パナソニック・エレクトリックワークス社はこのほど、施設照明を中心にスポーツ事業に本格参入することを表明しました。過去に大井競馬場のナイター照明、最近では青森のスケートリンク「フラット八戸」のアリーナ照明と、GetNavi webでも同社のスポーツ施設関連事業を取り上げてきましたが、これまでは照明事業の一環で取り組んできたものを今後は目標を定めて積極的に営業し、中核事業として大きく育てていく考えです。
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2029年度に全体売上300億円目標
パナソニックグループでは、2020年9月にホールディング直轄事業としてスポーツマネジメント推進部が発足。ガンバ大阪やラグビーのワイルドナイツなどのプロスポーツおよび社会人チームを管理・運営するオーナー事業を中心に活動しています。今回は、同事業部と連携してスポーツ周辺事業をさらに拡大すべく、エレクトリックワークス社内にスポーツビジネス推進部を設立。
スポーツビジネス推進部は主にアリーナ照明を中心に、SI型物販事業(サプライヤー事業)およびサービスコンテンツ型事業(データビジネス)を展開。スポーツマネジメント推進部のオーナー事業を含め、パナソニックグループ全体でスポーツ事業として2029年度に売上高300億円を目指すとしています。
エレクトリックワークス社スポーツビジネス推進部が担う事業は、①リカーリングビジネス、②プロスポーツのアリーナ・スタジアムへのアプローチ、③アマチュア・学生スポーツのLED化推進の3本柱。
①のリカーリング(収益継続型)ビジネスは、プロスポーツ拠点のアリーナ・スタジアム内および周辺における照明演出・映像演出を展開。さらに、アリーナ・スタジアムと連動する形での街中照明演出などをパナソニッククラウドで管理、その効果を現場センシングやカメラAIを使用してデータ解析・可視化して運営の省エネ・省オペ化、ユーザーエクスペリエンスを継続的にアップグレードしていくものです。
例えば、アリーナで音楽ライブを演奏している時に、アリーナ外では音楽に合わせてライトが点滅したり、ライブ終了後には観客を交通機関まで街灯で誘導するといった、街ぐるみのライトパフォーマンスが可能になります。
②のプロスポーツのアリーナ・スタジアムへのアプローチは、全国のアリーナ・スタジアムが対象。2019年のスポーツ庁発表時には、全国には52のスタジアム・球技場、37のアリーナ・体育館がありましたが、現在はさらに増えているとのこと。その中でも、パナソニックは2026-27シーズンに体制変更するプロバスケット「B.LEAGUEプレミアムリーグ構想」に注目しています。各チームに年間売上高12億円以上/観客動員数4000人以上/コントロール可能なアリーナの保有が求められるため、これに対応するため各地でアリーナの改修・新設が始まると見ています。
そこでパナソニックでは、自社の既存のアリーナ・スタジアム照明器具3製品について、アジア地域で初めてFIBA(国際バスケットボール連盟)認証を取得しました。FIBA主催の国際大会も開催できるレベルの認証を取得しており、これをもって各プロチームに積極的に営業を仕掛けていく方針。
競技に適した照明、周辺地域への光害も低減
最後の③アマチュア・学生スポーツのLED化推進については、大学や社会人スポーツのグラウンド照明が既存の水銀ランプやHIDランプからLEDへの入れ替えが進んでいることを踏まえての営業強化。
LED照明はHIDに比べて大幅な節電効果と、点灯してすぐに明るくなる利便性により入れ替えが進んでいますが、HIDに比べて明るさが強いため、中にはスポーツに適さない設置状況が散見されるといいます。具体的には、光源が眩しすぎたり、ライトの角度調整ができていなかったりで、試合中に光源が目に入ってボールを見失うなどのプレイに直接影響がでる問題のほか、競技場の上方および横方向への光漏れにより、周辺の住宅地に光害をもたらすといった環境問題にまで発展するケースもあるそうです。
こうした問題を解消すべくパナソニックでは、VR技術を利用した事前シミュレーションと現地調査、プレーヤーへの聞き取り調査などにより、プレイおよび周辺環境に配慮した照明設計を提供していくとしています。
同社はこれまでもプロおよびアマチュア両面で多くのスポーツ施設の照明器具を設置してきました。これまでは大学などの施設運営者や他のSIerからの依頼から始まる、いわゆる受け身の営業でしたが、今後は自社で積極的に提案・コンサルティング営業を仕掛けていきます。また、自社で生産する照明器具だけでなく、パナソニックグループが持つ大型ビジョンやスピーカー、高性能カメラといった映像・音響機器ほか、他社の製品も合わせ、スポーツ施設を中心とした町づくりを総合的に提案できるSIerとして活動していく方針です。
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