捻挫(ねんざ)とは足首や指などをひねり、関節部分が傷つくことで起こります。予防には、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?
元サッカー日本代表のアスレティックトレーナー、久保田武晴さんが「足首の捻挫」の原因や予防法について解説。また、アスリートが実践する捻挫予防の簡単ストレッチも紹介していただきました。
スポーツトレーナー/久保田武晴(くぼた・たけはる)さん
1968年生まれ、神奈川県出身。これまでにJリーグのガンバ大阪、東京ヴェルディ1969、横浜F・マリノス、サッカー日本代表のトレーナーを務める。現在は『くぼたスポーツ接骨院』の院長として、地域の方々の健康促進やケガ予防の指導、治療などを行っている。近著に『サッカー 勝つテーピングスキル 目的別完全マニュアル コツがわかる本』(メイツ出版)がある。
捻挫予防には「ストレッチ」と「サポーター装着」が効果的
———久保田先生はJリーグや日本代表のトレーナーとしてご活躍されてきましたが、サッカーの現場ではおもにどのようなケガが多いのでしょうか?
久保田「足首と膝に関するケガが多いです。打撲、骨折もありますが、とくに足首の捻挫が多いですね。症状が軽いものもあれば重いものもあります。重症の場合は、専属医師の方たちと協力しあいながら、ケガが完治するまでリハビリから一緒に行います。ケガをした選手がフィールドに復帰していく瞬間が、トレーナーにとって一番うれしいですね」
———足首の捻挫は、どうして起こるのでしょうか?
久保田「捻挫は関節のねじれが原因です。大きく分けて内側捻挫(ないそくねんざ)、外反捻挫(がいはんねんざ)の2種類があります。内側捻挫は足関節が強制的に内側へ曲がって(内がえし)、外反捻挫は外側に曲がって(外がえし)、靭帯が伸びたり損傷したりするものです。一般的に頻度が高いのは、内側捻挫ですね」
———捻挫をした場合、どのように処置すればよいでしょうか?
久保田「症状のレベルによって異なりますが、まずは安静にして痛めた箇所を動かさないようにしましょう。『これくらいは大丈夫だろう』と自己判断せず、病院に行って適切な処置を受けるのが大切です。必要に応じてサポーターやテーピングを使いながらリハビリを行い、完治を目指していきます」
———では、足首の捻挫を予防する方法はありますか? 例えば、アスリートの人たちが捻挫予防のために、普段から気をつけていることはなんでしょう?
久保田「人それぞれですが、日頃から足首のストレッチを行うとよいでしょう。足首にかぎらず、身体が硬いとケガにつながりやすい傾向にあります。あとは普段から足首のサポーターをつけるのも、捻挫予防に効果があります」
———ケガをしていなくても、普段からサポーターをつけたほうがいいのですか?
久保田「はい。固定力の低いサポーターをつけると、ケガ予防になります。逆に、硬め(固定力の高い)のサポーターはNGです。足首が硬くなったり、筋肉が弱くなったりするので気をつけなければいけません」
アキレス腱も足裏も「アーチ状」を目指そう
———足首のサポーターを選ぶ際、良い形・悪い形の見分け方はありますか?
久保田「足首は、アキレス腱がアーチ状に締まっている状態は“良い形”、反対にアキレス腱が締まっていない状態は“悪い形”といえるでしょう。サポーターも同様です。アキレス腱の部分がしっかりと締まったものを選ぶとよいでしょう」
――アキレス腱がしっかり締まっているサポーターを使うと、どのような効果が得られるのでしょうか?
久保田「例えば、アキレス腱を手でつまんで押さえてみてください。そうすると自然と足の裏に力が入るのがわかると思います」
――(実際に試しながら)確かに力が入りますね!
久保田「アキレス腱が締まっていると力が入りやすく、普段の歩行が安定します。それから土踏まずもアーチ状のほうがよいでしょう。足裏には踵から足の指の付け根にかけて、足底腱膜という繊維状の腱が膜のように広がっています。アーチ状の土踏まずは、地面に着地する際のクッションになります。足底腱膜の働きが悪いと、ケガにつながる可能性があるんですよ」
———捻挫予防にはアキレス腱と足底に「アーチ」を作るのが大切なんですね。
久保田「そうです。普段から足底が盛り上がっている靴を履いているとアーチができるので、アーチ状の中敷きや、もしくは中敷きの下にアーチ状のサポーターを入れることをすすめています。ぜひみなさんも“アーチ”を意識して、健康的な生活を過ごしてください」
プロトレーナー・久保田武晴さん流
足首の捻挫予防に効く!「アーチ」を作るための簡単ストレッチ
足首の捻挫予防には、アキレス腱や足底の「アーチ」を作ることが大切です。そこで久保田さんに「アーチ作り」のストレッチを紹介していただきました。健康のために、仕事の休憩時間などを利用してぜひ取り入れてみてください。
【足の指の曲げ・伸ばし】
「足の指の柔らかさが足首の柔軟性につながります。タオルを地面に置いて指だけでつかんでみましょう。ポイントは、じゃんけんの“グー”“パー”のイメージでゆっくりと大きく行うことです。毎日続けていると、足底の筋肉がついてアーチが作れます。スキマ時間で10回1セットを朝昼晩、1日3回を目安に行いましょう」(久保田さん)。
・目安=10回(1セット)
1.地面にタオルを広げて足を置きます。
2.ゆっくり大きく足の指全体を使いながらタオルをつかみます。
足首の捻挫などの痛みを緩和!
編集部おすすめ「足首用サポーター」3選
今回は、プロトレーナーの久保田さんに捻挫の原因や予防法、ストレッチを教えていただきました。スポーツの場面だけでなく、日常生活でも捻挫を起こす可能性はあります。そんな捻挫の予防に役立つのが、足首用サポーターです。そこでおすすめのサポーターを、編集部が3モデルピックアップしました。
4378円(税込)
独自の生地を使用した、伸縮性の高い足首用サポーター。足首を柔軟に固定し、負担を軽減します。
2530円(税込)
トップアスリートも愛用する足首サポーター。患部にぴったりフィットし、安定感を生み出します。
Bauerfeind(バウアーファインド)SPORTS ANKLE SUPPORT 足首用サポーター
8800円(税込)
装着時の動きやすさが特徴の足首用サポーター。8の字型のクロステーピングで足首全体を加圧・固定し、運動時の捻挫や怪我のリスクを軽減します。
取材・文/小須田泰二 撮影/我妻慶一