現在放送中のドラマ『逃亡医F』に犯人を追う刑事・野末役で出演中の古屋呂敏。俳優として活動するかたわら、写真家・映像クリエイターとしても活躍する彼が、2月18日(金)より東京で初の写真展を開催。《撮る側》と《撮られる側》の2つの視点を持つ彼が、この個展で掲げたテーマとは──? 気になるドラマの裏話も交えつつ、写真への思い、表現することの楽しさなどをたっぷりとうかがいました。
【古屋呂敏さん撮りおろしカット】
松岡昌宏さん、和田聰宏さんに挟まれて、最高の時間を過ごしています
──『逃亡医F』のドキドキの展開が毎週楽しみです!
古屋 ありがとうございます。僕も新しい台本が届くのをいつもワクワクしながら待っています。物語がどんどん転がっていくので、この先どうなるのかがまったく分からなくて。原作のコミックも読ませてもらったのですが、ドラマはオリジナリティーにあふれる内容になっているので、皆さんもぜひハラハラしながらご覧いただければと思います。
──出演が決まった当初はどんなお気持ちでしたか?
古屋 プライムタイムのドラマに出演するのが初めてで、しかも主演の成田凌さんや松岡昌宏さんをはじめ、そうそうたるキャストがそろっていたのでものすごく緊張しました(笑)。
──実際に撮影に入ってからは、そうしたプレッシャーもなくなっていったのでしょうか?
古屋 そうですね。すぐ、緊張以上に楽しさのほうが大きくなりました。作中でバディを組ませていただいている先輩刑事役の和田(聰宏)さんが本当に素晴らしい役者さんで、学ぶことが多くて。和田さんは、いつもいい意味で力の抜けたお芝居をされるんです。それなのに、ものすごく存在感がある。“どうやったらこんな表現ができるんだろう?”と常々探っているんですが、いまだにまったく解明できていないです(笑)。また、松岡さんとも絡むシーンが多いのですが、イメージどおりの熱い方で、それがお芝居にも表れているので迫力がある。お2人に挟まれながら演技をするのが本当に心地いいですし、自分が演じる野末という男も、お2人に引っ張ってもらいながら出来上がっているなという気がします。
──その野末はどんな男性だと感じていらっしゃいますか?
古屋 とても真面目なキャラクターですね。和田さん演じる先輩をすごく尊敬しているし、己の中の正義を貫いている。僕自身とはちょっと性格が違うなと感じています。あ、だからといって、僕に正義感がないわけではないですよ(笑)。野末は自分の行動に自信を持っているし、仕事に対して情熱的でもある。そうしたところにリスペクトを感じます。
──古屋さんは現在、俳優のほかに、写真家や映像クリエイターとしても活躍をされていますね。どういった経緯で、これらの活動を始めるようになったのでしょう?
古屋 最初はモデルとしてスタートしたんです。父が日系アメリカ人で、僕もハワイの大学を卒業したのですが、就活のために日本に戻ってきた際、思わぬ形でファッション誌のモデルの仕事をするようになりました。そこでカメラマンさんや雑誌編集者の方々と仲良くなり、どんどんと撮られる側より撮る側に興味が湧いていったんです。友人や知人をモデルにして写真を撮り始めたら、より楽しさを感じて。それに、もともとオタク気質なところもあるので(笑)、カメラ機材も買い集めるようになり、いつしか撮ることが本格的に仕事へと繋がっていったんです。
──俳優の仕事にもその頃から憧れがあったのでしょうか?
古屋 ありました。昔から映画やショートフィルムが好きだったんですが、何より僕の心を動かしたのがグザヴィエ・ドラン監督の『Mommy/マミー』(2014年)でした。ドラン監督は僕と年齢が1つしか違わないのに、『Mommy/マミー』はカンヌ国際映画祭で絶賛され、審査委員賞も受賞されて。しかも、監督と脚本をこなしながら、いろんな作品で役者として自分も出演している。羨ましくもあり、尊敬もします。
──影響されているところが多そうですね。
古屋 かなり(笑)。ドラン監督の作品で一番好きなところは、色味や、映像を通して匂いが伝わってくるような世界観なんです。1つひとつの描写の中にちょっとしたおしゃれな空気も漂わせていて。僕もそうした写真や映像が撮れたらなって、常々思っていますね。
初の写真展では、会場で直接お客さんから感想をたくさん聞いてみたいです
──そんな古屋さんにとっての初の写真展『reflection』が2月18日より開催されます。この写真展はどのようなコンセプトになっているのでしょう?
古屋 タイトルにもあるように《反射》をテーマにしました。僕自身、役者のお仕事をさせていただく一方で、カメラマンの活動もして、“撮られる側”と“撮る側”の両方を経験しています。それをコンセプトにした写真を撮りたいなと思ったのが最初でした。モデルとして川床明日香さん、菊池日菜子さんのお2人にご登場いただいているのですが、僕が彼女たちを撮りつつ、反対に、その僕の撮影姿を彼女たちに撮ってもらうことで、“互いの意識の反射”なども表現しています。
──普段は見られない姿が写っていそうですね。
古屋 そうですね。2人に撮ってもらった写真を見て、“僕って、こんな感じで集中しているんだ!?”と驚きました。思った以上に撮影中は猫背になっていたりもして(笑)。カメラを構えている瞬間は被写体に集中しているので自分に意識が向いてないですし、すごく無防備でもある。そうやって一人の人間を多角的に写すことで、そこにどんな物語が生まれるんだろうという挑戦の意味もありました。ほかにも、鏡を使った写真であったり、“もし自分が木だとしたら、僕という木はどこを見ているんだろう?”といった視点で撮影してみたり。…と、こうやって言葉にすると、小難しいことを言ってるようですが(苦笑)、自分の心のゆくままに楽しくシャッターを押しただけなので、気軽に見に来ていただければと思います。
──会期中は古屋さんも会場にいらっしゃるんですか?
