世界的なウイスキーブームをけん引しているのがシングルモルトですが、人気が高いため希少になっているのも事実。そんななか、注目されること間違いなしの新作がニッカウヰスキーから発売されました。「シングルモルト余市 ノンピーテッド」と「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」です。
ユニークな点は、スモーキーな香りに寄与するピート(泥炭)の効かせ方にあります。本来はピートの香りが華やぐ、力強い味の余市はノンピーテッドモルト原酒を本商品では採用。その一方、ピート香を抑えたフルーティな味が特徴の宮城峡はピーテッドモルト原酒でつくられているのです。その意図は? 味わいは? ということで開発者を取材。すると、これは壮大なストーリーの幕開けであることもわかりました。
30年前の原酒を使った贅沢なシングルモルト
基本情報として、シングルモルトウイスキーとはひとつの蒸溜所の原酒のみでつくられているウイスキーのこと。多くは蒸溜所の地名が商品名となっていて、余市は北海道の余市、宮城峡は宮城県の仙台で生み出されています。
なお、ピートはウイスキーの原材料となる麦芽を乾燥させる手法のひとつとして焚くもので、特にスコッチ、なかでも良質なピートの産地であるアイラ島のウイスキーは、ピート香の豊かさが大きな特徴(ノンピートのアイラウイスキーもあります)。またピートに特徴を持たせた商品にはノンピーテッド、ライトリーピーテッド、ピーテッド、ヘビリーピーテッドなどと併記されることが多いです。
今回取材に応じてくれたのは2人のブレンダー。今回の取り組みは、2024年に創業90周年を迎えるニッカウヰスキーのアニバサリー企画の一環で、その名も「NIKKA DISCOVERYシリーズ」。同社が保有する多様な原酒のほかに原料や発酵など、製造工程によるウイスキーのつくり分けの歴史が生み出す奥深さに焦点を当てたシリーズだと言います。
第1弾がこの2商品で、翌2022、2023年にも新商品など特別な企画を展開予定とのこと。第2弾以降は今後のお楽しみということで、まずは「シングルモルト余市 ノンピーテッド」を手掛けた綿貫さんに特徴を聞きました。
「伝統的な石炭直火蒸溜による力強い余市らしさはそのままに、ピートの奥に隠れていたやわらかな果実味、なめらかでコクのある甘さを引き出しました。香りは華やかでフルーティ。ほのかなミルキーさもあり、はちみつやココナッツを思わせる甘みや香ばしさも感じられると思います」(綿貫さん)
味わいにはりんごや明るいベリーを思わせる、どこか甘酸っぱい風味も。アフターテイストはまろやかで、キャラメル的なフィニッシュ。通年販売の余市と飲み比べると、キャラクターの違いがよりはっきりとわかります。
「『シングルモルト余市 ノンピーテッド』の飲み方は、個性を最大限楽しむならストレートで。少量加水するとより華やかな香味が開きます。オンザロックや水割りならモルトのコクやなめらかな甘さが際立ちますし、ハイボールはさらにフルーティな魅力を感じられますよ」(綿貫さん)