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カメラ
2016/8/31 15:45

【インタビュー】自由な企業風土から生まれた「GoPro」が目指す次の一手とは?

自転車や自動車、様々なスポーツ用具に取り付けて、臨場感たっぷりの動画や写真を撮影するアクションカメラ。各社から最新モデルが相次ぎ、市場は急速に拡大した。そのアクションカメラ市場を切り拓いたのが、今やその代名詞ともなっている「GoPro」だ。

↑GoPro HERO4 Silver
↑GoPro HERO4 Silver

 

初代は2004年に登場した「HERO 35mm」で、この時はなんと35mmフィルムを使っていた。その後、2007年にはビデオ撮影に対応した「Digital HERO3」が登場し、2009年にはハイビジョン撮影に対応した「HD HERO」が発売されると、その人気は一気に高まった。

 

POSデータに基づく実売調査を行うBCNによれば、昨年暮れに市場全体が前年比大幅ダウンしたが、今年に入ってV字回復。特にGoProが大きく躍進し、今年の4月時点ではシェア42.8%を獲得するなど、さらに存在感を高めているという。

 

今回は、GoProを新たな市場として開拓できた背景や、今後の戦略について、同社のブランディング部門の責任者であるジャスティン・ウィルケンフェルド氏にビデオインタビューを通じて話しを伺った。氏はGoPro初期から在籍し、GoProという企業を作り上げてきたメンバーの一人でもある。

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↑ジャスティン・ウィルケンフェルド氏

 

誕生のきっかけは「自らのサーフィンを撮れるカメラ」の開発

アクションカメラという新たな市場を創り出したGoProには、独自の企業風土やユニークな制度があるという。それはどのようなものなのだろうか。

 

「起業のきっかけは、2001年に現CEOであるニック・ウッドマンが大好きなサーフィンを撮れるカメラを開発したいと思ったことでした。そこに家族や友人など気心の知れていて、ニックとともにカスタマーの目線で製品デザインや開発を手伝う人間が加わっていきました。それがGoProというかつてない発想の商品誕生につながったと考えています」(ジャスティン氏)

↑ジャスティン氏もサーフィンを楽しむことがあるという
↑ジャスティン氏もサーフィンを楽しむ

 

↑本人は「趣味程度」と謙遜するが、写真を見ればその腕前は誰の目にも明らかだろう
↑本人は「趣味程度」と謙遜するが、写真を見ればその腕前は誰の目にも明らかだろう

 

ジャスティン氏によれば、自由な発想で取り組むことができたからこそ、GoProというかつてないカテゴリー製品を生み出したというわけだ。しかし、それだけでは単に製品開発をしただけの、ある意味自己満足に終わってしまいかねない。世の中で支持される秘訣はどんなところにあったのだろうか。ジャスティン氏はその部分にこそこにGoProらしさが生きていると語る。

 

「良い製品は机上でいくら考えてもできるものではありません。GoProは様々なスポーツ競技にスポンサーシップとして参加してきました。それも金銭的な面ではなく、製品を使ってもらう形でのサポートですね。それにも増して弊社が自慢できるのは、毎週木曜日、午後1時から3時までは仕事を離れて好きなアクティビティに参加していいことです。社員も自ら競技に参加することで、本当に必要と思われる製品としてGoProを仕上げることができたというわけです」(ジャスティン氏)

↑アクティビティはサイクリングやモータースポーツなど多岐にわたる

↑アクティビティはサイクリングやモータースポーツなど多岐にわたる
↑アクティビティはサイクリングやモータースポーツなど多岐にわたる

 

なるほど、このアプローチは確かに的を射ている。アクションカメラはズーム機能もなければ、モニターも搭載していないのがほとんど。今までのビデオカメラではあり得ないスタイルだだけに、プロモーションをしなければ注目もされないだろう。しかし、実際に使っているシーンを社員自らがアクティビティに勤しみ、その魅力を伝えていけば注目度はアップしていく。今までと同じ概念に縛られていたら、きっと今のGoProのようなカメラは誕生しなかっただろう。この点についてジャスティン氏は次のように説明する。

 

