモチーフにしており毛色が異なるが)、どれもどっしりとしたボディにサクラならではの軽やかなインクがどうにもチグハグで、そもそもサクラクレパスが「高級感=重量感」というステレオタイプに与する理由も見当たらず、ずっとモヤモヤしたものを感じていた。それぞれの出来に文句はない。が、ほかにもっと高級感の出し方があるんじゃないかしらん−–−と。
そんなところに発売された新作「005」を見て、思わず膝を打ってしまった。そうそう、これこれ! クーピーペンシルにも通じる無垢なボディラインに、不揃いのスリットが走り、繊細なニュアンスを出しながら握りやすさも確保している。この「新しいのにどこか懐かしい」というバランスはまさにサクラクレパスに望んでいたことで、しかもちゃんと高級感まであるのだから感心してしまう。胴軸をひねってペン先を繰り出し、大きめの紙に殴り書き。しばし無心になってペンを走らせ、ふと尾尻を真上から眺めてみると……ペン後部の断面が桜の花びらの形になっているのに気が付いた。そうそう、こういうこと〜! 大正解。
【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】バックナンバー
【第1話~第4話】https://getnavi.jp/tag/furukawakoh-handwriting/
【第5話】三菱鉛筆の開拓精神を見た! 異形のペン先をもつ3色ボールペン「ジェットストリーム エッジ3」
https://getnavi.jp/stationery/551859/