日本時間の2月19日、NASAが手がける5台目の火星探査車「パーサヴィアランス(Perseverance)」が火星に着陸しました。着陸成功のニュースは瞬く間に世界中を駆け巡りましたが、それと同時に話題になったのが、この探査車のパラシュートに暗号が隠されていること。
地球外生命体へ呼びかけるメッセージを発表するなど、NASAはこれまでにもウィットに富んだ仕掛けや取り組をが行ってきましたが、今回の暗号に隠されたメッセージとは?
2020年7月30日、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられたパーサヴィアランスは、約6か月にわたる4億8000万kmの長い旅を経て火星にたどり着きました。着陸システムを担当したエンジニアのアル・チェン氏はその後の会見で、探査車が着陸時に使った大型パラシュートの映像を示しながら「あるメッセージを隠した」と発表。すぐに、この暗号の解読に世界中が盛り上がったのです。
その暗号とは、パラシュートに使われたオレンジ色、クリーム色、白色の3色のうち、オレンジ色を「1」に、クリーム色を「0」とみなして2進法にするというもの。こうすると、パラシュートの内側には「4、1、18、5」の数字が浮かび上がり、これをアルファベットの順にあてはめると「d、a、r、e」と読めるのです。同様に、ほかの数字も解読すると、「dare mighty things」というフレーズが読めるのです。これは「困難に挑戦する」という意味。ルーズベルト大統領のスピーチに使われた言葉で、NASAのジェット推進研究所(JPL)のモットーなのだそうです。
さらにパラシュートの外側に隠された「34、11、58、N、118、10、31、W」は、JPLの緯度と軽度である「北緯34度11分58秒、西経118度10分31秒」のこと。ネット上では、この暗号をわずか6時間ほどで解読した人が現れ、おおいに盛り上がりました。この仕掛けを把握していたのは、NASAのなかでもごく一部の人だけだったそうで、もしかしたらNASAの関係者もこの謎解きにハマった人がいたかもしれません。
科学の源泉
ちなみに、2012年に火星に着陸した探査車「キュリオシティ(Curiosity)」には、探査車のタイヤの跡にモールス信号が仕掛けられていました。探査車のタイヤの跡は、探査車が進んだ距離を正確に把握するために必要なもので、あえてある一定のパターンの跡がつくように設計されています。これにモールス信号が仕掛けられていて、「JPL」と読み解くことができたんです。
ほかにも、真面目だけど遊び心あふれるNASAの取り組みをさらに象徴するものに「ゴールデンレコード」があります。これは1977年に打ち上げられた宇宙探査機ボイジャー1号、2号に搭載されたもの。地球外生命体や未知の人類が見つかったときに備えて彼らと交信できるように、さまざまな言語や音声、自然音、画像などを収録しているのです。ゴールデンレコードの表面にはレコードの読み方が書かれているのですが、英語などの文字ではなく、高度な知識を持った地球外生命体なら解読できると思われる、数学的な表現が用いられています。
このゴールデンレコードの一部はウェブサイト上で公開されており、誰でも自由に閲覧できるようになっています。ウェブサイトにアクセスすると、まず宇宙空間のような画像が画面いっぱに現れます。白く点滅するマーク部分をクリックしていくと、やがてボイジャーに到達し、収録された音声や画像など31のコンテンツを見たり聞いたりすることができます。
壮大なプロジェクトであっても、遊び心やエスプリの効いた仕掛けを施すとはなんとも粋。宇宙探査という大きな野望には人間の知的好奇心という原点があったと、改めて気づかせてくれるようです。