「GoProではで映像を通して自分で体験しているような感覚が得られることをもっとも重視しています。撮影する際に、カメラをマウントで固定し、両手が自由な状態で撮影できれば、スポーツなどのアクティビティを楽しみながら撮影できますね。そんな利用シーンを想定したのです。そのためには様々なアクセサリが必要となりますが、それも自らが体験しているからこそ、どんなものが必要なのか理解できるんです」(ジャスティン氏)

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↑腕に装着できるバンド「The Strap」など、多彩なアクセサリもGoProの魅力

 

SNSとともに成長してきたGoPro

いま、YouTubeにアップされている動画映像を見れば、GoProで撮影した作品がいかに多いかが実感できる。アスリートたちが様々なアクティビティを楽しんでいる様子がアップされ、それを見たほかのアスリートたちが、「これなら自分でも撮影できるんではないか」と思うようになり、そして彼らもまた撮影してSNSへアップしていく。この相乗効果がGoPro躍進の大きなポイントになっているのは間違いない。

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「それは今から5~7年前のことです。その頃はちょうどYouTubeが成長期で、とにかくコンテンツを欲しがっていた時期でした。GoProにもひとつのバリューとして、仲間が仲間を呼んで互いにその活動を広めていく“Making Friends”というキーワードがあるのですが、GoProのファンやユーザーが自分で撮った動画をYouTubeなどにアップしていき、それを視聴した人たちがGoProに興味を持つという流れが広がっていきました。このようなユーザーコミュニティとのエンゲージメント(つながり)の高さはGoProの特徴であり、GoProにとってSNSとの関係は、文化というか、ひとつのカルチャーとなっています」(ジャスティン氏)

 

アクションカメラというカテゴリーが登場して以降、撮影方法も大きく変わった。

 

「元々、スポーツシーンの映像を撮るには必ずカメラマンが必要でした。しかし、GoProの登場によって、アクセサリーを追加すればカメラマンが絶対に行けないような場所でもアスリート自身で撮れるようになりました。これは弊社CEOであるニック・ウッドマン自身がサーフィンを通して証明して見せました。こんな撮り方はそれ以前は考えられなかったことです。こうしたカメラの使い方までを提案していくことは弊社ならではのアプローチ。それまでのメーカーであり得なかったことでもあります」(ジャスティン氏)

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↑アスリート自身がカメラマンになることで、これまでにない臨場感のある映像を撮影できるように

 

GoProの次の一手は……?

急速に伸びてきたアクションカメラも、ここへ来て成長が鈍化してきたとの情報も伝わっているが、それについてジャスティン氏は次のように反論する。

 

「アクションカメラ市場はこれからもまだ成長していくと考えています。そのために、GoProは時代の変化にきめ細かく対応していくつもりですし、新技術があれば積極的に取り入れていくこともしていく用意はあります。現在、GoProはこの分野で世界ナンバーワンのシェアを獲得しており、その位置を維持するためにも日本は特に重要な市場と捉えています」(ジャスティン氏)

 

発言の中で出てきた“新技術”とは興味深い。それはいったいどんなものなのだろうか。

 

「“次”のことについて詳細なことはまだ言えませんが、既にVR用コンテンツを作ったり、GoProから生中継するようなキットを用意して、それらはプロの現場でも利用されています。ソフトウェアなども開発し、それらを一般向けに広めていくことで需要はさらに刺激されるでしょう」(ジャスティン氏)

↑3D360度VRビデオ撮影を可能にした「Odyssey」。16台のGoProを使用している
↑3D360度VRビデオ撮影を可能にした「Odyssey」。16台のGoProを使用している

 

最近はGoProをドローンと組み合わせて使うことも増えて来ているが、GoPro自身がドローンに対して関わっていくことはあるのだろうか。

 

「ドローンとの連携は積極的に進めていくつもりです。今後はGoProのドローンも出していく予定で、その場合、ドローン市場で優位なポジショニングは得られると思っています。その理由としてGoProは視点のユニークさで高く評価されており、自信は十分あります。今後に期待して欲しいですね」(ジャスティン氏)

 

VRやドローンなど、同社の次の一手を読み取るキーワードが登場したが、はたしてGoProはどのように進化していくのか。本年中に発表されると見られる新製品に期待が高まる。