基本的に、“糊(のり)”の話はどうしても地味になる。現在のデンプンのりに近いものは、すでに江戸時代に広く普及しており(米を煮て作る「姫糊(ひめのり)」と呼ばれるもの)、明治時代にそれを腐らないよう処理したのが、現在でもお馴染みの「フエキのり」や「ヤマトのり」のルーツだ。
この“現在でもお馴染み”という部分が問題で、どうも“進化している感が薄い”のである。つまり、地味。
ちなみに、現在の液体のりやスティックのりも、昭和40年代~50年頃に生まれたもの。以降、細かな性能アップは重ねてきたとしても、さほど大きく変わった感はない。ライバルのテープのりが、機構や接着性能などを次々と更新して新製品を打ち出していくのに比べると、やはり受ける印象としては、結局のところ地味なのだ。
ただ、そんなレガシーなのりではあるが、普段使わないわけではない。レシートや領収書を貼って管理したり、ノートに学習プリントを貼ったりと、活躍の場はまだまだ多いのである。さらに言えば、目立たないだけで、新製品だってゼロじゃない。実は、きちんと機能的に進化したものが発売されているのだ。
四角いのりは“のりの大進化”だった!
のり界における久々のトピックといえば、2019年に発売されたコクヨ「GLOO スティックのり」だろう。スティックのりといえば円筒形……という固定概念を覆す角柱形状。四角い紙のカドにはみ出さず塗れる機能と、角形なのにのり体の乾燥を防ぐ本体機構は、非常に画期的だった。
その派生系として2021年3月に発売となったのが、コクヨ「カクノリ スティック/液体」である。
コクヨ
カクノリ
スティックのり120円(税別)/液体のり130円(税別)
比較的シンプルで大人っぽいデザインだった「GLOO」に対して、「カクノリ」は明確に小中学生向けを打ち出してきた。デザインはもとより、ボディのグリップ部を細くすることで、子どもの手でも持ちやすいようになっているのが、見た目上の大きなポイントだ。
現在のスティック/液体のりユーザーの多くが、プリントをノートに貼って学習用途で使っているのはほぼ疑いないわけで、製品を彼ら向けにチューンするのは、正しいと思う。
角(カド)まできっちりと塗れてはみ出さない
角形スティックのりがどう優れているかに関しては、今さら長々と述べる必要もないだろう。誰だって見た瞬間に「あっ、これならカドまできっちりと塗れて、はみ出さないな」と気付くはずだ。
実際に使ってみても、カドまで過不足なく塗れるのは非常に快適。のりのはみ出しによってノートのページ同士まで貼り付いてしまって開かなくなる、という辛い経験をしたことのある人なら、選ぶべきはこれしかない。
ここからがコクヨの真骨頂!
ただ、スティックのりの角柱形は、円筒形に比べて気密性を保つのが難しいため、すぐに乾燥してしまうという欠点があった。「GLOO」以前にもいくつか角柱形スティックのりは発売されているのだが、どれも乾燥問題を解決できず、駄目になっていたのである。
それを「キャップ周辺だけ円筒形にする」というシンプルな手段で解決したのが「GLOO」と「カクノリ」。そして同じ手法で液体のりも四角くできるのでは? というのが、「カクノリ 液体のり」だ。
もちろん液体のりジャンルにも、ハケ型ヘッドやシリコンの角型ヘッドなど、カドに塗りやすいヘッド形状の既存製品はいくつかある。ただ、それらはハケやシリコンヘッドの中央に小さなのりの吐口が開いており、そこから染み出た液体のりをヘッド表面に広げて紙に塗るという構造だったのだ(もちろん、乾燥をできる限り防ぐため)。それでは、どうしても塗りムラができるし、のり量のコントロールも難しい。
その点、乾燥を気にせずに済むド四角なスポンジヘッドは、圧倒的に強い。ヘッドから均等に染み出す液体のりをズバーッと塗れるので、ムラもなく、かつカドまできっちり行き渡らせられる。これは正直、これまでの液体のりの中でも断トツの使いやすさだ。
接着力の強さで言えば、やはりスティックよりも液体の方が上。それでここまで使いやすいのだから、個人的には、カクノリはスティックよりも液体がオススメしたい。
オススメしたくなるポイントがもうひとつある
最後にもうひとつ、「カクノリ 液体のり」はキャップもいい。
逆さまに立てて置ける先広がり形状なのに加えて、端にあるボタンをつまむように押すだけで、パコッと簡単に外すことができるのだ。文房具マニアの方なら、ゼブラの蛍光マーカー「オプテックス EZ」と同じキャップ構造だ、と言えばピンとくるかもしれない。
ベタベタしたのりも手に付きにくく、簡単オープンで快適。キャップを装着する際にもクリック感があるので、保存時にキャップが閉まりきってないという状態にもなりにくい。これはとてもいいものだ。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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