古屋 はい、時間が許す限り、在廊したいなと思っていますので、写真をご覧になっている方に直接、写真に込めた思いをお話ししたり、反対にいろんな感想を聞いてみたりしたいですね。個展のいいところは、いろんなサイズで写真を展示できるところだと思うんです。今はスマホなどで簡単に写真やイラストを楽しめますが、大きくプリントされた写真や、逆にあえて小さいサイズで飾ってあるものなど、実際にその場で見て、体感することで、伝わり方・受け取り方も変わってくる。僕自身も感性を磨くために、普段からいろんなものを見て、触って、調べて…と五感で体験することを大事にしているので、それをぜひ皆さんにも味わっていただきたいなと思います。
──では、古屋さんが思う“写真展の楽しみ方”とは?
古屋 一番は正解がないところだと思います。どういう解釈をして、どんな感想を持っても自由で。それに、その日の心の持ちようによっても見え方が変わってくる。例えば、会場に着くまでにその人にどんなことがあったかで、一枚の写真が楽しそうにも、切なそうにも見えるでしょうし。そうやって自分が感じたことがすべてであり、そこに正解も不正解もないんですよね。
──これを機に、気軽に写真展や美術館に行く人が増えていくと、より日本の文化も豊かになっていくように思います。
古屋 僕なんかが言うのもおこがましいのですが、特に多くの若い世代に、写真に興味を持ってもらえたらなと思います。そのためにも、今回の写真展では見る人の心が動くような作品をたくさんセレクトしていきたいですね。1枚1枚にしっかりとテーマを盛り込んでいるので、それが伝わればいいなって思いますし、先ほどもお話ししたように、僕とは違う見え方をした感想もたくさん聞いてみたいです。
──展示する写真にはそれぞれタイトルを付けるんですか?
古屋 できるだけそれはやめようと思っています。やはり、見る方のイマジネーションを限定させてしまうとつまらないと思いますから。映像や写真のいいところって、言葉を使わずに思いを届けられることだと思うので、そこは隠したままにしようと。もちろん、あったほうがいい時もありますし、今の時代は分かりやすさや共感性を求められることが多いので説明することの大事さも分かっていますが、今回はあえて自由に見てもらえればと考えています。
ガジェットオタクで、家の中は完全にスタジオみたいになっています(笑)
──最初のほうの質問で、「自分にはオタク気質なところがあり、カメラ機材をたくさん買い集めている」というお話しをされていましたが、ガジェットや家電などもお好きですか?
古屋 大好きです! 最近だとデロンギのコーヒーメーカーを買いました。けっして安くはなかったのですが、めっちゃくちゃQOLは上がります! それに長く使うことを考えれば、カフェなどでコーヒーを買って飲むより費用対効果もいいですし、いい買い物をしたなと思ってます(笑)。
──コーヒーがお好きなんですね。
古屋 はい。ハワイで育ったので粉コーヒーが特に好きですね。ちょっと薄めで酸味が強い味が好みで、コロナ禍になる前はハワイの農園を回って粉をたくさん買い、いろんな種類を毎日違ったブレンドにして楽しんでいました。
──すごい! では、それ以外で最近購入されたものは何かありますか?
古屋 少し前だとソニーのマクロレンズ(FE 90mm)かな。普段、人物を撮影することが多いので、マクロレンズは必要ないと思っていたんです。でも、水の泡を撮りたくて買ったところ、どハマリしてしまって(笑)。知り合いのネコちゃんを試しに撮ったんですが、瞳の中に宇宙が広がっているぐらいきれいで、楽しすぎて世界が広がりました。
──カメラはどのくらいお持ちなんでしょう?
古屋 普段使っているのはソニーなんですが、ニコンのFM2、FM3、F5も持っています。そのほかにもオリンパスのPENやフジカ ハーフなど。ボディやレンズを買うために、毎日お茶漬けやうどんばかり食べてますね(苦笑)。部屋の中もすごいですよ。機材だらけですし、物撮りもしているのでリビングにペーパーを垂らしていて。その端っこのほうに小さなテーブルを置いて、いつもお茶漬けを食べているんです。完全にスタジオみたいになっているので、友人も呼べないです(笑)。
──生活感がゼロですね(笑)。
古屋 本当に(笑)。また、ドローンも2台持っていて、それは撮影で使い分けています。1つは200g以下のサイズのものなので人口密集地でも飛ばせるんですが、もう1つは国土交通省に撮影許可を取る必要があるんです。その分、飛行距離も長く、Webでアップしている自然の風景映像などはそちらを使っているので、ぜひ見ていただけたらうれしいです。
──お話しをうかがっていると、まさにクリエイターですね。
古屋 ありがとうございます。熱中すると、とことんのめり込んじゃうタイプなんです(笑)。写真や映像はもちろん、役者の仕事も、世の中にさまざまな“表現”を発信していくことに違いはありませんので、これからも自分の好きなもの、やりたいことをどんどんと発表していけたらなと思っています。
古屋呂敏 写真展 「reflection」
会場:ギャラリー ルデコ B1(東京都渋谷区渋谷3丁目16-3 髙桑ビル B1)
入場料:無料
期間:2022年2月18日(金)~20日(日)
時間:11:00~19:00 ※最終日20日(日)は17:00終了
撮影/干川 修 取材・文/倉田モトキ