海外からの高い評価を集め、アート、アクセサリー界からの熱い視線によって、再びその熱が再燃しているという食品サンプル。そんな食品サンプルの世界をひもとく連載の第3回です。ガイドしていただくのは、初の食品サンプルビジュアルブック「食品サンプル百貨店」の著者のひとり、タイムマシンラボの小西七重さん。今回は、食品サンプルのコレクターや工房、食品サンプルキットなど、食品サンプルにまつわるこぼれ話をお届けします!
【ガイドしてくれるのはこの人!】
小西七重さん
2002年、竹村真奈によって設立された書籍や雑誌の編集・執筆・企画・プロデュースを中心に活動する編集プロダクション「タイムマシンラボ」に所属。タイムマシンラボの近著「食品サンプル百貨店」(ギャンビット)のほか、様々な書籍を手がける。
8083個保有のギネス世界記録を持つコレクター
――「食品サンプル百貨店」では、食品サンプルコレクターでギネス世界記録を持つマニアの方のお宅も紹介されてますね。
小西 小幡さんという方ですけど、この方は8083個保有のギネス世界記録を持つコレクター。お部屋がまずすごい。ディスプレイが完璧でした。飲み物系とか、和食系とか甘味系っていうのをショーケースごとにジャンル分けをして、綺麗なディスプレイでした。また、部屋の横に台所があるんですけど、「そこで料理とかをされるのかな」と思いきや、食品サンプルを陳列するための台所だったんです。ゴミコーナーには、ちゃんと生ごみのサンプルが置いてありました。スイッチカバーもたこ焼きだったりして、食品サンプルへの深い愛情を感じました。
――何をされている方なんですか?
小西 主婦の方です。30年ほど前に、アミューズメントパークでミニチュアのお菓子を見つけて、買い始めたのがきっかけだったとか。ご本人いわく、「コレクター」という意識はなく、楽しいものを集めていたらこうなっちゃったそうです。
食品サンプルの工房は調理場のようだった
――一方、実際にそれらを作っている職人さんの現場は、決して華やかではなく、厳しそうなイメージがあります。
小西 そうですね。取材で伺った工房は、本当に全部手作りで。シリコンの型にゾルという樹脂を流し込んで作られているんですけど、ストイックな職場でした。工房の一角では、ずっと麺の食品サンプルを作っている職人さんがいるとか。ただ、面白いのが、そういう工房は、不思議と調理場に似てるんですよ。ガス台があって、オーブンがあって、流し場があって……というように。だから、ずっと見てると不思議な感じになったし、すごくお腹が空いてきました(笑)。
食品サンプルキットは外国人に大ウケ
――浅草のかっぱ橋では、食品サンプルの制作を体験出来る場所もありますよね。
小西 外国人の方に人気のスポットですね。そちらでは固まるのが早いロウで作るところが多いですけど、気軽に食品サンプルに触れるには良い場だと思います。
――最近では、量販店で自宅で楽しめる食品サンプルの制作キットも売られていますよね。ある量販店では、外国人の方に対しての売れ筋ナンバーワンだとか。
小西 こういうキットはパフェ、ソーダフロートをシリコンで作れるなど、かっぱ橋の食品サンプル体験とは、また違った楽しみ方が出来ると思います。「食品サンプル百貨店」では、キットを使ってカスタマイズしたんですけど、アイディア次第で自分だけの食品サンプルが出来るかもしれません。
食品サンプルの未来
――これまでは「懐かしい物」のように思っていた食品サンプルの世界が、この時代に新しいものとして広がっていきそうな気がしますね。
小西 海外の方から注目されている理由の一つに、その技術力の高さがあると思うんです。特にアート、ファッション界の人たちに注目されていて、さらにその世界を広げていって欲しいです。食品サンプルを並べていた喫茶店、レストランが減って需要が減れば、当然工房での後継者も生まれにくくなります。しかし、食品サンプルの技術、表現力は日本が誇るべきものだと思うし、それがなくなってしまうのはあまりにも寂しい。だから、いままでとはまた違ったカタチで、食品サンプルが楽しまれ、広がっていくことを期待するばかりですね。
今回の連載で、食品サンプルに興味を持った方も多いはず。レストランのショーウィンドーもまた違って見えるのではないでしょうか? 見て楽しい、作って楽しい食品サンプルに、ぜひ注目してみてください!
【より詳しい情報はこちらをチェック!】
食品サンプル百貨店
編著:竹村真奈、小西七重(タイムマシンラボ)
発行:ギャンビット
価格:1512円