大手ビールメーカーのなかで最もクラフトビールに注力しているキリンビールが、3月23日に新商品を発売しました。その名は「SPRING VALLEY 豊潤<496>(スプリングバレー ほうじゅん ヨンキューロク)」。
クラフトビール好きの人ならキリンの496はご存知でしょう。ただ、従来の496とは味わいもブランディングも違うとのこと。また既存のクラフトビールブランド「グランドキリン」とも異なる戦略で展開していくとか。
「SPRING VALLEY」というのは、約130年前に横浜で設立された「スプリングバレー・ブルワリー」という、日本で初めて商業的な成功を収めたビール醸造所のこと。そしてキリンビールの前身「ジャパン・ブルワリー・カンパニー」は、その跡地に設立されました。つまりはオマージュ。
この、原点ともいえるブランドを冠して全国発売するというところに、なみなみならぬ本気度が見えるのです。そこで改めて「クラフトビールとはなんぞや」という基本的なところに触れながら、商品発売の背景、味わいレポートなどをお伝えしていきます。
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クラフトビールがCMで流れる時代が来た!
クラフトビールは、小規模な醸造所で職人たちが作ったビールを手工芸品(クラフト)に例えたのが始まりとされていて、アメリカのビール醸造者協会「ブルワーズ・アソシエーション」では、クラフトビールメーカーを「1.小規模であること 2.独立していること 3.伝統的であること」と定義しています。ただし現在では世界的な規模に成長したクラフトブルワリーもあり、小規模とは限りません。キリンとしては「造り手の完成と創造性が楽しめるビール」「パッションが感じられるビール」と考えているのこと。
なおクラフトビールは比較的高額であり、同様に高額であるプレミアムビールとの違いはどこにある?と思う人もいるでしょう。こちらに関してはひとついえることは、プレミアムビールは高品質な素材や贅沢な造り方を用いることで、プレミアムでないビールと差別化をはかったもの。ヒエラルキー(階層的構造)のもと階級で分けられ、上位に位置付けられているビールともいえるでしょう。
一方のクラフトビールは優劣や階級を位置づけず、多様な味を楽しむビールです。価格がプレミアムビール以上に高いものが多いのですが、それは個性的な味を目指して希少なホップや副原料などを大量に使っているから、乳酸発酵や木樽熟成など特殊な製法を用いているからという理由がほとんどです。
クラフトビール大国・アメリカからのトレンド派生や多様化の流れなどで、日本でもクラフトビールの造り手と飲み手が増えています。ではなぜキリンは今回、「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を新発売するのでしょうか。そこには「ビール類市場をもっと魅力化・活性化させたい」という想いがあり、そのためにはクラフトビールのさらなる認知拡大と飲用体験の創造が欠かせないから、ということなのです。
これは、クラフトビールが盛り上がっているとはいえ、飲んだことがない人はまだまだ多いということなのでしょう。そこで、コンビニやスーパー、ドラッグストアなど身近な店で販売していくのはもちろん、大定番の「一番搾り」「本麒麟」同様にCMなどでプッシュし、商品を認知させていくとのこと。クラフトビール商品がCMで流れるというのは、きわめて画期的。ここにもキリンの本気度がうかがえます。
そんな「SPRING VALLEY 豊潤<496>」は、いったいどんな味わいなのでしょうか。いよいよ飲んでみることに。