“紙と筆記具の組み合わせ”を考えるようになったら、文房具好きとしてもなかなかの上級者と言えるだろう。そして、組み合わせについては2つの面がある。“実利”と“官能”だ。
実利とは「この手帳にこのペンだと裏抜けするから」だとか、「あのノートは水性ペンがやたらと滲む」といった、性能的な相性のこと。要するに、単純に使いやすい組み合わせか否か、という部分である。
対して官能は、「ツルツルした紙に濃いめの鉛筆を走らせるのが気持ちいい」など、感覚的な相性の話だ。
例えば、筆者の知人には「画用紙に『Vコーン』(つゆだく系の水性ボールペン)のインクがダバーッと滲んでいく感触がエロい」と断言する者もいるほど。個人の感覚や嗜好によるものだけに、一度この官能性にハマると、抜け出し難いほどに魅力がある。実のところ、先の“画用紙にVコーン”のように、実利に反してでも気持ちよさを優先するケースだってあり得るのだ。
……と、話だけ聞いたところで、まだピンとこない人もいるだろう。“紙とペンが気持ちいい”ってなんの話かと。であれば、試してみるのが一番早いのではないだろうか。
紙と筆記具の組み合わせを堪能できるノート&ペン
その“紙と筆記具の官能性”を味わうために作られたのが、コクヨの文具シリーズ「PERPANEP(ペルパネプ)」である。
3種類のA5サイズノートと3種類のペンがラインナップされており、互いを組み合わせることで書き味の違いを楽しめるというから、まさに官能性を確かめるために作られた製品と言える。
コクヨ
ノートブック<PERPANEP>
TSURU TSURU/SARA SARA/ZARA ZARA
各900円(税別)
まずノートは、「TSURU TSURU」「SARA SARA」「ZARA ZARA」という、まったく紙質の異なる紙が3種。
どのような違いかというと、まさに名前そのまま、紙の表面がツルツル、サラサラ、ザラザラとした紙質になっている。紙質が違えば、当然ながら筆記具の走り方や、書いた時の感触が全く違ってくるというわけで、いろいろと組み合わせを探して楽しむことができるのだ。
そして筆記具の方はというと、水性の極細サインペン「ファインライター」、ゲルインクの「サラサクリップ」、コスパ最強の万年筆として知られる「プレピー」の3種類。
ファインライター<PERPANEP>
200円(税別)
サラサクリップ<PERPANEP>
130円(税別)
プレピー<PERPANEP>
400円(税別)
この中で、ファインライターはコクヨのオリジナルだが、それ以外はご存知の通り、サラサクリップはゼブラ、プレピーはプラチナ万年筆の製品。特別な白軸仕様でPERPANEPブランドとして発売されている。
なかなかに珍しい展開の仕方ではあるが、ノートへの書き味を比べるための“基準筆記具”として納得のチョイスではあるし、なかなか面白いやり方だと思う。
●TSURU TSURU×ファインライター
TSURU TSURUはまさに高平滑度のツルツルスベスベ紙。手で触れても毛羽立つ感触はゼロだ。紙の繊維密度が非常に高く、コシも強め。よほど筆圧をかけないと、ペン先が沈み込まない。
これに、コクヨ推奨の組み合わせであるファインライターで書いてみると、ツルツルツルーッ! とどこまでもペン先が走るのだ。そもそもサインペンは筆圧を必要としない筆記具なので、このツルツル感を楽しむにはうってつけと言えるだろう。
個人的には、このスケートリンクの如きツルツル感は、コントロールしにくくて苦手なのだが、気持ちよさだけに焦点を当てれば、納得の組み合わせだ。とても気持ちいい。
●SARA SARA×サラサクリップ
SARA SARAはそこまでピーキーな特性はないが、普通に“書きやすい紙”という印象だ。実際、コクヨのキャンパスルーズリーフ(「さらさら書ける」タイプ)と同質の紙とのことで、つまりは“間違いのないヤツ”である。
手触りも確かにサラッとしており、同じくサラサラした書き味でお馴染みのサラサクリップと組み合わせるのが、コクヨ推奨ということになっている。慣れ親しんだ感触なので、特段の官能性を感じることはないかもしれないが、安定感は抜群だ。
●ZARA ZARA×プレピー
今回の3種のノートの中で、最もユニークなのがZARA ZARA。なにせ表面を撫でるとハッキリと凹凸がわかるほどのザラザラ具合である。透かして見るとムラが視認できるほどに繊維の密度も低く、厚みがある分だけ、筆圧をかけるとペン先の沈み込みが体感できるほど。
とは言っても、ノートとしての使いにくさを感じるほどではないので、そのあたりのバランスはうまく取れているように思う。
ちなみに組み合わせとして推奨されているプレピーで書いてみると、ニブが凹凸を乗り越えるザリザリというかすかな振動が指先に伝わってきて、非常に心地よい。
メーカー推奨の組み合わせはもちろんイイのだが、せっかくなら自分だけの組み合わせを見つけてみたいもの。次では、そんなチャレンジを敢行してみたい。